第20話 普通のシェアハウス。普通じゃないシェアハウス

 通常のシェアハウスだと、住人同士が気まずくなるから「恋愛禁止」とか「イチャイチャ禁止」とかルールを設けるかもしれないが、互いに恋人同士だった場合はどうなるのだろう?


「え、絋さんは何もしないんですか? 俺達、普通に仲良くするつもりですけど」


 ——おい、崇。奥手で優等生だったお前はどこにいった?


 いや、本来ならば崇のような思考が正常だと思う。だって俺達は恋人同士で入居しているのだ。むしろ、引っ越しを決めたといっても過言ではない。


「お互い気まずくならないようにルールだけは決めておきたいんですけど。恋人っぽいことをしたい時は二階に上がる、その際には相手の行為に首を突っ込まない。聞き耳を立てない。無関心を貫くこと」

「こ、恋人らしいことって、線引きはどこからどこまでを……」


 俺の質問に崇は豆鉄砲を喰らった鳩のような顔をしていた。が、ニヒルな笑みを浮かべると「そんなの、こんな彼女は他の人に見られたくない……でいいんじゃないですか?」と諭された。


 俺が社畜として馬車馬のように働いていた時、コイツは雄としてのスキルを磨きまくっていたのか!

 それが分からないから聞いているんじゃねぇか! コイツ、コイツ……!


「そんなことを言われたら、俺は全部の杏樹さんを他の野郎に見せたくねぇんだけど……」


 悔しさのあまり、太ももの辺りでギュッと拳を握っていると、目の前の崇が真っ赤な顔をしながら「うんうん」と頷いて同調をしていた。


「……その気持ちも分かる。全部可愛いんッスよね。俺も他の男が千華さんに惚れたらどうしようって思ったら気が気じゃなくて……。絋さんの気持ち、スゲェー分かります」


 両手で顔を覆いながら告白してきた崇に「同志よ!」と手を叩いて抱き合った。


「なんかさー……。俺の勘違いだったらいいんですけど、自分達の回りに浮気とか寝取り・寝取られをする輩が多いから、俺と同じように彼女に激惚れしている話を聞くと安心するんですよね」

「あー、それ分かる気がするな。ボッチだったのに複数の女の子に告白されてハーレム築いている奴とか、始めた動画配信でバズってる奴とかだろう? 増えたよな、そういう奴」

「普通にクズみたいに不倫をしたくせに旦那に縋る妻とか、この前修羅場見てマジかよーって思いましたもん。まぁ、俺の状況も十分んですけどね」

「確かに、確かに! 特に崇の元カノの執着は、笑うしかないくらい酷かったもんな」


 ——とはいえ、ここまで言って我に返った。


「………もっと世界が平和になってほしいよな」

「………そうっすね。もっと皆、好きな人を好きだって堂々と言える世界になってほしいです」


 こうして俺達男性陣は休憩を終えて、再び作業を再開し始めた。


 ———……★


 杏樹side


「え、千華さんと崇さんって、婚約済みなんですか?」

「えへへー、そうなんだー♡ 杏樹ちゃんと絋さんもお付き合い始めたんだよね? どんな感じ? 絋さんは優しい?」


 ミヨちゃんとはまた違った感じの、大人の恋愛トーク。確かに千華さん達を見たら、他の人達とは違う安定感が漂っていて、お互いを想い合っているのが伝わってくる。


 それに比べて私と絋さんは……毎晩添い寝もしているし、お互いのことを好きだっていうことも伝え合っている。だけど正式に付き合い始めるのは私が卒業をしてから。キスもエッチもまだ未経験なのだ。


「あの、千華さん……。私、このシェアハウスを機会に、もっと絋さんと仲良くなりたいんですけど、どうしたらいいですか?」


 千華さんと崇さんのように、相思相愛な雰囲気を纏いたい。もっと絋さんから好きって思われたい!


 だが、その言葉を千華さんは別の意味で捉えていること私は気付いていなかった。


(杏樹ちゃん……恋人同士では満足できなくて、夫婦になりたいってこと? 既成事実……いや、もう赤ちゃんを作って家族になりたいってことかな? 確かに絋さんってそういうところは真面目に避妊具つけていそうだし)


「分かった! 私と崇さんで協力できることは何でもするから、いつでも相談してね!」

「千華さん、ありがとうございます……!」

「早速、今晩から二人きりにしてあげるから、たーくさん絋さんに甘えたらいいよ。大丈夫、杏樹ちゃんは可愛いからすぐに上手く行くよ」


 まさか双方の意見が食い違っているとも知らずに、私は千華さん達に協力してもらって、絋さんとの関係を深める為に奮闘して意気込んできた。


 ———……★


「そういえば寝室なんですけど、千華さん達はどうしますか? 私はいつも絋さんに添い寝をお願いしているので、一緒に寝たいと思っているんですけど」

「うん、私と崇さんも一緒に寝るから気にしなくていいよー。もし音が気になるならフロアを変えて寝よっか?」

「(音? 千華さん達、イビキをかくのかな? それとも寝言? それなら気になったやうよね)分かりました。それじゃ、寝る時には別々の階で寝るようにしましょうね」


 まだ誰とも未経験な杏樹ちゃん(笑)

 そして絋と崇の回りの人って……はい、カクヨムの小説に登場する架空メンバーです(笑)

 カクヨムの世界があったら、寝取られとかハーレムとか成り上がりばかりになっちゃいますよね……純愛(恋愛)ですら略奪系が多いラノベの世界ですから……。

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