第9話 嫌な予感がする
差し込む朝日……結局、こんな状況で一睡もすることもできないまま朝を迎えることとなった。
それに対して杏樹さんは、俺の身体に腕を回したり、顔をグリグリと押し付けたり、しまいには生足で挟み込みまできてたのだ。
フニフニだけれども張りのある生太ももの感触が布越しに伝わってきて、いよいよ限界突破寸前だった。
「んんー、よく寝た。おはようございます、一之瀬さん」
「………おはようございまーす、杏樹さん」
ググッと背伸びをして清々しい朝を迎えた彼女とは対照的に、疲労たっぷりでどんよりした空気の俺。
もう、限界! 無理、添い寝なんて無理!
そもそも杏樹さんは、どういうつもりで俺に添い寝を頼んでいるんだ?
抱かれたいん? それとも弄んでいるのか、俺の純情を!
そんな俺の気も知らずに、髪をアップにまとめて色っぽいうなじを晒してきた。
「私、朝ごはん作りますね。一之瀬さんはもう少し休んでてもいいですよ」
「え、いや。俺も手伝おうか?」
「いえいえ、これくらいはさせて下さい。久々によく眠れて気持ちがいいので」
——だめだ、睡眠不足の思考回路ってエロ全開になってしまう。都合の良いワードだけを拾ってエロ変換されるから堪ったもんじゃない。
そう言って杏樹さんは制服に着替え、バッチリメイクまで済ませて朝食の用意を始めた。制服にエプロンはエロい——じゃなくて、可愛い。
「バタートーストとベーコンエッグです。一之瀬さん、挟みます? もし挟むならケチャップは後から掛けましょうか?」
「ぜひ挟んで下さい。たっぷりかけてもいいので」
「え、たっぷりかけたいんですか?」
——もうダメだ。お願いなので寝かせて下さい……。
社畜時代にも三徹くらいは余裕であったにも関わらず、今回の場合は精神的によろしくない。
とは言え、杏樹さんを一人で学校に向かわせるのも複雑な気分で、寝ようにも寝れない心境だった。
「杏樹さん、親戚の鳴彦さんも同じ学校なんだっけ?」
「え、あ、はい……。学科も学年も違うから滅多に会わないんですけど」
聞いた感じでは学校は問題ないかと思っていたが、どうも雲行きが怪しい。あの時の形相や必死さを考えると、杏樹さんを見た瞬間に拉致して自宅に監禁などをしかねないと危機を案じたほどだ。
やっぱり学校に行かせない方がいいのではないだろうか?
「杏樹さん、今日は休んで俺の家にいればいいよ」
「え……? でも学校だけはいかないと」
「何となく嫌な予感がするんだ。俺はちょっと友人に会いに行ってくるから留守にするけど。杏樹さんはゆっくり休んでいたらいいよ」
こうして俺は罪悪感でいっぱいな杏樹さんを自宅待機させて、崇に相談する為に一人出かけたのであった。
———……★
「え、自殺寸前の女子高生を助けて、一緒に住んでる? 絋さん正気ですか?」
相談して早々、崇から辛辣な洗礼を受け、何も言えなくなった。
「絋さんは慎司さんと違って、まともだと思っていたのに……」
「いやいや、崇も俺の立場になれば気持ち分かると思うから」
「まぁ、俺も彼女と付き合ったのは人助けだから強くは言えないけど……」
確か、元カレにストーカーされて苦労したと聞いていたが、どんな対策をしたのだろう?
俺は崇の体験談を聞いて、色々参考にさせてもらった。
「引っ越したらいいんじゃないですか? 学校に行けないなら通ってる意味もないし」
「できれば杏樹さんの迷惑にならないようにしたいんだ。ただでさえ両親亡くしてくて落ち込んでいるから」
崇は指先で撫でながら考えに更けていた。
「そもそも杏樹さんと絋さんの関係って何ですか? 単なる人助け? 下手すれば絋さんが誘拐や未成年監禁で訴えられますよ?」
「いや、それは……! 杏樹さんは十八で未成年じゃないし。俺は杏樹さんの意向を汲んで泊めているだけで」
「女性は俺たちが思ってるよりもドス黒い考えを持ってるんです! 絋さん、信じたい気持ちは山々ですがお人好しにも程があります。もし良かったら俺に合わせてもらえませんか?」
こうして俺は崇と杏樹さんを会わせる運びとなった。
———……★
短くてすいません💦
間に合いませんでした💦
崇は雪世のトラウマがあるせいで、基本的に女性を信じていません(笑)
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