人魚の夢

透き通った海の底に人魚がいました。


「あなたの夢はなに?」


「この窮屈な海から抜け出してみたいわ。陸ならきっと私は何でもできると思うの。」


「そう。」


***


 ある日、山の奥で小屋を組み立てている人魚さんに会いました。


「なぜこんなところで小屋を組み立てているの?」


「……ここで生活するためよ。」


「……窮屈な海から抜け出すのが夢じゃなかったの?」


「私は広い世界に出れたわ。陸の楽しさも、海の温かさも分かった。でもね、みんなは片方の世界しか知らないの。陸を恐れて、海を冷たい場所だと言うの。それが凄く寂しかった。だから、ここで1人生きていくの。」


「……あなたはそれでいいの?」


「……私ならもっとできると思ってたんだけどね。思ったよりみんな、幸運よりもリスクに備えることに一生懸命だったわ。そんな世界じゃ、私を受け入れてくれる人なんていないわよね。」


「……そう。」

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