第11話

 目が覚めた。


 何時間経ったんだろう。

 黒川に怒ってそれから・・・


 ん?

 手に暖かいものを感じる。


「あ、起きた?」


「ライリーさん!?

 どうしてここに!?」

 いないはずのライリーがいて飛び起きた。

 そして黒川はいなくなってる。

 さっきのは夢だったんだろうか。

 それともこっちが夢・・・?


「黒川さんから聞いたんだよ。

 冴ちゃんから連絡来たと思ったら黒川さんだったみたいで。

 パスワードちゃんとかけなきゃだめだよ~。」


 あいつーーー。

 人が寝てる間に勝手にスマホ触るとか、最低。

 急いでスマホを確認する。

 ライリーが言った通り、私のアカウントからライリーに連絡を入れていた。


「黒川がすみません。」


「いいよ、と言いたいところだけど・・・

 体調悪いなら連絡してよ。」

 真剣な顔で言う。


「心配かけるの嫌で・・・」


「付き合ってるのに?」


「ごめんなさい。」

 怒られてしゅんとしてしまう。


「次は絶対言ってね。」

 本当は連絡をもらえなかったということよりも、他の男から連絡が来たことにイライラしているが、そのことはまだ言えない。

 嫉妬して大人げないと思われたくない。

 もっと関係性が深まったら言えるのかな、なんて考えた。


「はい。」


「強く言ってごめん。

 黒川さんが連絡してくれて良かったよ。

 良かった・・・けど

 何もされてない?」

 そのあたりは我慢できず正直に聞いてしまった。

 これは、後から言うんじゃ後悔する気がする。


「おでこにキス、された気がします・・・」

 申し訳なさすぎて死にたかった。

 不可抗力だったとは言え、ライリーの彼女である自覚のなさに自分でがっかりしている。


 ライリーはやっぱり、というような呆れた表情で反応する。


「ごめんなさいっ!」

 許されるとは思わないが、必死で謝った。

 やっぱり、すぐライリーさんに連絡するのが正解なんだ。


「抵抗できなかったんだもんしょうがないよね。

 体調悪いことに気づけないところにいる俺も悪いし。」


 いや、悪いのは私だ。

 それに体調不良に気づくなんて、昨日会ってたわけでもないし無理だろう。


「俺、もっと冴ちゃんと一緒に居たいよ。

 具合悪そうとかも気づきたいし、もっと仲良くなりたい。」


「そんなの私もです。」


「一緒に暮らさない?」


 それって・・・

 今まで、ライリーを推してきた瞬間のすべてがフラッシュバックする。


「もちろん結婚を前提に。」


 その言葉で、これまでの感情が涙となって溢れ出した。

 答えは決まっている。


「はいっ!

 よろしくお願いします!」


 ライリーに抱き寄せられ、涙が止まらなくなる。

 ライリーも泣いているようだった。

 体が、離されると同時に頬に手が触れた。


 ライリーってホントに紫色の瞳なんだ。


 などバーチャルのキャラクターのことがふと頭をよぎるが、すぐにかき消される。


 唇が軽く触れるキス。


 二人とも自分の顔が真っ赤であることはわかっていたが、恥ずかしくても目を逸らすことはない。

 推しの赤面助かる

 ・・・とかそういうことではない。

 この瞬間を大切にした結果だった。


 体調はだいぶ良くなったが、ライリーに寝てなさいと言われそのままベッドに横たわる。


 我儘言っても許される気がする、と思いライリーに横に居てもらった。


 ずっと寝てたからか寝れず、色々なことを話した。


 他愛もない話から、仕事の話、将来の夢まで。

 そして、一緒に住むことについても話した。

 ライリーが自分の仕事はどこでもできるからとこちら側に住んでくれるらしい。

 ライリーの為なら、毎日の通勤くらい頑張れる・・・と言いたいところだが、それにも限界があるのでありがたい。

 それぞれの配信用の部屋と一緒の寝室とリビングがあるといいねという幸せな話もした。

 ライリーが、寝室は一緒がいいと思ってくれてることがなんだかくすぐったい。

 推しの新たな一面も二面も見れて、これ以上の幸せはない。


「これからもよろしくお願いします!」

 二人で笑いあった。




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