第9話
翌週
「お疲れ様でした~。」
「お疲れ~。」
如月とのコラボ配信の日。
ライリーと付き合うことになったという説明をして、如月の事務所で配信させていただくことになった。
「よかったね。」
如月は相変わらずの大人っぽい余裕のある表情で配信終わりの雑談を始める。
「何がですか?」
「ライリーとのこと。」
「ああ!
はい。幸せです。
すみません、場所の配慮していただいて・・・。」
以前のことがあるから、申し訳ない気持ちにはなるが正直に答える。
場所も、家は良くないかなと如月から提案してくれた。
相変わらずいい人だ。
「ライリーからも聞いたよ。
お互いに推しみたいな感じだったんだってね。
そんなの勝てるわけないじゃん~。」
いたずらな笑顔で言う。
「このあとライリーも誘ってご飯行かない?」
如月が提案してくる。
それって如月さん辛かったりしないのかな・・・
原因は自分にあるが、そんな心配をしてしまう。
でも本人が言ってるしいいのかな。
「行きたいです。」
「じゃあ決まりね。
実はライリーにはもう連絡してあるから。」
早い。
心配する意味なかったな・・・。
***
事務所近くの小さな居酒屋。
ライリーも合流した。
「お疲れ様です。」
「おつかれ」
「お疲れ様です。」
「適当に頼んどいたよ。」
まだ来ていないが、注文した中にはライリー用のソフトドリンクも含まれていた。
お酒が弱いらしい。
同じ事務所だから一緒に飲む機会多くて知ってたのかな。
自分も覚えておこうと心に誓ったところで、ドリンクが運ばれてきた。
乾杯をして、そのあと運ばれてきた料理にも手を付ける。
「いきなりなんだけど本題。」
如月が話題を切り出した。
本題?
なにか話したいことがあったから誘ってくれたのかな。
「俺事務所に言われて、今度オリジナル曲を歌わなきゃいけなくなったんだ。」
「えすごい!」
「いいじゃないですか」
私とライリーは素直に思ったことを口にした。
「できれば、ゲーム配信だけやってたいんだけど・・・
事務所に言われた以上やらなきゃいけなくて」
駄々をこねるような如月を見て少し面白く思ってしまう。
「せめて二人とかじゃなきゃダメか聞いてみたらOKもらったんだよね。」
ほう・・・。
何かを察し、ワクワクが止まらなくなる。
「それで、ライリーに頼みがあって。
俺とユニット組まない?」
ライリーは今まで見たこともないような様子で驚いた。
「ユニット!!??」
「そう。
俺一人じゃ無理。」
如月が拗ねた少年のような素振りで言った。
「俺だってゲーム配信しかやらないつもりでしたけど??!!」
ライリーは大げさに抵抗する。
「一応俺の口から言おうと思って場を設けたけど、明日には事務所から言われると思うよ。
ライリーが一緒にやってくれないんじゃ歌わないってマネージャーに言っちゃったから。」
如月が意地悪な顔をしてライリーに言う。
事務所では如月が絶対だ。
一人で歌うのは本当に嫌だったんだろう。
いつもなら、自分の言葉の重みを考え、他の人を強制するような発言はしないが今回ばっかりは違った。
「う・・・・。」
ライリーはまだ納得できないようであったが、事務所のことを言われると諦めの気持ちも出てくる。
「冴ちゃんなんとか言ってよ。」
如月は私にライリーを説得するよう求めた。
私も呼んだ目的はこれか・・・・。
私がライリーの歌声を聞きたくないはずがない。
それをわかっていて、3人で集まったんだ。
「やだよ。
会える時間もっと少なくなっちゃうよ。」
ライリーは情けない声で言う。
「やってほしいです。」
ライリーは雷にでも打たれたかのような衝撃の受け方をした。
「如月さんとライリーさんの歌聞きたいです。
絶対かっこいいです。」
衝撃を受け続けているライリーだったが、冴の「かっこいい」を聞いて、すこし正気に戻る。
「かっこいい?」
「はい。
ゲーム配信メインのお二人ならユニットとしての相性よさそうじゃないですか?
世界観とかも決めやすそうですし。
何よりも視聴者に刺さりますよ!絶対。」
なるほどと、ライリーは思考を取り戻したようだった。
如月は、ナイスと言わんばかりにウインクをしながら親指を立てた。
清く正しいファンとしての立場から発言したが、内心はライリーと如月の絡みが見たいという腐女子の叫びを必死で抑えている状況だった。
冴は腐女子であった。
このユニットは功を奏し、全方位から熱い支持を受けたらしい。
腐女子界隈が大きな盛り上がりを見せたのは言うまでもない・・・。
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