第5話
パーティー終了後、近くの個室居酒屋に移動した。
私は如月海さんに二次会に誘っていただいたので、お言葉に甘えて参加することにした。
如月海はバーチャルライバー界の重鎮だ。
おそらくバーチャルライバーに興味がない人でも知っているだろう。
その人の飲み会に同席させてもらえるなんてとてもじゃないが恐れ多い。
如月海に加えて、彼と交流のあるメンバーというのもかなりの有名所だ。
さらに私にとってさらに重大なのが、ライリーもこの二次会に参加するということ。
き、緊張する・・・。
***
なんとか当たり障りのない会話を交わし、場の空気になじんできた感じがする。
右隣には如月、左隣にはライリーという気の休まらない席順になっていた。
まあ誰と隣でも緊張するけど・・・
特に、ね。
「サエちゃんは普段どんな配信をするの?」
如月は当たり障りのない会話は終わりとばかりに、仕事の話題を振ってきた。
「雑談配信がメインですね。
あと英語の勉強をしているので勉強配信とか
プログラミングができるので、視聴者さんと一緒に簡単なプログラムを組んで遊んだりしてます。
皆さんみたいにゲーム配信とかも憧れはあるんですが、初心者がやっても人を楽しませられるレベルの配信はできないかなと思って。」
面接のような気分での返答になってしまったのは自覚している。
気を悪くする人がいるといけないので、本業のことは伏せて可能な限り説明した。
配信を見ればわかってしまうことではあるが、この場に私の配信を知ってる人はライリーしかいないだろう。
「すごい頭よさそう。
やってること自体もそうだし、それを選ぶのが戦略的だ。
ニッチなところを狙ってるんだね。」
王様にはお見通しだ。
少し恥ずかしくなる。
「ありがとうございます。
やるなら本気でやりたいので。」
本気でやってる者同士、謙遜するのは失礼かと思い感謝することを選んだ。
如月は私を認めたと言わんばかりの微笑みを見せた。
「今度コラボ配信しない?」
「えっ
いいんでしょうか?」
「興味でちゃった。
コラボじゃなくてもオフでも友達になってほしいな。」
無邪気な笑顔で私を安心させる。
自分の言葉が他の配信者にとっては重いということを理解しているのだろう。
きっと友達の方は無理にコラボさせることがないように言ってくれてただけで、コラボの方の話がメインだ。
「よろしくお願いします!」
「じゃあ連絡先教えて?」
「はい!」
静かに見ていたライリーは今にも止めに入りそうな状態だった。
冴ちゃんそれオフで会うことの方がメインのお誘いだよーーー
気づいてーーー!
「お、俺も教えてもらってもいいかな?」
余裕がある様子を装い、会話に割り込んだ。
もう我慢できない。
「サエちゃんは俺と友達になるんですけど~~?」
如月は意地悪な顔でライリーに詰め寄る。
ほれみろ
やっぱりそっちだ。
「俺ともコラボする約束しました。」
少し感情的な答え方になってしまったが、今は引くわけにはいかない。
それに連絡先くらい聞いたっていいだろう。
あんた彼氏じゃないんだから。
「ライリーさん、どうぞ」
二人は仲が悪いのだろうか・・・
いや、飲み会のメンバーに入ってるくらいだから仲は良いだろう。
「ありがとう。」
かすかに照れているような表情をしたような・・・
推しの照れ笑い最高か?
見間違いでもいい。一生心に刻んでおこう。
***
「じゃあ今日はこのへんで」
如月が全体に向けて言った。
「おつかれーす」
「おつ~」
・
・
・
それぞれ別れの挨拶を交わす。
「じゃあコラボの内容とか日程は連絡とって決めよ。
またね。」
如月は笑顔で手を振り、颯爽と歩いて行った。
如月さんはこの後も配信するのだろうか。
良い人だったな。
ライリーとはあんまり話せなかったなぁ。
必要以上に緊張してしまった。
連絡先は交換したけど、連絡とれる保証はないし・・・
「あの、ライリーさん。」
ライリーは驚きと嬉しさが入り混じったような表情をしている。
「はい!」
「またお話したいです。
お願いします。」
懇願するような形になってしまった。
だって、推しだもの。
普通懇願したって叶わないことだ。
ファンのみんなごめんなさい。
抜け駆けをお許しください。
「こちらこそお願いします。
俺ももっと話したいと思ってました。」
ライリーは心底嬉しそうな、ほっとしたような表情で答えた。
「約束ですよ?」
最後に念押しを。
***
奇跡のような日だった。
夢じゃないよね??
今日は寝れないかも。
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