第4話
―――1時間前
Streamer所属の配信者は他の参加者より先に会場入りしていた。
ライリーは他のライバーや運営に挨拶を済ませ、配信でもよくコラボする仲の良いメンバーと雑談をしてすごしていた。
主催側というのもあって拒否権がなかったけど、こういうの苦手なんだよな。
そんなことを考えながら過ごすこと1時間。
急に辺りがざわついた。
見渡してみると入口の方に視線が集まっていた。
どうやら遅れてきた参加者を見ているようだ。
途中参加の人なんて散々いただろ。
今になって何に・・・。
天使だ・・・。
思った時には足が動いていた。
黒いオフショルのドレスで大人っぽいような雰囲気をまとっているが、顔はどこか幼さを残す日本人特有のそれ。
目鼻立ちは整い二次元から出てきたかのような印象を受ける。
自分が外国育ちかつ極度のアニメ、もとい日本文化好きだからかドストライクだった。
歩きながら、感じる既視感。
「こんばんは、はじめめして。
ライリー《Riley》という名前で動画配信をしてます!」
彼女はひどく驚いた様子だった。
「いきなりすみません。
お話がしたくて。SAEさんですよね?」
口に出した後に気づく既視感の正体。
いつも見ているバーチャルライバーのSAEにそっくりだ。
きっと本人に似せてデザインされていたのだろう。
本当に彼女ならラッキーだ。
話したい事はいくらでもあるし、彼女の好みも知っている。
「はっ!すみません。
冴と申します!
いつも配信見てます!」
!!!
仕事頑張ってきてよかった―――!!!
聞き間違いじゃないだろうか。
偶然お互いの配信を見てるなんてことがあるだろうか。
運命??
「うれしいです。
偶然にもお互いファンであることがわかりましたし、今度コラボ配信とかどうですか?」
自分にできる最大限さわやかな笑顔で。
海外に住んでいたときは差別の対象だったが、日本ではもてはやされるこのハーフ顔を最大限生かすつもりで。
「いいんですか!?
ぜひよろしくお願いします!」
喜んでいる様子もとてつもなく可愛い。
社交辞令かもしれないがこのチャンス絶対ものにする!
「知り合い?」
同事務所の面々がいつの間にか周りを囲んでいた。
2人で話したかったが、大先輩もいる手前邪険には扱えない。
「いえ、知り合いというわけでは・・・」
「へえ、ナンパ?
やるね。」
みんな彼女とお近づきになりたいと思っていたのだろう。
俺が真っ先に声かけたから、俺に話しかける感じで会話に入ってきた。
「紹介します。
こちら事務所の先輩の
しかたなく紹介する。
自分より登録者多い男のこと紹介したくないんだけどな・・・。
如月海
チャンネル登録者100万人越えの大物バーチャルライバーだ。
昼夜問わずゲーム配信をしている化け物。
事務所からの命令がない限りずっと家にいるんだろうなと思うとそこには親近感を覚える。
優しい先輩で、顔もいい。
俺ほどではないけど身長も高く、スタイルもいい。
外見のイメージは知的なお兄さんって感じだ。
良いところだらけだが、今はそれが憎い。
「はじめまして。
個人で活動してるSAEと申します。」
「この後事務所のメンバーで二次会するんだけどサエちゃんも来ない?」
「いいんですか?」
「事務所のメンバーとは言っても、俺と仲良い面子だけだから大丈夫だよ。
みんな来てほしいって言ってるし。」
「ありがとうございます。
配信者の顔見知りいないので嬉しいです。」
さっきよりは勢いがないがそれでも本当に嬉しそうだ。
自分も参加する二次会だったので心の中で如月にグッドサインを送った。
その後も如月は時々くる他事務所の配信者との挨拶を程々に交わし、そこまで興味がないのか、すぐに彼女との会話に戻った。
まさか如月先輩も狙ってるのか・・・
勝てる気がしない。
ここでは登録者数が絶対の指標だ。
いうなれば王者である彼に勝てる配信者はこの場にはいない。
彼さえいなければ、他の配信者も彼女に近づこうとしただろう。
ライバルがむやみやたらに増えることはないが、強敵が一人いるというような状況。
まずったな・・・。
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