第2話 彼女は実は相当ネガティブだ

読み方


効果音:〇〇の音

〇〇のような音が流れているものと扱ってください。


「」の中身はすべてヒロインのセリフです。


『』の中身はすべてヒロインが回想しているヒロインのセリフです。


あなたは【普段キツいことばっかり言ってくるクラスメイト女子の飼い犬】です。

トイプードルの肉体でお読みください。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ただいま……」


 沈んだ声。

 あなたはまたしても彼女の飼い犬になっているようだ。


 とぼとぼ歩く彼女があなたを抱き上げる。

 耳元で彼女がかすかに鼻をすする。泣いているようだ。


「うううう……」


 ぐずるような声。

 あなたはそのまま彼女の自室に連れ去られる。


効果音:階段を上って部屋に入る音。


 彼女はあなたを抱えたままベッドに寝転がる。


「やっちゃった……やっちゃったよ……」


 彼女は回想する。


『しょうがないから今日も手伝ってあげる』


『……え? いらない? なんで?』


『家で終わらせてきた?』


『な、なんでそんなことするの?』


『め、迷惑をかけたくないって、そんなの……』


『私が迷惑に思ってるとか、勝手に決めつけないでくれる!?』


『そういうの、本当に気持ち悪いっていうか』


『とにかく、あんたにとっては難しいかもしれないけど、私にとっては簡単なんだから……』


『め、迷惑、とか、考えないで…………頼ってくれていいのに』


『え!? あ、いや、違う、違うの。別に、無能とか、そういうのは思ってなくて……』


『あの、えっと、その……』


『…………もう! なんなの!? 人が親切で手伝ってあげるって言ってるのに!』


『そんなこと言うなら、あと全部一人でやれば!?』


『頼まれたって二度と手伝ってなんかやんないから!』


 回想終了。


 彼女がベッドに顔を押し付けて、くぐもった声を出す。


「うううううう……うううううう…………! うううううううううう………………!!」


「そうじゃないの……そういうことが言いたかったんじゃなくって……!」


「わ、私は、ただ、一緒に地味な作業するのとか、すごく憧れてて、それで、それで……」


「そ、そのつもりでいたから」


「急に、『もう終わった』って言われても……どうしていいかわからなくって!」


「でも……言い方……!」


「もっとあるのに、どうして私は、ああいう言葉ばっかり選んじゃうの!?」


「……私、心が汚いのかも」


「そうだ。心が汚いから、とっさにああいう言葉が出てくるんだ」


「綺麗になりたい……綺麗になりたい……」


 彼女があなたの毛むくじゃらな体に顔を押し付けてすすり泣く。

 

 しばらくすすり泣いたあと、彼女は顔を上げる。


「……謝る」


「明日、会ったら、謝る」


「昨日はさすがに言い過ぎた、ごめん、って謝る。絶対謝るんだ」


「……さすがに、謝るぐらい、私でもできるよね?」


「ごめんなさいぐらい、幼稚園児でもできるもんね」


「私……幼稚園児よりは、お姉さんだもん」


「謝ります。言いすぎてごめんなさい。あんなにきついこと言いたかったんじゃないんです。どうしていいか、わからなかっただけ……」


「ああああ……だめ、こんな、自分の都合ばっかり押し付けるような謝り方じゃ、きっとまた嫌われる」


「でも……どう言えばいいの!?」


「あの人以外に謝るのなら、すらすら謝罪できるのに、あの人に謝るって思っただけで……」


「うまく、言葉が出てこないよ」


「……お散歩、行こうか」


「このままじゃ、ダメだから……少し歩いて、気持ちを切り替えよう」


「着替えるね。ちょっと待ってて」


 お散歩が大好きな犬の意識が浮上して、あなたの意識が遠ざかっていく。


効果音:彼女が着替える音。

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