第27話「何かおかしい…まだ終わっていない気がするの」
アビスドラゴンを打ち倒し、カヨたちはついに勝利を手に入れた。戦いの後、霧が晴れていく中で彼らは安堵の表情を浮かべていたが、カヨの心にはどこか拭いきれない不安が残っていた。
霧の谷にて
「やっと…終わったんだね」
広瀬が深い息を吐きながら言った。その言葉には、長い戦いが終わったことに対する安堵と疲労が感じられた。カヨも同じように感じていたが、その瞬間、胸の奥に小さな違和感が生まれた。
「うん、でも…」
カヨが答えようとしたとき、突然の冷たい風が谷を吹き抜けた。まるで何かがカヨたちを見ているような感覚が全身を包んだ。
「何かおかしい…まだ終わっていない気がするの」
カヨが周囲を見渡しながら言った。その言葉に広瀬が驚きの表情を浮かべ、他の仲間たちも緊張を取り戻した。
「どういうこと?アビスドラゴンは確かに倒したはずだよね?」
広瀬が問いかけるが、カヨの不安は増すばかりだった。霧が完全に晴れるはずの谷には、まだどこか暗い影が残っているように感じられた。
「私もそう思いたいけど…何かがまだこの場所に潜んでいるような気がするの。まるで、別の何かが…」
カヨが声を落として言うと、リリアが不安げに周囲を見回した。突然、遠くの空に不気味な黒い影が見えた。
「カヨさん、あれを見て…」
リリアが指さした先には、黒い雲が渦を巻くように集まり始めていた。その雲はアビスドラゴンの消滅と同時に現れたもので、まるでその場所に新たな力が集結しているかのようだった。
「何なの…あれ?」
ヴァルドが警戒心を強めながら呟いた。全員がその異変に気づき、再び緊張感が走った。アビスドラゴンとの戦いが終わったばかりだというのに、次の脅威がすぐに現れたように感じた。
「もしかして、アビスドラゴンは…ただの前哨戦だったのかもしれない」
ザックが冷静に状況を分析しながら言った。彼の言葉に、カヨも広瀬も背筋が凍るような感覚を覚えた。
「まだ…終わってないんだ」
カヨが震える声で言った。その瞬間、黒い雲の中から巨大な影が姿を現し始めた。その形は不明瞭で、まるで異次元から現れるかのように歪んで見えたが、その威圧感はアビスドラゴンをも凌ぐものだった。
「これは…」
全員が言葉を失い、その巨大な影がゆっくりと現れるのを見守った。その存在が現れた瞬間、地面が揺れ、空気が一瞬にして重くなった。
「こんなに強い力…まるでこの世界全体を覆い尽くそうとしているみたい…」
リリアが恐怖を感じながら言った。カヨもその力の前に、自分たちがどれほど小さな存在かを感じざるを得なかった。
「準備を整えましょう。まだ…戦いは終わっていないわ」
カヨが冷静に言い、全員がその言葉に従った。彼らは新たな脅威に立ち向かうために、再び気持ちを引き締めた。
「これからが本当の試練かもしれない。でも、私たちは絶対に負けないわ」
カヨが強い決意を込めて言い、広瀬もその言葉に頷いた。彼らは再び旅立つ準備を整え、新たな脅威に立ち向かうために行動を開始した。
黒い雲の中に潜む未知の存在——それがこの世界に何をもたらすのか、カヨたちはまだ知る由もなかったが、彼らは決して立ち止まることなく、戦い続けることを誓った。
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