第28話「レオンとの出会い」

カヨたちは、アビスドラゴンを倒したものの、世界に残る脅威を感じ取り、新たな仲間を求めて各地を巡る旅を続けていた。次に訪れたのは、北方の山々に囲まれた勇者の村。ここには、かつて大戦で活躍した戦士たちの子孫が住んでおり、彼らの力を求めてカヨたちは村に足を踏み入れた。



――――勇者の村にて


村に入ると、カヨたちは鍛え抜かれた戦士たちが日々厳しい訓練に励んでいる姿を目の当たりにした。彼らの強さと集中力は、カヨたちにとって非常に印象深かった。


「ここで強い仲間を得られれば、私たちの戦力も大きくなるわね」


カヨがつぶやくと、広瀬も興奮気味に頷いた。


「こんなにたくましい人たちが集まってるなんて、すごい場所だね!」


村の中を歩き回るうちに、カヨたちは訓練場の端で一人の若い戦士に目を奪われた。彼は長い金髪を風になびかせ、鋭い青い瞳で訓練場を見つめていた。その立ち姿は堂々としており、訓練中の他の戦士たちと一線を画していた。


「誰あの人…すごくかっこいい!」


広瀬が目を輝かせて呟いた。カヨも彼の姿に思わず見惚れてしまった。


「あの人がこの村の戦士たちの中でも特別な存在なんだろうか…」


カヨが興味深そうに見つめていると、村の老人が彼女たちに話しかけてきた。


「彼はレオン。この村で最も優れた戦士の一人じゃ。彼の剣の腕前は、村の誰もが認めるものだ」


老人の言葉に、カヨはますます彼に興味を抱いた。しかし、レオンは誰とも話さず、訓練に集中していた。




――――初めての接触


カヨたちはレオンに直接話しかけるタイミングを見計らっていたが、彼が一人で訓練を終え、静かに休憩しているところを見つけた。広瀬が緊張しながらも、彼に話しかける決心をした。


「こんにちは!あなたがレオンさんですよね?すごい剣技を見せてもらいました!」


広瀬が声をかけると、レオンは少し驚いた様子で彼女を見つめたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。


「ありがとう。君たちは見慣れない顔だね。ここへは何をしに?」


彼の優しい声と微笑みに、広瀬はすっかり心を奪われてしまった。カヨも少し戸惑いながら、レオンに話しかけた。


「私たちはこの世界を救うために、強力な仲間を探しています。レオンさんの力を借りられたらと思って…」


カヨが真剣な表情で伝えると、レオンは彼女の瞳をじっと見つめた。彼の視線にカヨは少しだけ心が乱れるのを感じたが、その気持ちを抑え、彼女も真っ直ぐにレオンを見返した。


「世界を救うために…か。君たちの決意は伝わったよ。でも、簡単には答えられないな。まずは君たちがどれほどの覚悟を持っているのか、見せてもらいたい」


レオンの言葉には試すような響きがあったが、彼の目にはカヨたちを軽んじるような様子は見られなかった。むしろ、真剣に彼女たちの力を見極めようとしているようだった。




――――共に戦う試練


「それなら、私たちと一緒に訓練をしてみない?」


広瀬が興奮気味に提案すると、レオンは少し驚いた表情を見せたが、やがて微笑んで頷いた。


「いいだろう。君たちがどれほどの力を持っているか、この目で確かめさせてもらおう」


こうして、カヨたちはレオンと共に訓練を行うことになった。訓練場では、彼らはレオンの指導のもと、厳しい試練に挑んだ。レオンの剣技は驚くべきものであり、彼の動き一つ一つが非常に鋭く、力強かった。


「すごい…この人、本当に強い…」


カヨは訓練中、レオンの動きに見惚れながらも、自分の剣技を磨こうと必死に挑んだ。広瀬もまた、レオンに指導されながら、その剣技の一端を身につけようと努力していた。


「レオンさん、あなたのように強くなりたい!」


広瀬が息を切らしながら言うと、レオンは微笑んで彼女を励ました。


「君たちには素質がある。大切なのは、自分を信じることだ」


レオンの優しい言葉に、広瀬はますます彼に惹かれていった。カヨもまた、レオンの力強さと優しさに心が揺れるのを感じていた。




――――仲間としての絆


数日間の訓練を通じて、カヨたちはレオンと深い絆を築き上げた。彼の厳しくも優しい指導のもと、カヨたちは自分たちの力をさらに引き出すことができた。


「レオンさん、私たちと共に戦ってくれませんか?」


カヨが再びレオンに頼むと、彼は少しの間考え込んだが、やがて決意を固めたように頷いた。


「君たちの力と決意は見せてもらった。僕も共に戦おう」


レオンの言葉に、カヨは心からの感謝を伝え、広瀬も喜びに満ちた表情を見せた。


「これからは、私たち一緒ね!」


広瀬が満面の笑みでレオンに言うと、彼は少し照れたように微笑んだ。


こうして、カヨたちは新たな仲間としてレオンを迎え入れることになった。彼との絆が深まる中で、カヨは彼に対する特別な感情が芽生え始めていることに気づき始めた。


新たな仲間を得たカヨたちは、さらに強力な軍団を作り上げるために、次なる冒険へと歩みを進めるのだった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る