第13話「作戦会議」

新たな仲間たちとの出会いを経て、私たちは次なるステップとして、初めての作戦会議に臨むことになった。広瀬さんと私は、まだ軍団を率いるリーダーとしての自覚や実感は薄いままだったが、何とか皆と協力して、この新しい役割を果たそうと心を決めていた。


会議室に集まった私たちを前に、ヴァルドが大きな地図を広げた。その地図には、山岳地帯、森林、村など、さまざまな地形が詳細に描かれていた。


「まずは君たちに、この世界の現状を知ってもらう必要がある」


ヴァルドは厳しい表情で言った。その表情からは、何か重大なことが起きているのだと直感的に感じた。


「今、我々が直面している最大の脅威は、この国の北部にある『暗黒の森』だ。最近、森の中から不気味な生物が現れ、周囲の村々を襲い始めている。彼らは凶暴で、普通の兵士では太刀打ちできない」


「暗黒の森…?」


広瀬さんが不安そうにその言葉を繰り返した。私も同じように、その言葉が持つ重みを感じた。森の中から出てくる不気味な生物というだけで、恐怖を覚えた。


「そうだ。森は古くからこの国の人々にとって禁忌とされてきた場所だが、最近になって異変が起き始めた。そして、その異変は日に日に広がりを見せている。私たちの任務は、この森の異変を探り、原因を突き止めることだ」


「でも…私たち、まだ戦闘の経験もないですし、そんな任務に立ち向かえるかどうか…」


私は率直に不安を口にした。軍団を率いるリーダーとしての役割を受け入れたばかりの私たちにとって、暗黒の森での任務はあまりにも重すぎるように感じた。


「その気持ちは理解できる。しかし、君たちは一人ではない。私たちが共に戦う。リリア、ザック、アイナも君たちを支えてくれる。これからは、一人で抱え込むのではなく、皆と協力して進めばいい」


ヴァルドの言葉に少しだけ心が軽くなった気がした。確かに、私たちはこの軍団と共に戦うことができる。そして、それが新たな試練を乗り越えるための第一歩になるのだろう。


「最初のステップとして、暗黒の森にある『霧の谷』に潜入し、現地の状況を確認する。ザック、君の情報収集のスキルが必要だ」


ヴァルドがザックに指示を出すと、彼は静かに頷いた。


「了解しました。私が先行して潜入し、敵の動きを探ります」


「リリア、君は後方支援として弓の準備を。森の中での視界は限られているが、君の腕なら問題ないはずだ」


「任せてください。どんなに暗くても、目標を外すことはありません」


リリアは自信に満ちた声で答えた。その姿を見て、少しだけ心強く感じた。


「アイナ、君はいつでも回復の準備をしておいてくれ。我々が危険にさらされることがあれば、すぐに対応できるように」


「もちろんです。皆さんの無事を最優先に考えます」


アイナの柔らかな声にも安心感があった。


そして、ヴァルドは私たちに向き直った。


「君たち二人には、この作戦の指揮を取ってもらいたい。森の中では予期せぬことが起こるかもしれないが、冷静に判断し、我々を導いてほしい」


「指揮を…?」


私たちは互いに驚いた表情で見つめ合ったが、すぐに意識を引き締めた。ここで怯んでいては、リーダーとしての役割を果たすことはできない。


「わかりました。私たち、やります」


広瀬さんが勇気を振り絞って答え、私もその意志に同意した。たとえ経験がなくても、この仲間たちと共に戦えば、きっと何かを成し遂げることができるはずだ。


こうして、私たちは「暗黒の森」への初めての任務に挑むことになった。新たな試練が始まる中で、私たちはリーダーとして、そして仲間としての絆を深めていくことになるだろう。恐怖と不安は依然として心の中にあるが、それでも私たちはこの道を進むことを決意したのだった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る