第11話「王の告白」
私たちが訓練を終えて大邸宅に戻ろうとしていたとき、突然、王宮から使者がやってきた。彼は緊張した面持ちで、私たちに「王が直ちに君たちと会いたいと仰せだ」と告げた。
広瀬さんと私は驚きながらも、すぐに支度を整え、王宮へ向かった。王宮の大広間に入ると、そこには王が玉座に座り、厳粛な表情で私たちを迎えていた。
「よく来てくれた、異世界よりの客人よ」
王の声は威厳に満ちていたが、どこか優しさも感じられた。私たちは軽く頭を下げ、静かにその言葉を待った。
「君たちがこの世界に呼ばれた理由について、今こそ明らかにせねばなるまい」
その言葉に、広瀬さんも私も息を飲んだ。これまで曖昧だった私たちの存在理由が、今ついに明かされるのだ。
王は深く息をつき、静かに語り始めた。
「この世界には、古くから続く予言がある。それは『危機の時、異世界より二つの魂が訪れ、世界を導く者となる』というものだ。私たちは長い間、その予言が現実となる日を待ち続けていた。そして、君たちがこの世界に現れた時、ついにその時が来たと確信したのだ」
「導く者…?」
広瀬さんが疑問を口にした。王は頷きながら続けた。
「君たちは、この世界で新たな希望をもたらす存在であり、最強の軍団を率いるべき者として選ばれたのだ」
その言葉に私は驚きを隠せなかった。私たちが軍団を率いる? 平凡なOLだった私たちが、どうしてそんな役割を果たすことになるのか、まだ信じられなかった。
「しかし、王よ…私たちはただの普通の人間です。戦いの経験もなければ、リーダーシップを発揮するようなスキルもありません」
私がそう訴えると、王は静かに微笑んだ。
「確かに、君たちはこの世界に来る前は普通の生活を送っていた。しかし、この世界での君たちには特別な力が宿っている。その力はまだ完全に目覚めていないが、訓練と試練を通じて、君たちはその力を引き出し、真のリーダーとなるだろう」
「特別な力…?」
広瀬さんが再び問いかけたが、王はそれ以上詳しくは語らなかった。ただ、彼の表情には確信があり、その言葉に嘘偽りはないと感じさせた。
「君たちが率いる軍団は、この世界に平和と秩序をもたらすために必要な存在だ。そして、君たちはその軍団を導く存在として選ばれた。これからの道は決して平坦ではないだろう。しかし、君たちが試練を乗り越え、自らの力を信じることで、必ずその役割を果たすことができるはずだ」
王の言葉は重く、そして責任を感じさせるものであった。しかし、同時にその言葉の中に込められた信頼に、私たちは少しだけ勇気を得ることができた。
「これから、君たちには数々の試練が待ち受けているだろう。しかし、そのすべてが君たちを強くし、この世界を救うための力を与えるものだ」
その言葉を聞いて、私たちは深く頭を下げた。異世界に呼ばれた理由が明らかになった今、私たちはこの使命に応えるべく、さらに努力を重ねるしかないのだと覚悟を決めた。
「私たちにできることがあれば、全力で取り組みます」
広瀬さんが力強く答え、私もその意志に同意した。
「そうだ。君たちならきっとできる。私たちは君たちを信じている」
王の言葉が私たちの心に深く響いた。この異世界での役割が何であるか、そして私たちがなぜここに呼ばれたのか、その意味がはっきりとした今、私たちは自分たちの運命に向き合う覚悟を持って、歩み出すことを決意したのだった。
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