第10話「美しい声、異世界に来た意味」
日々の訓練を重ね、私たちは少しずつ成長していた。しかし、剣を振るうたびに、そして毎日の厳しい訓練が終わるたびに、私の心の中には一つの疑問が大きくなっていた。それは、私たちがこの異世界に来た意味だった。
「広瀬さん、私たち、なぜこの世界に来たんだろうね…?」
ある日の夕暮れ、訓練が終わって二人で大邸宅の庭を歩いていたとき、私はその疑問を口にした。広瀬さんも同じことを考えていたのか、少し考え込んだ後に答えた。
「わからないよね。突然この世界に呼ばれて、しかも戦うために剣の訓練を受けて…普通のOLだった私たちが、こんなことになるなんて思わなかったよ」
彼女の言葉には不安と疑問がにじんでいた。私たちはこの異世界で何かしらの役割を果たすために呼ばれたはずだが、それが何なのか、未だに手がかりはなかった。
そのとき、突然、頭の中に澄んだ美しい女性の声が響いた。
「君たちの運命は、この世界に深く結びついている…」
その声は、まるで天使の囁きのように心地よく、しかし同時に深い謎めいた響きを持っていた。私は驚いて立ち止まり、周りを見回したが、誰もいない。広瀬さんも同じように驚いている様子だった。
「カヨさん、今の聞こえた…?」
「うん、聞こえた…でも、誰の声?」
私たちは顔を見合わせ、次第に恐怖が広がっていくのを感じた。しかし、その声は再び、優雅で美しい響きを伴いながら、私たちに語りかけてきた。
「君たちは、この世界に新たな希望をもたらす存在…だが、その力を目覚めさせるためには、試練を乗り越えねばならない…」
その言葉に、私たちは立ち尽くした。この声が何を意味しているのか、まだはっきりとはわからなかったが、少なくとも私たちがここに呼ばれた理由に関係していることは間違いなさそうだった。
「希望…って、私たちが?」
広瀬さんが不安げに呟く。私も同じように混乱していたが、その声が言う「希望」という言葉に、何か重大な意味が込められていることを感じた。
「試練を乗り越えることで、君たちは真の力を手にする…その力が、この世界を救う鍵となるだろう…」
声はそれだけを告げると、ふわりと消えてしまった。あたりは再び静寂に包まれ、私たちはただその場に立ち尽くしていた。
「…今の、一体何だったんだろう?」
「わからない。でも、何か重要なことを示唆しているような気がする…」
私たちは再び歩き出しながら、頭の中でその言葉を反芻していた。希望、新たな力、そして試練――これらが私たちの異世界での運命にどう関わってくるのか、まだ具体的なことは何もわからない。
「でも、少しだけわかったことがある。この世界に私たちが来たのは、偶然じゃないってことだよね」
広瀬さんがそう言うと、私も頷いた。確かに、あの美しい声が告げた通り、私たちがここにいるのは何かしらの使命を果たすためなのだろう。
「そうだね、広瀬さん。きっと、私たちには何かを成し遂げる役割があるんだと思う。まだその全貌は見えないけど…」
不安と恐怖は依然として私たちの心の中にあったが、それでも少しだけ進むべき道が見えてきたような気がした。これから何が起こるのか、私たちがどういう運命に導かれるのかはまだわからないが、少なくともこの世界での意味が少しずつ明らかになり始めたのだ。
その夜、私たちは再び不安とともに眠りについたが、今度は少しだけ希望を抱いていた。試練を乗り越えることで、私たちはこの世界に新たな何かをもたらすことができる――そう信じながら。
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