第9話「剣を握る覚悟」

初めての対人戦闘訓練が終わった後、私たちは肩で息をしながらその場に座り込んだ。剣を振るうという経験は、想像以上に体力を消耗させるもので、心も体も疲れ果てていた。


「カヨさん、大丈夫?」


広瀬さんが私の顔を覗き込んでくる。彼女も同じように疲れているのは明らかだったが、その目には強い意志が宿っていた。


「うん…何とかね。広瀬さんこそ、大丈夫?」


「うん、大丈夫。だけど、やっぱり怖かったよね…」


彼女の言葉に、私は深く頷いた。剣を握るたびに感じる重みと、相手と対峙することへの恐怖は、まだ消えていない。だが、私たちはこの世界で生き抜くために、その恐怖に立ち向かわなければならない。


「君たちはよくやった。初めての訓練にしては上出来だ」


ライエル隊長が私たちに近づき、励ましの言葉をかけてくれた。その言葉に、少しだけ自信を持つことができたが、まだまだこれからの道のりは長いと感じた。


「これからも少しずつ訓練を重ねていけば、恐怖や不安も次第に薄れていく。大切なのは、自分を信じて進むことだ」


ライエル隊長の言葉には力強さがあり、その声に耳を傾けることで、私は少しずつ心の中の不安が和らいでいくのを感じた。彼の言う通り、焦らずに少しずつ進んでいくしかないのだ。


「ありがとう、ライエル隊長。私たち、もっと強くなれるように頑張ります」


広瀬さんが前向きな言葉を口にし、その表情には覚悟が見えた。私も彼女の言葉に同意し、自分を奮い立たせる。


「そうだね。私たち、もっと強くなろう」


そう決意を新たにしながら、私たちは剣を握り直した。訓練が終わったばかりの手はまだ震えていたが、その震えを抑え込むように、私は強く剣の柄を握った。


「よし、今日はこれで終わりにしよう。次の訓練までしっかり休んでおくんだ」


ライエル隊長が私たちを解放してくれたが、心の中にはまだ不安が残っていた。訓練場を後にして、大邸宅に戻る道中、広瀬さんと共に歩きながら、私は無言で自分と向き合った。


「広瀬さん、私たち、これからどうなるんだろうね…」


「わからない。でも、きっと私たちにできることがあるはずだよ。少しずつでも進んでいけば、いつか答えが見えてくると思う」


広瀬さんの言葉に少しだけ救われた気がしたが、それでも不安は完全には消えない。この異世界で私たちが何を成し遂げることになるのか、それはまだ霧の中に包まれていた。


しかし、この日から、私たちは少しずつ剣に慣れていく決意を固めた。恐怖や不安に負けず、毎日の訓練を通じて、少しずつ強くなるために――そのために、私たちは今日も剣を握り、前に進むのだと心に誓った。


この異世界での試練はまだ始まったばかりだが、私たちはもう後戻りはできない。自分たちの手で道を切り開く覚悟を持ち、不安と向き合いながら、これからも歩み続けるしかないのだ。







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