第7話「剣と初めて向き合う瞬間」
私たちが訓練を受けるための装備を受け取り、基本的な体術や武器の扱い方を教わることになった直後、私はその重さに驚きながらも、剣を手に取った。初めて手にする剣は、思った以上にずっしりと重く、ただ握るだけでもバランスを崩しそうになる。
「まずは剣の基本的な握り方から始めよう」
ライエル隊長が私たちに指示を出す。彼の声は冷静で、私たちに焦りを感じさせないよう配慮しているのがわかるが、それでも緊張は隠せなかった。剣なんて持ったことのない私たちにとって、これから何が待ち受けているのか、不安が募るばかりだ。
「こうやって、手のひらで柄をしっかりと包むように握るんだ。そして、腕全体で剣を支える感覚をつかむんだよ」
ライエル隊長が実演して見せた。その動きは滑らかで無駄がなく、まるで剣と一体化しているかのようだった。私もそれを真似しようとするが、剣の重さに腕が震え、思うように動かせない。
「カヨさん、大丈夫ですか?」
広瀬さんが心配そうに声をかけてくる。彼女もまた、剣を扱うことに慣れておらず、私と同じように苦戦している様子だった。
「なんとか…ね。でも、やっぱり難しいよね」
剣を握る手に力を込めようとするが、指が硬直してしまう。思っていた以上に、剣を扱うのは簡単なことではなかった。
「焦らずに、ゆっくりと動かしてみてくれ」
ライエル隊長が近づき、私の剣の持ち方を矯正してくれる。その手は温かく、安心感を与えてくれるが、それでも自分の不器用さに恥ずかしさを感じずにはいられない。
「こうだね。肘を柔らかくして、剣を振るというより、剣と一緒に動く感覚をつかむんだ」
言われた通りに腕を動かしてみると、少しだけ剣が扱いやすくなったような気がした。だが、それでもまだぎこちなく、思うように動かせない。
「上手い、カヨさん!少しずつ慣れていこうね」
広瀬さんが微笑みかけてくれるが、彼女自身も必死に剣を振っている。私たちは不安と緊張に押しつぶされそうになりながらも、なんとか初めての剣の感覚に慣れようとしていた。
その後、ライエル隊長は私たちに基本的な体の動かし方、剣の振り方を丁寧に教えてくれた。彼の指導はわかりやすく、私たちが混乱しないようにゆっくりと進めてくれるが、それでも不安は消えない。
「大丈夫、ゆっくりでいい。君たちはこれから少しずつ強くなっていくんだ」
ライエル隊長の言葉に、私は少しだけ勇気をもらった。しかし、心の奥底にある不安はまだ完全に消えることはなかった。この剣を使いこなせるようになる日が来るのかどうか、それすらもわからないまま、私はただ、必死に剣を握り続けた。
「頑張ろうね、広瀬さん」
「うん、カヨさん。一緒に頑張ろう」
不安と緊張の中、私たちは初めての訓練を続けた。剣を手にするということが、こんなにも難しいものだとは思わなかった。しかし、この瞬間から、私たちの異世界での戦いは本格的に始まったのだ。
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