第6話「不安な任務の始まり」
広瀬さんと共にライエル隊長に案内されながら、私たちは大邸宅の広大な敷地内を歩いていた。庭園の花々は鮮やかな色合いを見せ、穏やかな風が木々を揺らす音が耳に心地よく響く。
しかし、その美しさがむしろ異世界の現実を強調し、私の胸の中で渦巻く不安を消し去ることはできなかった。
「この国では、異世界から来た者たちが特別な役割を担うことが多いんだ」とライエルは語りかけてきた。
「え、特別な役割…?」
私が聞き返すと、ライエルは軽く頷いて続けた。
「そうだ。君たちがこの世界に呼ばれたのは、何かしらの使命があるからだ」
「使命?」
「だが、その使命が何なのかは、まだ誰も知らない。ただ、君たちがここで無事に暮らせるよう、私たちは全力でサポートする」
その言葉に少し安心感を覚えるが、やはり自分たちの役割が何なのかを考えると、不安が頭をもたげる。
「でも、私たちはただのOLですし…特に何か特別な能力があるわけでもないんです」
広瀬さんが遠慮がちに言うと、ライエルは微笑んで答えた。
「そうかもしれない。だが、この世界では誰もが何かしらの役割を持っている。君たちがまだそれを見つけていないだけだ。焦らずに進めば、きっと自分たちの道が見えてくるさ」
その言葉に励まされながらも、私たちがここで何をすべきかについての不安は拭い去れなかった。特に、私たちがどんな役割を果たすことになるのか、まったく見当がつかないのだ。
その後、ライエルは私たちを訓練場へと案内した。
広い訓練場では、何人もの兵士たちが剣や弓を手に訓練を行っていた。その光景は現実的すぎて、まるで映画のセットに迷い込んだような気分にさせられる。
「今日からここで少しずつ訓練を受けてもらう。まずはこの世界での基本的なことを学んでいこう」
ライエルの言葉に、私たちはただ頷くしかなかった。広瀬さんも、私と同じように不安そうな表情を浮かべている。
「訓練…私たちが?」
「そうだ。異世界から来た君たちには、この世界の常識や戦い方を学ぶ必要がある。だが心配することはない。無理をしないで、少しずつでいい」
ライエルの優しい言葉にもかかわらず、私は胸の中で不安が大きく膨らんでいくのを感じた。戦い? 私たちが? 平凡なOLだった私たちが、戦いに関わるなんて、そんなの現実とは思えない。
「……やれるだけ、やってみます」
そう答えるのが精一杯だった。広瀬さんも、同じように不安そうに頷いている。
その後、私たちは訓練を受けるための装備を受け取り、基本的な体術や武器の扱い方を教わることになった。初めて手にする剣は重く、体を動かすたびにバランスを崩しそうになる。
「難しいね…こんなこと、私たちにできるのかな…」
広瀬さんが弱音を吐くのも無理はなかった。私も同じように不安でいっぱいだった。
「無理をせず、少しずつ慣れていけばいいさ。焦る必要はない」
ライエルの励ましに少し救われたが、それでも私たちがこの世界で何をすべきなのか、その答えはまだ見えないままだった。
「私たち、本当にここでやっていけるのかな…」
その問いが頭の中でぐるぐると回り続ける。異世界での初めての任務は、まさに不安に満ちたものだった。この先、私たちはどうなるのか、それはまだ誰にもわからない。
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