第4話「不安な日々と不思議な出会い」


王宮を後にした私たち、今田カヨと広瀬は、王が用意してくれた宿泊所に案内された。そこは豪華な大邸宅で、私たちがこれまで経験したことのないほど立派な場所だった。しかし、その豪華さがむしろ現実感を失わせ、まるで夢の中にいるような感覚を強めていた。


「何がどうなっちゃったんだろう…」


広瀬さんと一緒に広々とした客間に通され、ふかふかのソファに腰を下ろすと、再び不安が襲ってきた。異世界に来てからの出来事が頭の中でぐるぐると回り、心が落ち着かない。


「カヨさん、私たちどうすればいいんですかね…」


広瀬さんが疲れた声でつぶやいた。彼女もまた、この非現実的な状況に困惑しているようだ。


「……とりあえず、言われた通りにしよう。何が起こるかわからないけど、少しでも情報を集めて、ここでの生活に慣れるしかないよね」


そう言いながらも、自分の言葉が心に響いてこない。どうすればいいのか、何をすればいいのか、まったく見当がつかないまま、不安だけが募っていく。


その時、ドアが軽くノックされた。


「失礼いたします、こちらにお食事をお持ちしました」


現れたのは、優しげな顔立ちの中年の女性。彼女は笑顔で私たちに食事を運んできてくれた。その料理は、見たこともないような豪華なものばかりで、異世界の文化を感じさせる一品ばかりだった。


まず目に飛び込んできたのは、大きな銀のプレートに乗せられた肉料理。一見するとローストチキンに似ているが、色味が少し紫がかっており、香りもスパイシーでエキゾチックだった。肉の表面には光沢があり、まるで蜂蜜がたっぷりと塗られているかのように見えるが、実際には透明なソースが絡んでいて、甘酸っぱい香りが漂っている。


次に出されたのは、鮮やかな緑色をしたスープ。見た目はほうれん草のポタージュのようだが、スープの中には小さな銀色の粒が浮かんでいて、それが不思議な輝きを放っていた。スプーンで一口すくうと、やわらかい食感が広がり、口の中にまろやかな風味が広がる。


「お疲れのようですね。どうぞ、少しでもお召し上がりください。お二人のために精一杯おもてなしさせていただきます」


女性の温かい言葉に少しだけ心が和らいだが、それでも不安は消えなかった。私たちが何者で、なぜこの世界に来たのか、まだ何もわかっていないのだ。


「ありがとうございます。でも、本当に私たちがここにいていいのか、まだ信じられなくて…」


そう言うと、女性は優しく頷きながら答えた。


「無理もありません。この世界に来られたばかりで、何もかもが初めてのことばかりでしょう。でも、どうかご安心を。この家の者たちは皆、あなた方を助けるためにおります。何かお困りのことがあれば、どうぞ遠慮なくお申し付けください」


その言葉に少し救われた気がしたが、それでも根底にある不安は拭いきれない。異世界での生活が始まったばかりだが、私たちがこれからどうなるのか、まったく見通しが立たないままだった。


その夜、広瀬さんと共にベッドに横たわり、異世界の星空を眺めながら、私は一人考えていた。明日から何が起こるのか、私たちはこの世界でどう生きていけばいいのか――答えのない問いに胸が締め付けられる。


「カヨさん、寝られますか…?」


隣から聞こえる広瀬さんの声も不安げだった。


「ううん、まだ寝られそうにないかな…。広瀬さんも?」


「はい、いろいろ考えちゃって…」


お互いに不安を抱えながら、それでも何とか寝ようと努力する。しかし、明日がどうなるのかもわからないこの状況では、眠りにつくのも難しい。


「無事に現実世界に帰れたらいいけど…」


心の中でそう祈りながら、私は不安な夜を過ごした。異世界での生活が始まったばかりだが、その先に待ち受ける運命はまだ何もわからない。ただ一つわかるのは、この不安がしばらく続くということだけだった。

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