第7話 いきなり国が4つも出現したんだがの件

 まず最初に核ミサイル級の斬撃を飛ばした後。

 城壁から見える景色に変化が生じた。

 それは4つの国が見える。

 城が4つあるからだ。


 距離感は結構あって、四つの真ん中には巨大なクレーターが出来上がっている。

 どうやらそこに何かがあって、結界的な物だったらしく。

 それを上沢が破壊してしまったのだろう。


「ほほーどうりで周りがずっと赤茶色の大地だったわけだ。人が住んでるってことは、きっとおいしい食事もあるはず! イッチョ行ってみるか!」


 城壁からジャンプして赤茶色の大地へと着地する。

 後は思いっきり走るだけなのだが。

 体が尋常じゃないくらい軽いという事に気付いた。

 これ、マッハとか出てんじゃね?

 恐らく、北海道から青森くらいの距離だと思っていたんだけど。

 10分で到着してしまった。


 城壁の手前で歩調を合わせて歩き出す。

 わくわくどきどき。


 農民が働いている。

 そりゃ盗賊がいたくらいだから、人間が住んでいるだろうさ。


 提示版を発見。

 一応この世界の文字を認識する事が出来るらしい。


【ふむふむ、魔王討伐。勇気あるもの募集】


 いいねーどんな魔王なんだろうか。

 ぜひともお会いしたいものだ。

 上沢は城門の入り口にて、兵士達に取り囲まれる事になった。


「貴様、見たこともない服装だな」


「すみません、田舎暮らしでして」


「田舎でもそんな服は無いぞ」


 兵士のいかめしいおっさんが告げる。


「そうですねーじゃ」

 

 と言いながら、思いっきりジャンプ。

 城壁の真上に着地。


「侵入者だって、人間じゃねーだろおおおお」

 

 兵士が叫ぶ中。

 上沢は城下町の中へと侵入し人込みの中へと紛れて行った。


 どこぞの建物の中。

 子供が1人で勉強机なのか一心不乱に勉強している。

 

「やぁ」


「ひゃぁ」


「ごめん、服を買いたいんだけどどこに行けばいいかな、それともこの服と交換しないかな」


「その服って珍しいね、それなら、お父さんのと交換しようよ」

「良いねー」


 どこぞの民家よりこの世界の服を手に入れる事が出来た。

 どことなく貴族っぽい服だが気にせず。

 外に出ると人込みに紛れる。


 美味しい食事、美味しい食事。


 最近は石ころを等価交換で干し肉にしたり。

 後はバナナばかりで胃袋がおかしくなってたりしていた。


 唐突に、ある問題にぶち当たった。


「やばい、この世界の金がない」


 盗むわけにもいかず。

 どうしたものかと考えていると。

 とりあえず路地裏に入る。


 落ちていたレンガとかぼろぼろの衣服とか。

 触ってみると、等価交換できる見たいで、リストが表示される。


【硬貨】【レザー】【鉱物】


 等々が出てきたので、取り合えず。硬貨にする事にした。

 レンガ1個で硬貨2枚と言ったところ。


 ぼろぼろの衣服などは、硬貨3枚。


 後は指輪が落ちていたので、それも等価交換で金貨10枚になった。


「これで、飯が食えるぞおおおお」

 

 路地裏で不審者が叫んでいた。

 酒場に行けばいいのか、酒樽があるお店に向かった。

 扉を開けると、そこには大勢の武器を持った人達がいた。

 これから何かが始まるのだろうか?


 とりあえず、上沢はカウンターの椅子に座った。


「おう、お前も魔王討伐軍に入るのか」


「はへ?」


「いや、今ここに集まってるのは魔王を討伐しようっていう冒険者や勇者と呼ばれた猛者達だ」


「へぇ、飯を食いたいんだが、金貨10枚と硬貨5枚で何か食えるか」


「バカいっちゃいけねー金貨10枚だと1年分の食料だぞ、どれくらい食うつもりだ」


「すまんすまん、この国の貨幣の価値が分からなくて」


「ほほう、どこから来たんだい?」


「うーん日本?」


「ニホン聞いた事ねーな、取り合えず、硬貨5枚でドラゴンハンバーグステーキでも食わせてやるよ」

「まじかよ、ドラゴンなんて食えるのかい」


「高くてな、ここに冒険者が集ったおかげでそいつらが狩ってきたのさ」


 そう言いながら酒場の亭主が分厚い肉を焼き始めた。

 さらに、ひき肉を混ぜて、ハンバーグとステーキの融合。

 腹がぐるぐると鳴り響く。


 この世界での初めての贅沢。


 10分後にはカウンターの机にドラゴンハンバーグステーキが並べられる。

 フォークとナイフを片手に片手に口に運ぶ。


 口の中で大トロのようにとろけていく。 

 バチンと何かが弾く。

 まるで魔力のそれのようだ。

 口の中で何度も弾く。


 あまりの美味に涙がこぼれる。

 干し肉とバナナ生活は苦渋の生活だったようだ。


「はふー」


「うめーだろ」


「てめーら、集まったようだな、これから、騎士団長ガイバス様がやってくる。作戦の事細かな事を伝えるそうだ。他の冒険者ギルド支部にも騎士団長様達が向かった。勇者と呼ばれた人達、冒険者、傭兵、勇気ある人達。よく集った。今から突如現れた4つの城を持つ魔王を討伐する作戦を練る」


「ぶほ」


 それって、自分が住んでいる場所じゃねーか、あそこには魔王がいたのか。

 いやー気付かなかったなー。

 これは作戦に参加せねば。

 自分が住んでいる場所の安全確保が第一だ。


「おい、そこの貴族のおっさん、さっさとドラゴンハンバーグステーキを食っちまえ」


 冒険者風のおっさんが叫ぶ。


「はいはいーっと」


 いかめしい鎧を付けた。銀色の長髪の男。

 イケメンスタイルなのだが、どことなくむかつく顔をしている。

 不機嫌のようだ。


「騎士団長ガイバスだ。これから本作戦の日付を告げる。今からだ! 各国では緊急性を示唆している。魔王のヤイバは国を破壊するレベルの魔法と判断。魔法を発動するのに時間がかかると思われる。時間ない、今から作戦を練るぞ」


 ごくりとその場が静まり返る。

 魔王は国を破壊するレベルの魔法を使える。

 そんな奴が上沢の城のどこかにいると。もしかしたらゴゴリラが住んでいた洞窟のどこかにいるのだろうか。


 そんな状況で騎士団長ガイバスが説明を始める。


「まず、ボスはよく城壁の上に歩いているそうだ。レベルは1億くらい。次の危険が老人だ。ただの老人だと思うな、徘徊しているらしいが、レベル換算で5千万だ。次がいつも別次元いる女性、どこからやって来るか不明だ。恐らく魔法系等の魔族だろうレベル換算で3千万だ。問題は城壁の周りを取り囲む魔王10人だ。レベル換算だと100万だ。スケルトンの大軍も1体がゴッド級。1000体いるそうだ。これは人類の危機だ」


 あのーどこかで聞いた事のある内容なのですが。

 もしかして、上沢が魔王だと思われてる?

 その時だ。警報が鳴り響いた。

 城中がけたたましい音が鳴り響く。


「大変だ。レベル1億の魔王がこの城下町にいるぞおおお、フレシア姫が感知したぞおおおお」


「やっぱ俺じゃん、あ」


 その場全員がこちらに視線を向けた。


「いえいえーではー」


「そういえば、あんた見ない顔だな、身分証明のバッジあるか?」


 騎士団長ガイバスがこちらにやってくる。

 あー非常にまずい。

 ドラゴンハンバーグステーキまだ全部食ってない。


「バッジ? そんなもんないけど」


「それはありえないんだよ」


「なんでぇ?」


「お前、冒険者なら必ずバッジを持っているはずだが? なぜここにいる? ただの農民でも持ってるぞ、子供でも持ってる。誰もが冒険者になりたがり、なれなくともバッジをもっている。忘れていたとしても、そんなもんないけどなんて言わないぞ、こ、こいつはあああ」


 騎士団長ガイバスの顔が愉悦に膨らむ。


「こんなただのおっさんがレベル1億の魔王だと? は、はははは、こいつを殺せば、俺は騎士団長より上の存在になれる。問答無用」


 ガイバスがロングソードを引き抜くなり、それを高速で繰り出す。


「あ、止まって見える」


 スローモーション。

 映画でよくある奴だ。

 右手の人差し指と親指で剣の腹を抑えて、パキンと折る。

 それが跳ね返って、事故だったのだが、騎士団長ガイバスの首に突き刺さり、口から吐血して絶命してしまう。


 騎士団等ガイバスの運命は2秒で終わった。


「ひ、ひやああああああああ」

「騎士団長ガイバス様が2秒で瞬殺ううううう」

「ガイバス様は巨人族を討伐出来る程の強者だぞ」


「あ、いえ、すみませんが、皆さん通してもらえますか?」


「この国の命運は俺達にかかっている」

「こ、殺せ」

「魔王を殺すんだ」

「武器を」


 みなさーん、こんな酒場でスキルやら魔法を使わないでえええええ。


 勇者と呼ばれた猛者。 

 冒険者と呼ばれた男や女たち。

 名のある農民。

 名をはせる事を夢見る人々。


 彼等が肉薄するのと同時に。

 酒場が爆発した。


「けほけほ」


【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

    ↓×???


 相変わらず、レベルが上がりましたコールのフィーバーだった。

 きっと頭の上でスロットが全快になっているのだろう。


 辺りを見間回すと。魔王を倒すと意気込んでいた人達の死体が転がっている。 

 ドラゴンハンバーグステーキをくれた酒場の亭主だけが生きていた。


「あ、あんた、ば、化物か」


「いやー可笑しいな、なんで攻撃されたのに生きてんだ?」


「あんた、攻撃されて、全部反射してたぞ」

「反射?」


「防御力を極めた人間が到達できると言われる。攻撃を反射するという、レベル1億なら当然なのか」


「それは知りませんが、あやべ」


 名のある勇者、冒険者、猛者達が集まってくる。

 数だけでもざっと1000人は超えるだろう。

 皆こちらを見ている。

 

 1人の姫らしき人が告げる。


「あいつよ、レベルが上がってる。2億になってるわ、どうなってるのおおお」


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