第6話 バナナ大量生産

 バナナの畑、約100本以上。

 ゴルさんの動きが化物と化した。

 今までのゴルさんのレベルアップはこの時の為にあったのか! と思える程の異形ぶり。

 高速の水やり。

 池の水が無くなるのではないかと危惧するくらいになってくる。


 ゴルさんは巨大な桶。

 つまり巨大な岩を使って、雨の如く雑に池の水をバナナの畑にぶちまける。

 バナナの樹がみるみるうちに成長すると。

 高速でバナナ狩りを始める。

 微調整された力でのタックル。

 落下するバナナ数十本を高速でキャッチ。

 カゴにしまい続ける。


 ある程度バナナが集まってくると。

 城の保管庫にてバナナを収納。

 もちろん真ん中の城だ。


 ゴルさんの歩くスピードはもはや馬を超えている。

 それを城壁の上から眺める上沢。


 まるでストラテジーゲームをやっているような感覚になる。

 城の外側ではバナナを食いながら勇者達が巡回。

 ゴッドスケルトンは1000体いるので、彼等は城のあちこちで彷徨っている。

 もはやここは勇者軍と魔王軍が融合した、不思議な王国になりつつある。

 とはいえ住民が少なすぎる気がするが。

 バナナが3000本獲得出来た。

 相変わらず成長が早い。

 またバナナを使って、畑を増やす。

 バナナを生やさせてバナナの畑を等価交換で手に入れる。

 それを何度も何度も繰り返すと。

 城の中のあちこちがバナナの畑だらけになってしまう。


 せめて家を建てろと突っ込まれそうだが、バナナの王国になってくる。


「一体俺は何に向かってるんだああああああ」


 上沢の慟哭がバナナ王国に響き渡った。


 ざっとバナナが10000本溜まったので、等価交換をしてみようと思う。

 まず、城の保管庫にこれ見よがしにバナナが山積みになっている。


「ふ、ふふふ」


 バナナ中毒におかされている危険人物のように、バナナに触れる。


【ΩΛの剣】

 

 よくわからない剣が召喚出来そうだ。

 等価交換を発動する。

 1本の剣が出現。

 黒と白が混ざっており、禍々しい光を発している。


 これに触れるのは恐怖そのものだが。

 触れる事に。

 等価交換が出来ない。


 そして、圧倒的に軽い。

 試しにと掴んで城壁に上り。 

 遥か赤茶色の荒野の向こうに続いている緑あふれる大地を斬れるだろうかと。

 斬撃を飛ばすふりをして。

 まず剣術なんて剣道くらいしか知らない訳だし。


 ぶんと振り下ろしただけで。

 巨大な斬撃が、遥か大地を削り。

 緑あふれる大地を両断し。

 次の瞬間大きな大きな爆発を引き起こした。


「あ、あれか、核ミサイル級の武器なのか!」


 どうやらバナナ10000本で手に入れられる武器は核ミサイル級らしい。


「ふぅ」


 なんか物凄く、とてつもなく、やってはいけない事をした気がする。


 

===メイプロール王国===


 どこにでもある、どこにでもない。

 平和で、メイプルシロップの香りがよくする王国。

 甘い香りで、ホットケーキやらバウムクーヘンが有名な王国。

 隣にはガム王国があり、そことも和平条約を結んでいる。


 赤茶色の荒野は人が住めなくなり、化物の住処となっている。

 だが、最近、赤茶色の荒野、忽然と城が生まれた。

 ロール国王はそれが1つの悩みであった。


「集まったか皆の物」


 円卓会議。

 

 ガム王国の王子ガムル

 トメイトロ王国の王トメロ

 ラフレシア王国の姫フレシア

 メイプルロール王国の王ロール


 4つの国は今緊急会議を開いていた。


「つまり、魔王が来たと」


「可能性があります」


「じゃが、一夜にして城が4つも建てられるだろうか」


「いえ、最初は1つ、次に3つですわ」


「フレシア姫、どのように見ていたのですか?」


「私の魔法で遠距離から観察していました。本当に突如出現したのです城が、あと、スケルトンの大軍がいます。それもゴッド級です」


「ふむ」


「後、レベルを認識したところ。魔王クラスが10人います」


「そ、それは誠か」


「それはまだ甘いですわ、3人の例外がいます。1人はよく城壁やらを登って指揮しているようで、魔王かと思ったのですがそれ以上、レベル換算にすると1億ですわ、2人目は良く歩く老人でレベル換算にすると5千万。もう1人は女性で別次元にいる事が分かっているんですが、レベル換算にすると3千万。最後に例外ですが、人間ではなく、スケルトンです。スケルトンはおそらく死霊使い、レベル換算で把握出来ません。わたくし死者は分析出来ないので」


「ふむ、魔王クラスが10人と言うがレベル換算では」


「1人につき100万ですわ」


「無理だ」


「この世界は終わってしまう」


「そもそも、討伐するだけが方法ではないぞ」


 ガムル王子が呟く。


「つまり交渉か」


「いや毒殺だろう」


「暗殺もやぶさかでは」


「ふむー」


 その時だった。


「あ、いけない」


「どうしたフレシア姫」


「城から莫大な力がこちらに来ます!」


「なんだとおおおお」


 巨大な爆音。

 大地が避ける音。

 建物が崩壊する音。

 頭上を何かが通り過ぎて行った。

 かつて勇者が建設したとされる。勇者の塔。

 それが爆発したではないか。


 勇者の塔は4つの王国に蜃気楼の力を及ぼし、外からの侵略者から守るために、国の姿を見せないようにしてきた。


 つまり、赤茶色の大地の謎の城から彼等を守る唯一の可能性だったのだ。


「やられた」


「これで」


「交渉は無理」


「即座に、各地より冒険者、勇者、将軍、兵士を募れ!」


 戦争が始まろうとしていた。

 全ては偶然の産物。

 始まりはたかだがバナナだったのだから。


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