第3話 モンスター

 上沢はリーリャと共に赤茶色の大地を歩く。

 遠くを眺めていると、やはり果てしなく荒野が続いている。

 モンスター等いるのだろうか。


「こちらからモンスターの臭いがします」


 なんとリーリャはモンスターの臭いが分かるらしい。

 くんかくんかしているだけで、頭上にレベルアップの文字が出現している。

 あれか、嗅覚のレベルが上がっているのか?

 それとも何か別のレベルが上がっているのか?


 それを知っているのはきっと神様くらいだろうな。


「この洞窟から臭います」


 なんと、リーリャは荒野の岩陰の隅に洞窟がある事を発見してしまった。

 

「うむ、お前、鼻大丈夫か?」


「ええ、ここからモンスターの臭いが物凄いです」


 何か知らんが、リーリャの頭上のレベルアップの文字がフィーバーしてるんだが。

 連打でレベルアップしてるんだが。

 これ大丈夫なのか?


「うむ、リーリャもう臭いを嗅ぐのを止めた方が良い」

「なんでですか? どんどん臭いが強くなってます」


 それ以上レベルが上がると、上沢の体臭まで嗅がれて、こちらとしては物凄く恥ずかしいのだが?


 洞窟の中を歩き出すと。

 暗闇に包まれるかと思ったが、壁に埋め込まれた鉱石が光り輝いて、道しるべとなってくれる。


 試しに嵌められた鉱石を彫り出してみて、手に取ると。


 等価交換リストが出現する。


【バナナソード】【バナナナイフ】【バナナランス】


 なぜにバナナ?

 いや、冷静に考えろ、左手についついバナナを持っていたではないか。

 つまりバナナと鉱石の2つで武器となるのか、じゃあバナナを置くとどうなる?


 左手のバナナを置いて、鉱石だけを持ってみると。


【玩具の剣】


 だけになったではないか。

 これは仕方なくバナナソードを選ぶ事にしよう。

 黄色いバナナの形をしたバナナソードを手にいれた。


 歩き続けると、ゴリラみたいなモンスターが出てきた。

 ただめっさ、小型猿くらいの大きさなんだが。

 だが、無骨く手、胸板が凄くて、もはやゴリラ。

 でもちっさい。


 リーリャが口笛を吹くと、瞬く間にゴリラが懐いてしまった。

 リーリャの頭上にレベルアップの文字がフィーバーしている。

 もはやスロットかと思える程の連打ぶり。


「ちょっと触れて良いか」


「もちろんです」


 上沢はゴリラに触れると。


【ゴゴリラを等価交換しますか?】


 鑑定スキルを覚えていないので、こうして等価交換情報を利用して名前を知る事が出来る。

 なんかゲームのバグを上手く利用している感があって少しだけ罪悪感を抱いた。


【城1/100】

 

 と表示された。

 つまり、ゴゴリラを100体集めると、それを生贄にして城が作れるらしい。


「よし、リーリャ、ゴゴリラを100体集めるぞ」

「そんな事をしても意味はないと思うんですけどねー」


「良いかリーリャ、ゴゴリラを100体集めると、なんと城が出来るぞ」

「なんですとおおおおおおお、捕まえましょう」


 それから、リーリャとゴゴリラ捕獲の任務についた。

 洞窟の中を歩き続ける。

 色々な素材を拾っては等価交換で良さそうなのを確かめて行った。

 ろくなものがない。1番良かったのはバナナだろう。

 やはりバナナは偉大だ。


 歩き続けて早2時間、ゴゴリラが50体集まった。

 一体この洞窟の中にゴゴリラが何体いると言うのだ。

 果てしなく果てしなく奥へ奥へと潜り続けて、ゴゴリラが無数にいる。

 もはやリーリャのテイムレベルなのだろうか?

 それがものすごいレベルなのだろう。


 リーリャのフェロモン的な臭いから、ゴゴリラが勝手に近づいて勝手にテイムされていっている。

 ある意味歩く♀ゴリラと化しているではないか。


「なぁ、お前が叫べば洞窟からゴゴリラが集まるんじゃないか?」


「やってみますねーゴゴリラさーーーーん集まってえええええええ」


 しばらくの間の沈黙。

 その後、地響きのような音が辺りを支配した。

 洞窟の奥からゴゴリラが50体走ってきたではないか。

 もはや目指すはリーリャ。


「よし!」


 かくしてゴゴリラ100体を捕獲する事に成功した。


 バナナソードを使う事はなかったが。

 いつかそのバナナソードでモンスターや魔王とか倒してみたいなーとか思いつつも。


 住処に退散した。


 洞窟から出る時に、巨大なゴゴリラが待っていた。


 触れてみるとボスゴゴリラと出てきて。

 等価交換対象外らしい。


 ボスゴゴリラはなぜか上沢のバナナに興味を示していた。

 リーリャの懐かない辺りが謎だ。

 戦闘にはならず、ボスゴゴリラにバナナを提供すると、即座にテイム成功。

 ボスゴゴリラは上沢の相棒となった。


 赤茶色の砂地、いや大地か。

 ゴゴリラ100体を等価交換で生贄にすると。

 中世風の城が建設された。

 ちゃんと城壁までセットだ。


 赤茶色の大地に城と城壁が生まれ、その内側に酒場と冒険者ギルドとモンスター牧場のゲートと岩の家がある。

 後バナナの畑。


 ゴルさんは相変わらず、風景が変わっても普通にバナナの畑の水やりをしていた。

 頭上にはずっとレベルアップが表示されており。

 一体どのくらいのレベルになったのだろうかと、いつか分かる時が来ればいいなと思ったり思わなかったり。


 ちょっと疲れたので、今日は寝ます。

 リーリャはモンスター牧場にボスゴゴリラを案内していたけど。

 あいつは岩の家のそばで門番のように立ち尽くしていたな。

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