42話 隠された過去
佐和子が影との力に向き合い始めてから数日が経った。彼女は影が自分の中で静かに潜んでいるのを感じながらも、その影響を受けないように慎重に日々を過ごしていた。しかし、夜になると彼女は再び影に囚われたような夢を見続けていた。
「また……この夢……」
夢の中で、佐和子は再び暗い森の中に立っていた。そこには先日と同じ不気味な霧が漂っており、彼女はその霧の中を彷徨い続けた。
「これは一体……?」
彼女が歩みを進めると、遠くから囁き声が聞こえてくる。今度は前よりもはっきりとした声だった。
「お前はかつて、この地に縛られた者だ……お前の力はその時に芽生えた」
「この地……?」
佐和子はその言葉に引き込まれ、さらに霧の奥へと進んだ。やがて、彼女の目の前に古びた建物のようなものが現れた。
「ここは……?」
その場所はどこか見覚えがあった。しかし、彼女はその場所がどこなのか思い出すことができなかった。
「お前の記憶が、この場所に眠っている……お前の祖母がここで何をしたのか……」
囁き声が続き、佐和子はその声に導かれるように建物の中へと足を踏み入れた。
建物の中は薄暗く、埃が積もっていたが、どこか懐かしい雰囲気が漂っていた。佐和子はその場所が、祖母と深い関わりがあることを直感で感じ取った。
「ここで……祖母が何かを?」
彼女はゆっくりと歩を進め、奥へと進んでいく。すると、古い日記のようなものが床に転がっているのを見つけた。それは祖母のものではなかったが、何か重要なことが書かれているように思えた。
佐和子はその日記を拾い上げ、ページを開くと、そこには影についての詳細な記述が残されていた。
「影はこの地に古くから存在しており、その力を操る者たちは代々伝えられてきた……」
「代々……?」
佐和子はその言葉に驚きを覚えた。自分の力が、単に祖母から受け継いだものではなく、もっと古い歴史に繋がっていることを示唆していた。
「影を操る者は、選ばれた者だけがその力を得る……しかし、その力を使うには、代償が伴う」
彼女はその言葉を読んで、かつて祖母が影とどう関わってきたのか、そしてその代償が何であったのかを知りたいと強く思った。
佐和子がさらに日記を読み進めていると、突然、背後に気配を感じた。振り返ると、そこには勇人と直也が立っていた。
「佐和子、大丈夫か?」
勇人が心配そうに問いかける。彼女は頷きながら、見つけた日記について二人に説明した。
「この日記には、影についての秘密が書かれているみたい……でも、まだ全部は読めてないの」
「影の歴史がここに書かれているのか……」
直也が日記のページを覗き込みながら言った。彼らはその場所が何らかの重要な意味を持つ場所であることを感じ取っていた。
「もしかしたら、この場所が影の起源と関係しているのかもしれないな」
勇人が推測しながら、建物の内部を見回した。その場所は明らかに人々に忘れ去られた場所でありながら、何か強い力が眠っているような気配を放っていた。
「ここで何が起こったのか……もっと調べる必要があるわ」
佐和子は決意を新たにし、この場所で見つけた日記を持ち帰ることにした。彼女たちはこれからの戦いに向けて、さらに情報を集める必要があると考えていた。
その夜、佐和子は家に戻り、見つけた日記を読み返していた。そこにはさらに衝撃的な記述が続いていた。
「影の力を完全に制御するためには、その力を宿した者が己の心を影に捧げなければならない……」
佐和子はその言葉に背筋が凍る思いをした。自分が影に飲み込まれる可能性があることを、初めて現実的に感じた。
「私は……本当にこの力を制御できるのか?」
彼女は自問自答しながらも、自分の中で芽生えた不安と戦っていた。影を受け入れることで、その力を使いこなすことができるかもしれないが、同時にその代償が何であるかを恐れていた。
「私の運命は、影と共にある……」
佐和子はその言葉を噛み締めながら、次なる一手を考え始めた。彼女は影の力を完全に理解し、その上でそれに立ち向かうことを誓った。
翌日、佐和子は勇人と直也に会い、自分が決断したことを伝えた。
「私は、影の力を受け入れる。そうしないと、私たちは影に勝てないと思う」
その言葉に、勇人と直也は驚きつつも、彼女の覚悟を感じ取った。彼らもまた、この戦いがさらに厳しいものになることを理解していた。
「佐和子がそう決めたなら、俺たちも君を支えるよ」
勇人はそう言って彼女の肩に手を置いた。直也もまた、力強く頷いた。
「一緒に戦おう、影に負けるわけにはいかない」
佐和子は二人の力強い言葉に励まされながら、再び自分の運命に立ち向かう覚悟を固めた。影との戦いはまだ終わっていない――いや、これからが本当の戦いの始まりなのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます