第二章 二年生編

第22話 謎の新たなプレイヤー

 旧校舎の中で一人、迷路のような廊下をさまよう勇人。影の脅威が再び現れる予感に、彼の心臓は早鐘を打っていた。突然、背後から聞き覚えのない声が響いた。




「ここに来たのは君か?」




 勇人が振り返ると、そこには一人の男子生徒が立っていた。見慣れない顔だが、どこか不思議なオーラを纏っている。




「君は……誰だ?」




 勇人が尋ねると、その男子生徒は冷静な表情で答えた。




「俺は新庄亮太(しんじょう りょうた)。この学校には転校してきたばかりだが、旧校舎に関しては少し事情がある。君も何か感じているようだな?」




 亮太は、まるで勇人が何か特別な力を持っていることを知っているかのように話しかけてきた。彼の言葉に勇人は驚き、警戒しつつも、自分の体験を少し話してみることにした。




「君も影のことを知っているのか?」




 亮太は静かに頷いた。




「知っている。というより、俺はその存在を追っているんだ。君と同じようにね。君の友人、直也も影に触れたんだろう?」




 亮太の言葉に、勇人はさらなる驚きを隠せなかった。彼が何者なのか、そして何故そんなに多くのことを知っているのかは依然として謎だったが、何かを共有しているという感覚はあった。






 亮太は、勇人に向かって提案を持ちかけた。




「俺も影と戦ってきた者の一人だ。君一人では限界があるだろう。俺と組まないか? 影の脅威を完全に取り除くために、共に戦おう」




 勇人は一瞬ためらったが、亮太の確固たる態度に心を動かされた。確かに、直也と共に影と戦ったが、今の勇人はまだ何か大きな力を持っているわけではない。仲間が必要だという感覚は、日に日に強まっていた。




「分かった。亮太、君が信用できるかどうかはまだ分からないが、一緒に戦うことは悪くないかもしれない」




 勇人の答えに、亮太は満足げに頷いた。




「安心しろ。俺は君を裏切ったりはしない。ただ、影との戦いには大きな代償が伴う。覚悟を持ってくれ」




 その言葉に、勇人は再び緊張感を覚えたが、もう後戻りはできないことも理解していた。






 その夜、勇人と亮太は学校を後にし、それぞれの帰路についた。しかし、勇人は直也のことが気になり、彼の家に寄ることにした。直也の様子が普通ではないことを感じ取っていたのだ。




「直也、大丈夫か?」




 勇人が直也の家に着くと、彼は静かにベッドに横たわっていたが、その顔色は良くなかった。直也は何か悪夢を見ているかのように額に汗を浮かべ、時折苦しそうな表情を浮かべていた。




「直也……」




 勇人は彼を揺さぶり、目を覚まさせようとしたが、直也はまるで深い眠りから目覚めることができないようだった。勇人の不安は次第に強まり、影の影響が再び直也に及んでいるのではないかと考え始めた。




 その時、直也が突然目を開き、勇人に向かって弱々しく呟いた。




「……助けて……また影が……来る……」




 その言葉を聞いた瞬間、勇人は緊張感に包まれた。影の脅威が完全に去っていないことを確信し、亮太の言葉が現実のものとなることを感じた。








 翌日、勇人は亮太に再び会い、直也の状態を話した。亮太は真剣な表情で耳を傾けた後、静かに言った。




「直也はまだ影の影響を受けている可能性がある。影はただの恐怖や不安の具現化ではなく、もっと深いものだ。人の心に潜む闇や、抑圧された感情が引き起こす存在なんだ」




 勇人はその言葉に動揺しながらも、亮太の言うことが本当であると感じ始めた。直也は影を克服したと思っていたが、実はまだ影に囚われているのかもしれない。




「じゃあ、どうすればいい? 直也を救うためには?」




 勇人の問いかけに、亮太は少し間を置いて答えた。




「直也自身がその闇と向き合わなければならない。だが、影の力が強まる前に何とかしないと、彼は完全に飲み込まれてしまう。俺たちでその前兆を探り、影の弱点を突くしかない」




 勇人は亮太の決意に同意し、直也を救うための具体的な計画を立て始めた。影の次なる目的を見極め、その正体を突き止めるためには、さらに深い謎に踏み込む必要がある。








 その夜、勇人と亮太は再び旧校舎に向かうことを決意した。影との戦いはまだ続いている。今度は直也だけでなく、もっと大きな危険が迫っているかもしれないという恐怖が彼らを駆り立てた。




「もう後戻りはできないな」




 勇人は自分に言い聞かせるように呟いた。亮太は静かに頷き、彼に背中を押すような言葉をかけた。




「怖がる必要はない。俺たちは必ずこの影を打ち倒す」




 二人は決意を固め、静寂の中、再び旧校舎の扉を開いた。そこには待ち受ける新たな謎と、さらなる危険が潜んでいることを知りながらも、彼らは恐れずに足を踏み入れていった。

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