4 エタる

 やらかしの裏側、の話です。


 「エタる」


 カクヨムで覚えた言葉です。簡単に説明すると、作品を(永遠に)完成させない、という意味だそうです。

 

 私がカクヨムに出会ったのは、今年の五月ごろ。キャッチコピーとタイトルの区別もつかずに右往左往していましたが、自分が読みたい小説を見つけて没頭するのに、そう時間はかかりませんでした。読んだら自分もまた小説を書きたくなりました。


 私はエタりの常習者です。

 完成させた作品がないわけではない。けれども書きたいと思っていた長編は第二章で行き詰まり、第一章を書き直して行き詰まっていました。

 

 エタらないで作品を完成させたい。


 エタる原因を一つずつ確認するのは大変なため、すべて別の方法をとることにしました。


 これまでは


 ・縦書き

 ・冒頭から書く

 ・Wordで書く

 ・プロットを先に書く


 だったのを


 ・横書きにする

 ・思いついた一文から書く

 ・メモ帳アプリで書く

 ・プロットは後で書く



 に変えてみました。


 これまで縦書きで冒頭から書いていたのは、「そうするもの」という固定観念があったせいだと思いました。

 ドラマ「イップス」でも作家の黒羽ミコがPCに向かうシーンでそうしていましたよね。


 メモ帳アプリにしたのは、起動が早くて赤線(緑、青)が出ないから。赤線が気になって、すぐに文章を直し始めるから止まりがちになるのかな、と考えました。

 下書きモードもあるのですが、起動が遅いとその間に遊び始めてしまうし……。


 プロットについては「別の方法をとる」の巻き添えです。


 カクヨムに出会って十日ほどしてから、この方法で新たに長編を書き始めました。

 読む、読む、読む、ちょっと書く、読む、書く、ぐらいのスローペースでぽつり、ぽつり。


 途中(七月)にユーザー登録もしつつ、八月になりました。

 気づきました。


 長編だと時間かかる。


 連載しながら続きを書く超人もいるそうですが、残念なことに私は凡人です。そもそも物語の最初から書いていません。思いついた一文から書いているので、間のシーンがないなんてざらにあります。それどころか名前が決まらないキャラクターが大勢います。

 そんな状態でも三万字は書けました。前作で第二章で行き詰まった段階と同じぐらいの文字数です。


 いったん休憩して短編を書こう。


 この書き方でちゃんと作品が仕上げられるのか不安になりました。

 短編もどういう話にするか決めた後、上記の方法で作っていきました。


 第一稿が書けました。わーい。


 読んで納得がいかなかったため、プロットに書き起こしました。

 手順は以下の通り。

 

 ・第一稿から登場人物の行動を一つずつ書き出す

 ・いくつかの塊にまとめる

 ・ストーリー上、重要な部分だけを抜き出して書く

 ・三部構成に分ける

 ・とことん短くする


 一万四千字の第一稿を最終的には七十字まで短く要約しました。

 この結果「魔法使いが勇者をおもてなしする話」で出発したはずが「魔法使いが勇者の訪問を乗り切る話」だったことが判明しました。


 何か問題でも?


 そもそも最初に書きたかったのは「もふもふスローライフな短編」でした。万人に読めそうという安易な理由で。

 「もふもふ」も「スローライフ」も自分が読んだことがあるかどうかすらわからないのに(無謀でした)。


 私の目標は完成させること。


 出発点と着地点が多少ずれていたところで支障はありません。

 プロットを書いて分析したところ結末部分がダメなことがわかりました。そこを直すためにどうすればいいか。

 残りの作業はパズルのようでした。ストーリーの進行上で重要でない部分は、プロットを書き起こす過程で判明しています。その部分は変更が可能です。

 組み替えて、手直しして、読んで……をくりかえしました。


 結果、短編が完成しました。やった~!


 このエッセイの前の三話は、この短編の第一稿が完成してからジャンルやプロットについて考えたこと中心に書きました。

 その裏(?)では、このような経緯と過程で短編を書いていた、というわけです。

 完成までの間にタイトルを決めるのにも試行錯誤したのですが、その話は今度にします。



 「第一稿が完成しました。今、プロットを書いています」

 

 このエッセイのキャッチコピーです。人によっては「やらかし」の一つに思えたのではないでしょうか?(ごめんなさい、それが狙いでした)

 案外やらかしではありませんでした。作品を完成させる、という点においては。

 短編の出来栄えについては、私には判断できません。この短編(もしくはエッセイ)自体が最大の「やらかし」かもしれません。


 くすりと笑っていただける作品なのか、鼻で笑われる拙作なのか。興味がありましたら仕上がりを判断してみてください。


 では次回。

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