2 プロットのはなし その1

 作品を最初から最後までけん引していくのがメインストーリーと考えてる、という話です。


 前回、ジャンルの話で恐れ多くも『蒲生邸事件』の話をしてしまいました。しかも今回に続けてしまいました。プロットの話にもつながるから。

 もしカクヨムみたいにジャンルを一つだけしか選べなかったら、私は『蒲生邸事件』をSFのジャンルに入れます。作品の主軸がタイムスリップだと思ったからです。


 プロットを考察した結果、メインストーリー(主軸)がタイムスリップだと結論付けたからです。

  

 もう少し作品を詳しく紹介しておきましょう。

 主人公は予備校受験のために上京した浪人生の孝史。孝史は宿泊したホテルで火災にあい、ある男に助けられます。逃げた先は陸軍大将蒲生憲之の屋敷。男は時間旅行ができる能力を持っており、現在(一九九四年)から昭和十一年にタイムスリップしたことで二人は生き延びたのでした――。


 以上が上巻の紹介。下巻の紹介まで書いてもよいのでしょうか? これ以降はネタバレの内容を含むかもしれないので、ご注意願います。


 プロットを三部構成(発端・展開・結末)に分けて考えます。


 目次によれば小説は一章~五章と終章の全部で六章。単純に二章ずつ……というわけにはいかないので、発端は「主人公が現代に帰れるのか?」という疑問が先に延ばされたあたりでしょうか。主人公は現在から過去にタイムスリップして難を逃れました。諸事情によりすぐに帰ることはできませんが、孝史の目標は「現在に帰る」ことです。時間旅行の能力を持つのは、主人公の孝史ではなくある男。孝史も「現在に帰る」ために行動しますが、途中で「主人公が現代に帰れるのか?」の解決は先に延ばされます。ここまでが発端としておきましょう。


 続く展開ですが、「主人公が現代に帰れるのか?」はいったん目立たなくなります。物語を引き継ぐのは主に「二・二六事件」と「蒲生邸で起きる事件」です。さらに「ある男が昭和十一年にタイムスリップした理由」や「ネタバレになりそうなので書けないサブストーリー」など複数のサブストーリーが複雑に絡み合います。「蒲生邸で起きる事件」が終わりを迎えそうなところまでが展開部分でしょうか。

 結末はそこから終わりまでですね。


 私がこの作品のメインストーリーがタイムスリップだと考えた理由は、主人公の目標が「現在に帰る」だからです。結末ではなく目標です。この作品において、まず読者が知りたい点は「主人公が現代に帰れるのか?」です。展開部分では派手に進行することはありませんが、作品を最初から最後までけん引していく要素だと思います。「主人公が現代に帰れるのか?」=「主人公はふたたびタイムスリップできるのか」だからSF。もちろん「二・二六事件」や「蒲生邸で起きる事件」がメインストーリーだと思う方もいらっしゃるでしょう。それでいいと思います。どちらも作品に欠かせない要素であり、主人公を成長させる重要なストーリーです。

 

 「ジャンルとは?」から始まったプロットの考察。名作のプロットを考察したら、自分の作品の「納得いかない部分」がはっきりしました。


 執筆の進捗は第一稿が完成し、プロットを書きました。分析のために。

 プロットを先に書くのが基本なのかもしれませんが、関係のないことなので無視しましょう。(そもそも第一稿という言葉すら正しいのかもよくわかってません。面白さはどうあれ、小説としての体裁は整えた文章なので第一稿と書きました)

 

 前回書き忘れましたが短編です。一万四千文字ぐらいの。

 次回に続きます。

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