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その日。世界の終わりまで丁度一週間という日。待ち合わせていた駅に冬麻さんは訪れなかった。
彼女が時間通りに来ないことは珍しかったけれど、それでも遅れることくらいは誰にでもある。きっと何かしらの事情があるのだろうと、僕は柱に凭れかかりながらポケットに入れていた文庫本を読むことにした。
丁度文庫本の三分の一を読み終えたところで、僕は時計を見る。既に約束の時間から一時間半は経っていて、それでも誰かが訪れる気配はない。少し駅が閑散としただけで、それ以外の変化は何も見られない。
再び本を読み始めて、半分まで読んだところで僕は帰ることにした。これだけ待ったのだから十分だろう。もう帰ることにしたことをどうやって伝えようかと考えたところで、彼女がスマートフォンを持っていないことに気が付いた。僕と彼女は、連絡をする手段が何もない。僕たちの関係は、僅かなもので繋がっていたことを知る。
当然、電話番号も知らない。そう思うと突然不安が頭の中に湧いて、離れなくなった。もしも何かがあったとしたら。けれど、その不安を拭う手段が僕にはない。ただ待つことしか出来ない。
明日、学校に行けば会えるだろう。彼女はなんだかんだといって、ずっと学校には登校し続けていたのだから。自分に言い聞かせるようにしてそう考えながら、僕は文庫本をポケットに仕舞い帰途に就く。
けれど、冬麻さんが学校に来ることはなかった。
終わりは、もうすぐそこにある。
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