星三つ『砂色の星』
暗黒の広がりにぽっかりと空いた、黄色い穴のような円。
円の中には、模様の移り変わりが見て取れる。
何か細かなものの流れが、ところどころで金ぴかを散らしながら、弧を描いている。
それらの流れは、まるで何度も何度も、円の背後をぐるりと回ってきたかのような、疲れ切った表情をしている。
にもかかわらず、それがずっとまぁるい穴のように見えるのは……
それが平面の円ではなく、立体の球であるからだ。
黄色い、球。
なぜだかそれを見る者を懐かしい気持ちにさせる、砂団子のような、ややいびつな球。
球の表面の、金ぴか混じりの模様の正体は、吹き荒れる砂嵐だ。
ここは、砂色の星『サバーキン』。
その砂の地表に降り立つと、目の前には立ちはだかる砂の壁。
そしてむぎゅっと踏み締める砂の大地には、黄金の
黄色い砂。
黄金の粒。
なんでも、遠い、遠い昔に起きた超新星爆発によって、サバーキンには途方もない量の珍しい金属が降り注いだのだという。
それら金属の中でも最も多く存在するのが……
砂金の状態のものから、大きな塊のものまで、形はさまざま。
金は、この星の住人、サバーキニアンにとって、とても重要だった。
金は、大勢を魅了した。
サバーキニアンたちは、近隣の惑星に、金を輸出した。
そして金と引き換えに、サバーキンで取れる量の少ない『水』や『火』を得て、生活を豊かにした。
だが今やサバーキニアンの生活は、豊かである、とは言えない。
かつてサバーキンでは、金は砂に埋もれておらず、もっと、ずっと多かった。
サバーキンは砂色の星ではなく……
緑の星だった。
緑というのは、『植物』という、美しい生物に起因していた。
植物を見た者は、心安らいだ。
しかし、
植物たちが、根という無数の足のようなものを地中奥深くに張ることで大地を固めていたので、植物なきサバーキンでは、砂が勝手気ままに飛びまわるようになってしまった。
今では、植物の種類は、惑星にわずかに点在するトゲトゲした植物『サボテン』一種類のみとなってしまった。
サバーキニアンは、トゲごとこれを食らい、水分を得ては、砂に埋もれた金を取り出しては汗を流し、水分を失う生活を余儀なくされた。
サボテンも減り、そんな生活にもそろそろ限界がきている。
サバーキニアンは、白い光を取り戻し、砂の大地を、緑の大地に戻さねばならないと考えた。
一人の代表者が選ばれ、旅人となった。
旅人は、サバーキンのひとつ外側の軌道にある、氷の星『レイコック』に声をかけた。
旅人は、白い星を、白い光を、追い求めた。
〈星四つ『氷色の星』に続く〉
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