第19話 一人語りほど楽なものはない

 最初に警告しておかなきゃいけない事がある。


 一つ、ここで聴いたことは一般人―例えば家族や友達―には一切話さないこと。急に架空の話をしたって信じるわけないだろうけど、一応ね。


 二つ、これを聴いてしまうことで、君たちは完全に前の生活には戻れなくなる。


 何も知らないで生活することはもどかしいことかも知れんが、それはあくまで私のように知ってしまった存在から言える話だ。

 弟子ちゃんはあの胡散臭い白猫と契約したらしいけど、ここで引き返すのだって、十分その子を守る理由になるし、君たちの幸せにも繋がると思うがね……。


 それでも、いいのかい?


 ……ああ、そうかいそうかい。それはごもっともな……いや、すまない。私は決して君らの決断を貶しているわけではないんだ。


 ま、正直に言わせてもらうと呆れてるよ。今のままでもじゅーぶん幸せだと思うんだけどねぇ。リスクを犯してまで平穏を求めるってのはそりゃあ、本末転倒さ。


 うん、でも私は否定しない。弟子ちゃんの覚悟は本気みたいだし、直感的にこの世界への危機意識もあるみたいだ。


 しゃーない、弟子ちゃんがそう決めたんなら、私も君たちが死なないように極力尽力することにするよ。


 こほん。では私金八……じゃない。金時先生がちょいと哲学を教えてやろう。


 鶏が先か卵が先か、なんて言葉は聴いた事があると思う。

 要するに、鶏は進化の過程で何を親にして生まれたかってぇ話だな。今世界の滅亡が危ぶまれているのは、大まかに言えばこいつが原因さ。


 神こそが人間を創造し、この世を創ったとしている古参勢と、人間が神を想像して思い描いた事で、実際に存在するようになったという新たな説に賛同した、革命児らの勢力。

 そしてどちらにも傾かない日和見主義者の三勢力に分かれているのが今の神界さ。


 新説は最近……っていっても二百年前くらいから浮き彫りになった説なんだが、元来の考えを持つ古参勢らは革命児らの考えに怒り狂った。

 そりゃそうなるよね。主従関係が真逆になってしまう「革命」を起こされちゃあ、自らのプライドがボロボロのボロ切れだもん。


 てな事で、古参勢らは革命児らを神界から追放した。これ以上自らの不利益が起こされないようにね。言わずもがなヨシツネはその内の一人さ。


 ただ、そろそろこの世も不味くなってきていてね。追放どころでは無い状況になってきている。神界から人間に干渉しようとする横暴な神を牽制していた女神が遂に古参勢らの手によって地獄に堕とされた結果、今この世と神界には弁……つまりは関所が無いようなものだ。


 だからこそ、彼らが侵略してくるのも十分にあり得る話なんだ。


 ……ああ、何故この世に侵略する必要があるかって? 


 そんなの決まってるじゃ無いか。


 人間の前に姿を現し、人間と彼らの上下関係をハッキリさせるためさ。



 そう、始まるんだよ。


 神とその子人間による終末戦争が、ね。

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