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運転席でハンドルを握るのは母。その隣の助手席に父。夫婦仲良くイチャイチャしているのを後部座席で眺める俺氏は、本日から妹となった双子姉妹に挟まれていた。
賑やかな前席とは打って変わって後席は静まり返っている。
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
き、気まずい⋯⋯!
いや!いつもはアレなんだよ?もっとフレンドリーに接せるんだよ?でも、なんかアレなの。
ちょっと動揺してるの。急に妹とか言われて、一緒に暮らすとか言われて、さらにお母様から謎のオーダーまで入っている現状⋯⋯もう脳みそパンパンパパンですよ!
しかも双子だしぃ!
まるっとそっくり瓜二つ。まるで鏡写しのよう。
そして2人揃って無表情で口数が少ない。ホント必要最低限しか話さない無口キャラ。
えっと⋯⋯右目に前髪がかかってる方が柑奈ちゃんで左目に前髪がかかってる方が柑理ちゃんだったかな?
今のところそれ以外での見分け方がまるで分からんなぁ⋯⋯。
そんな双子姉妹とこれから一緒に暮らしていく⋯⋯どうなっちゃうの?
んー⋯⋯まあ、なんとかなるか!
◇
「それじゃ兄妹3人で仲良くやるんだぞー」
そんな呑気な捨て台詞と共に父母を乗せた車が走り去っていく。
これからイカれ夫婦は世界一周旅行ですってね。帰ってくるのはいつになるか分からんて。
ツッコミどころはあるが生活費はちゃんと振り込んでくれるらしいけども。
ちなみにその生活費は何故か泊が管理してくれるらしい。
⋯⋯何故?
いや、まあ分からんでも無いけど。泊先生に任せておけば万事解決なところあるけども。
『流ちゃんにはもうお嫁さんが3人も居るのね!偉いわ、流!その調子でお嫁さんいっぱい作って、赤ちゃんもいっぱい作るのよ!諸々の事は全部ママがなんとかしてあげるから頑張りなさい!』
ーーとか嬉々として言われたことあったっけ。
言われた時はなんのこっちゃ?と思ったけど⋯⋯おそらくお母さん本気だったんやろな⋯⋯。
母の中で既に幼なじみ達は嫁確定。つまり自分の娘同然なのだろうなぁ。
◇
「改めてまして流です。よろしくお願いします」
「⋯⋯柑奈です」
「⋯⋯柑理です」
うむ。声も一緒だ。
リビングにて双子姉妹と向かい合い、改めて自己紹介。
相変わらず2人揃って無表情である。
うーん⋯⋯基本的に周りに居るのが感情表現豊かなのばかりだったので、こういうタイプの子と関わるのはあんまり無い。
どうしたもんか⋯⋯。
この2人とひとつ屋根の下で暮らしていくのか、なるほど⋯⋯まあ!なんとかなるべ!
バーンッ!!!
「アオッー!ゲームしようぜぇッ!」
唐突にリビングドアが吹き飛ぶ勢いで開かれて、そこからこんにちはしたのはお馴染み幼なじみの紅である。
俺は慣れてるけど双子姉妹ちゃん達は慣れてないから分かりやすくビクッッ!って身体震わせちゃってる。しかしまだ表情は変わらず。
我が家では、もはや幼なじみ達はフリーパス。いつでもどこでも勝手に入ってくるのである。今に始まったことじゃない。
「ーーって、アレ?なんだソイツら。双子?誰?」
俺一人だと思ったのだろうか、見知らぬ双子姉妹が居ることに気がついた紅が首を傾げた。
「聞いて驚け!この子達は俺の妹だ!」
「マジかよ!つーことはアレか?オジさんの隠し子かッ!」
「正解!」
残念ながらほぼ正解!正解なんだよなぁ⋯⋯。
「というわけで今日からウチに住むことになりました!柑奈ちゃんと柑理ちゃんです!」
「アオの妹ならオレとも兄妹だな!オレは流のダチの紅だ!よろしくなっ!」
「⋯⋯か、柑奈です」
「⋯⋯か、柑理です」
紅の勢いに気圧される双子姉妹。
くくくっ。紅が援軍として現れたのなら今が好機!このまま紅と共に押し通るぜ!
バーンッッッ!
「我、推参!」
2度目の扉バーンッ!と共に降臨なさったのはお馴染みの幼なじみ歩夢である。
またもビクゥッ!となる双子姉妹。
「おお!クロ!なんかアオに妹が出来たみたいだぜ!」
「マヂかよ。姉妹丼キタコレ。我はブラック長官。鬼軍曹と呼ぶがいい」
「コレは歩夢です」
「⋯⋯⋯⋯か、柑奈です」
「⋯⋯⋯⋯か、柑理です」
さらなる援軍である歩夢が現れた!これは我が軍の圧倒的優勢!勝ったな。
バーンッ!
「話は聞かせて貰ったよ!」
3度目の扉バーンッ!ここまで来ると扉くんが少し心配になってくるが、そこを考慮したのか常識の範囲内の扉バーンッ!したのは紅、歩夢と来ればもう言わずもがな、泊である。
3度目となるがそれでもやっぱりビクッ!となってしまう双子姉妹はなんかちょっと可愛かった。
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