アオくん出生の真実
84
「流。ちょっとお父さんとお話しないか?」
ある日の休日。
本当にたまたま俺が自室に1人でカードを弄っている時であった。
フラッと現れた我が父がそんなことを言ってきた。
「話?」
「そうだなぁ。あっ、折角だから何処かで昼飯でも食いながら父さんと話をしよう」
「いいよー!」
というわけで珍しくお父さんと2人きりでお出かけすることとなった。
自家用車に乗り込み父の運転でドライブと洒落込む。
「流は何か食べたいものはあるかな?なんでもいいぞー」
「せやね。とりあえずなんか肉食べたい!」
主に精がつく奴がよろしめ。食わねば⋯⋯生き残れぬのだ。
「そうか。そうだなぁ⋯⋯それならステーキ屋でも行くかー」
「わーい!やったぜ!」
安いのにしとけ!と却下されると思いきや、すんなりと俺氏の案が通った。ダメ元でも言ってみるもんだぜ!
◇
「うめぇ!ステーキうめぇうめぇ!」
「はっはっはっ。いい食いっぷりだなぁ」
ガツガツと肉に食らいつく俺を父は笑って眺めている。
父が連れてきてくれたのはちょっとお高いステーキ屋だった。300gウン千円もする美味しい肉。
ミディアムレアで柔らかくナイフがスっと入って切断面からはジュワリと肉汁が垂れ流れる。
口に運べばそれはもう絶品でガーリックソースの香ばしさが口いっぱいに広がる。ふぁあ⋯⋯しあわしぇ。
「それで流。話なんだが」
「あっ、そういえばなんか話あるんだっけ?」
肉が美味しすぎてすっかり忘れていた。
「ああ。そうだ。流も大きくなったし、そろそろ話しておいてといいと思ってなぁ」
父は頬杖をついて窓の外を眺めながらしみじみと語り始めた。
「父さんってブサイクだろ?」
「そう?」
「気を使わなくていいぞ。父さんは見ての通りハゲでデブで汚いブサメンオジさんだ」
「いやー⋯⋯そこまででもないと思うけど?」
そんな卑下しなくていいと思うのだけれども⋯⋯。
確かに俺の父は頭はハゲて波平みたいだし、ガタイが良く太っててポッコリ下腹出てるけども⋯⋯だいたいみんなもこんなんじゃないだろうか。
「でも母さんはめちゃくちゃ可愛いだろ?」
「うん。それは分かる」
ウチの母は息子の俺からしても日本人離れした絶世の美女と言って過言では無い見た目である。
というか純粋な日本人ではなくハーフだったりする。
故に金髪碧眼でスタイルも抜群。
もうすぐアラフォーになるというのに未だに20代に見られがちと、改めて考えると俺のお母さんなかなかのイカレスペックだなぁ。
「流は母さん似だな。いや、俺に似ないでホントよかったと思う」
「なるほどなぁ」
「ついでに言うと母さんはバリバリ働いているが、父さん働いてなくてな、無職なんだ」
「ひょっ!?マジで!?」
「マジマジ。いつも仕事に行くふりをしてパチ屋に行って朝から晩までパチンコしてるぞ」
「ウソォー?!?!」
衝撃の事実ッ!俺のお父ちゃん無職のパチンカスだった!?
「勿論、競馬に競艇とかもしてるぞ。父さんギャンブル大好きだから。あっ、となると無職は言い過ぎだな。職業ギャンブラーと言った方がいいかもしれない」
「ウソでしょ⋯⋯」
「まったく稼いでない訳じゃないぞ?ちゃんとプラスになる時もあるしマイナスになる時もある」
「プラマイ0じゃね?」
「いやマイナスの方が基本デカイ」
「アカンやつじゃん!」
「まあそこはな?母さんが有り得ないぐらい稼いでくるから。それでウチの家計は成り立っている。なんだったらびっくりするぐらい余裕がある」
「お母ちゃんどれだけ稼いでるの⋯⋯」
ウチの実情がそうなっているとは、全く知らなかったぜ⋯⋯。
それからも父のダメダメグズグズエピソードがポンポコポンポコ出てくる。
もう途中から何やってんだこのクソダメオヤジが!みたいな感じになってきた。
「ーー⋯⋯それでだ。不思議に思ったことはないか?こんなダメオヤジの父さんと非の打ち所がない母さんは明らかに不釣り合いで、なんでコイツら結婚出来たんだろう?ってな」
「それは⋯⋯確かに!」
「そこで今回の父さんが流に話しておきたかったことの本題だ」
「えっ、今のが本題じゃなかったの⋯⋯?」
今された話よりもヤバい話がこれから繰り出されるの?
もう既にお腹いっぱいなんですけど!?
「父さん、実はな⋯⋯」
「お、おう⋯⋯」
「種付けオジさんだったんだ」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「⋯⋯⋯⋯は?」
今、なんて?
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