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ほしさんとのオフ会を終えて俺は無事に自宅に帰還した。



そして⋯⋯帰還した俺を待ち受けていた者とは⋯⋯。




「ガルルルルルルッ⋯⋯」




ガシャガシャ!ガシャガシャ!



紅が何故か鎖で繋がれていた⋯⋯紅は自分を拘束している鎖から逃れようと鎖を鳴らして藻掻いている。


その目は血走っており、正気を失っているのが目に見えて分かる。剥き出しの犬歯。口の端からはヨダレを垂れ流しており、まさに鎖に繋がれた獣のソレである。



ナニコレぇ⋯⋯。



「くっちゃくっちゃ」



そしてそして、その隣には特攻服を着て、髪はオールバックでキメ、クソデカグラサンをして、ヤンキー座りをしながら、中学の修学旅行で紅が買った木刀で自分の肩を叩きながら、ガムを音を立てて噛んでいるお行儀の悪い昭和のヤンキーの姿⋯⋯いやこれは歩夢ですね。はい。


なんでそんな格好してるノォ?



「ようやく⋯⋯帰ってきたようだね、アオくん」



そしてそしてそして⋯⋯部屋(俺の)の中央にドンと見知らぬ机が置かれている。どっから持ってきた⋯⋯。


その机の上に肘を立てて碇ゲ〇ドウ会議のポーズをとっているのは泊⋯⋯?である。


その泊でなのだが何故かマフィアハットに黒いスーツに赤ネクタイとクソデカマフラーを首から巻かずに掛けている。


どっからどう見てもただのマフィアのボスとなっていた。威厳は無いけどキレ者感がある物語の黒幕的若頭みたいな、そんな感じ。



ナニコレぇ⋯⋯(2回目)。



鎖に繋がれた野獣に⋯⋯昭和のヤンキーに⋯⋯マフィアのボス⋯⋯俺が居ない間にみんな一体なにがあったっていうんだ!?



「あ、あの⋯⋯み、みんーー」


「ガルっ!がるるるっっっ!!!ガウガウッ!」


「ひいっ⋯⋯!?」



俺が少し声を出しただけなのに、それに反応して野獣紅が暴れだした⋯⋯!鎖に繋がれているからいいものの、これが繋がれていなかったら俺は即座に野獣紅に襲われ命を失っていたことだろう⋯⋯寿命が縮むぜ⋯⋯。



「えっと⋯⋯あ、歩ーー」



ガンッ!



「ひいっ⋯⋯!?」


「くっちゃくっちゃ」



ガンガンガンガン!



ヤンキー歩夢がガムクチャしながら木刀でどっから出したのかタライを打ち鳴らす!これは威嚇かッ!?なにそれ怖いよぉ⋯⋯。



「まあまあ2人とも。落ち着きたまえよ」


「がるる⋯⋯」


「くちゃちゃ⋯⋯」



明らかに尋常ではない野獣紅とヤンキー歩夢を諌めるように声をかけてくれたのがマフィア泊。


流石は泊さん!やっぱり泊さん!困った時は泊を頼っとけば間違いないって泊が言ってたから間違いないね!



「獲物はもう逃げられない。だから焦る必要性は無い。そうだろう?」


「がるる!」


「くっちゃぁ!」



ん?んんん?獲物?逃げられない?なんのコトォ?



「あの⋯⋯泊さん?」


「何かね?3日間、僕らをほったらかして別の友達と遊んでいたアオくん」


「ガルルルルルルッッッ!」


「クチャァクチャチャァ!」


「それはちゃんと説明したじゃん⋯⋯」


「ちゃんと説明したからと言って済む話と済まない話がある⋯⋯そうは思わないかねアオくん」


「ガル!ガルル!」


「くっちゃ!くっちゃああ!」


「いいかねアオくん。人というものは大きく分けて3つの要素で構成されている。それが肉体、精神、魂ーーこの3つだ。この3つ全てで納得をしないことには真なる納得は得られないのだよ。確かにね、アオくんの説明は聞いたよ?しかしだね。それに肉体は抗い、精神は拒絶し、魂が否定した。つまり何も納得はしていなかったのだよ」


「泊サァン!スンマセン!まるで何言ってるか意味が分かりまセンッ!」


「その結果がどうなるか⋯⋯それをキミはこれから理解することになるだろうーーそうキミのその身を持ってね」



何がどういうことなんですカァ!?



「ヘイ、ブラック!レッドを拘束解除release!」


「くっちゃあ!」


「ぐるぁああああああああああッッッ!」


「ひぎゃぁあああああああ!!?!!!」



ヤンキー歩夢の手によって野獣紅の鎖が解かれーー。


今!獣が野に解き放たれたッ!


獣は真っ直ぐに俺に飛び掛かってくる!



「キャーーーー!!!」



ビリビリビリビリ!



俺は獣に押し倒されて、そのまま服をビリビリに破かれてしまった!


イヤッ!らめぇええええ!!!




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