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「恋麦、割と楽しそうにしてたじゃん」


「は、はぁ……?べ、別にそんなことないと思いますけどォ?」


「なんだっけ。カードゲームはガキっぽくないーーだっけ?」


「いや別に楽しんでませんけどォ?アイツらのノリに合わせてやってただけだし……」


「ふーん。まっ、でも良かったんじゃん。好感度低く無さそうだし。ちょっと頑張れば堕とせるんじゃない?」


「堕とす……?あ、ああっ……!そうそう……!青田なんかチョロそうだったしィ?ウチが誘惑すればあんなヤツ簡単に堕とせるっしょ!それでウチに骨抜きにされた青田のヤツをあの3人組に見せつけてやって……それであとは適当に貢がせて、いらなくなったら捨てちゃえばいいよね!」


「まずはアンタのその腐った性格直した方がいいと思うけど……まっ、いいか。見てて笑えるし」


「……ん?華実なんか言った?」


「別に。頑張って、って言っただけ」


「……そう?まっ、見てなさいって!青田如きウチの魅力で速攻で骨抜きにしてやるから!」


「はいはい」











「ねえねえ!アオアオ!これ見てこれ見て!」


「なになに?」


「これ!どうこれ?メッチャ映えてるっしょ!」


「うわっ!ムギちゃん超可愛いじゃん!えっ、なにこれ?加工アプリかなんか?」


「そうそう!このアプリ使うと超盛れるんだけど……あっ!アオアオ!ウチと一緒にツーショット撮ろ!」


「いいよー!」


「んじゃ撮るねー!あっ、こらっ!もっと顔寄せてよー!」


「んー……こんな感じ?」


「そんな感じそんな感じ!はいピース!」



パシャッ!



「うん!いい感じに撮れたわ!うっわ顔近すぎっwww!ほら見てアオアオ!これもうウチらラブラブじゃーん!」


「ラブラブいぇーい!」


「それでねそれでね!これを盛ってくんだけど……」


「ナニコレぇ!こんなんもう別人じゃんwww」


「だよねー!マジウケるっしょwww」


「あっ、ちょっと待って……これをこうしたら……どう?」


「くっ……!ふふっ……キャハハハッ!いやこれはマジ無いって!ヤッバぁ!」



きゃいのきゃいのとバカみたいなやり取りをしている青田と畑中の姿を呆れた表情で眺める園原はボソッと呟いた。



「堕とされてんじゃん(笑)」



楽しげに笑い合う2人の姿を見ながら園原は思う。


当初、予想していた展開とは大きく異なる方向に進んでしまってはいるが……これはこれで眺めてる分には面白いのでアリはアリ。


どうしてこんなことになってしまったのかと園原はここ数日で起きたことを思い返す。



ダイジェスト。



シーン1。



『ねぇ……これ、アプリ落としたんですけど?』


『えっ!ホント!?わー!めっちゃ嬉しい!ありがとう畑中!』


『いや別に……ただの暇つぶしで……』


『それじゃ早速やろうぜ!全部教えてあげる!ほらほら!やろやろ!』


『う、うん……』



シーン2。



『畑中の趣味ってなに?普段何してるの?』


『ウチ……?ウチは……まあ、インスタだったりとか。それ用の写メ撮ったりとか?』


『へー。どんな写メ撮ってるの?』


『まあ……こんな感じのヤツ……?』


『うわっ!めっちゃ可愛いじゃん!なにこれ凄ぉ!』


『そ、そう……?』


『他にはどんなヤツあるの?見せて見せて!』


『えっと……他にはーー』



シーン3。



『ーーってな感じで!まっ、ウチにかかればそれぐらい余裕なワケ!』


『ムギちゃんパイセン流石ッス!自分マジで憧れるッス!』


『そぉお?まあでも、これぐらい出来て当然じゃん?』


『いや!そんなことないって!それってムギちゃんだから出来ることだし、他の誰にも真似出来ないと思うよ?やっぱムギちゃんは凄いなぁー!マジパネェッスよ!』


『んっ……んふふっ……!やっぱ、そう、なっちゃうかなァ?ウチってさァ、やっぱ凄い?』


『ムギちゃんは凄いし可愛いし!ホントハンパないって!』


『いい……いいよ……!アオアオ!そういうのもっと頂戴ッ!』




自尊心の塊。承認欲求モンスター。


園原の畑中に対する評価はそれであって、そんな畑中に対して青田の全肯定で褒めまくる対応はまさに……。



「効果は抜群だー(笑)」



お陰様ですっかりこの調子。


畑中は嬉々として青田の元に侍り散らかしている。


傍から見れば仲のいい友人同士か、行き過ぎればバカップルのようにも見えなくもない。これは酷い。




「それでねそれでね!もう聞いてよォアオアオ!」


「うんうん!もっと聞かせてムギちゃん!」



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