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「えっと……ブラックホール的な?」


「ギィヤァッーーー!ボクのアライズハートがッ!?」


「中ドラを召喚的な?」


「ヤダそれェ!もう負けじゃぁんッ!」




ムギちゃんと朝日屋氏がスマホ版カードゲームで対戦中。


初心者のムギちゃんには簡単で超強いデッキをオススメした結果、経験者であるはずの朝日屋をボコボコのボコにして泣かせている。流石はクソザコナメクジさん。泣き顔が映えるね。


ムギちゃんとはすっかり仲良く慣れた。ムギちゃんはなかなかイカついギャルだけど、見た目に反して中身はとってもいい子でした。


だがしかし。


ムギちゃんと大体いつも一緒に居るクール系ギャルの園原とはまだあまり打ち解けていない。


今も盛り上がる俺たちを他所に1歩引いた位置から俯瞰しているような感じだ。会話に混ざらず1人でスマホを弄っている場面がよくある。



これはいかんでしょう!



「園原は一緒にカードゲームしない?」


「アタシ?アタシは別にいいかな。あんま興味無いし」


「そっかー。あっ、その園原のスマホケースカッコイイね」


「これ?あー、なかなかイカついっしょ」


「めっちゃイカついね!えっと……御札かなんか?」


「そっ。御札」


「へぇー。そんなケースとかあるんだ」


「今どきなんでもあるでしょ」


「なるほど。オカルトとか好きなん?」


「別に。まあ、嫌いじゃないかな」


「ホラー映画とか見たりする?」


「見ないことも無いかな」


「そういえばこの前リ〇グ見た!」


「いや古っ。アンタそれ何年前のヤツよ。まあ名作だけどさ」


「やっぱ貞子は怖ぇよ……」


「そう?アタシはあんま怖いとは思わなかったけど」


「最後のもう安心!からのデッドエンドはヤバかったわァ。後味悪すぎ」


「日本のホラーって大概そんなもんよ。綺麗に終わらせないで終わったあとも恐怖を引き摺らせる陰湿なやり口」


「ホント日本人は陰湿だよねー」


「それはある」


「なんか他にホラー映画のオススメとかある?」


「オススメ?とりあえずリ〇グの関連作品でも見とけば?ら〇ん とか」


「ら〇ん ね……あっ、オススメに出てる。これ?」


「そうそれ」


「んじゃ見るか」


「いやアンタ……ここで見んなし。もっとちゃんとした所で時間ある時に見なよ」


「ちゃんとした所で見たら怖いじゃん!」


「アンタねぇ……なんでそれでホラー映画を見ようとすんのよ……」


「怖いもの見たさ、的な?」


「はぁ……」


「それにほら。園原がどんなこと興味あるのかって知りたいなって」


「ーーーー。……いや別に……アタシはホラー好きとは言ってないけど?」


「でもホラー映画かなり見てるでしょ?」


「…………暇潰しにね」


「それなら俺も園原の見たのを見れば感想言い合えるね!」


「…………アンタが何を見ようがアンタの勝手だし、好きにすれば?」















アタシは幼い頃から”霊感”が強かった。


実際に霊が見える訳では無かったけど、何となく”そこに何かが居る”ことを感じとることがよくあった。


まあ、言っても信じて貰えないだろうけど。


でも確かに感じるのだ。


幼い頃の馬鹿なアタシはそのことを周囲に話した。


アソコに誰か居るよ、とか。あの影から誰か見てるよ、とか。


お陰様で周囲からは気味悪がられた。親からも友達からも。当時のアタシはそれがまるで理解出来なくて周りの奴らはみんな頭がおかしいと憤りを感じていた。


頭がおかしかったのはアタシの方だった。


それに気がつくまでかなりの時間を要した。


気がつけばアタシはひとりで周囲に壁を作って生きていた。



「華実?あー……。確かに同じ中学出身で、中学の時も一緒に居ること多かったけど……華実って自分のことなんも話さないのよねー」



アタシは霊感が強い。


ついでに顔がかなり整ってる。自己評価が高いのはキモいけど、これは客観的な事実だ。


その事もあって周囲からの視線を敏感に感じ取る。


それが非常に鬱陶しい。


向けられる視線。それに含まれる感情が煩わしくて仕方ない。


不快感。


だからアタシはクラスで1番やかましかった馬鹿を隠れ蓑にすることにした。


承認欲求が無駄に強くて性格はあまりよくない嫌なヤツではあったけど。その分 扱いやすかった。適当に褒めて相槌をうっていれば、すぐに調子に乗る馬鹿なヤツ。


馬鹿の取り巻きを演じて身を潜める。


馬鹿は中学の時かなりモテてていた。


顔は普通だが、それを化粧だ服装だで着飾り誤魔化す。それが中学生の目を通して見ると眩しく見えたんだろうね。


お陰でアタシが目立たなくなるなら、それでよかった。


アタシはひっそりと、これからも1人で上手くやっていく。



そう思っていた。




「ハナちゃん!」


「ハナちゃん言うなし」


「まあまあ。それでさ!残穢ってヤツ見たんだけどさぁ……アレって何が面白いん?」


「アンタねぇ……アレの面白いところはーー」




その視線。向けられる感情に不快感は無い。


奇異の目で見られることもない。下心がある訳でも無い。


ただただ純粋な興味と仲良くなりたいという友愛の感情。




「次はさぁ。薄暗い〇の底からってのを見ようと思うんだけどーー」


「やめな」


「えっ」


「それはマジで見ない方がいい」


「そ、そうなん?」


「アタシも1回見たことあるけどアレはマジでやめといた方がいいよ」


「そっかー……。それなら見ないでおく」


「それがいいよ」


「ハナちゃんさ……」


「……なに?」


「もしかして霊感とかある?」










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