29
2人の視線が交差する。
見上げる視線は熱を帯びている。僅かに紅潮した頬。それはこれから起こるであろう事への期待を如実に孕んでいた。「さあ早く。早く早く」と言葉にせずとも泊の瞳が語りかけてくる。
それを見てただ想う。ああ、泊ってこんなに可愛かったんだなと純粋に想う。
吸い寄せられていく。
肘に力を込めて曲げる。全身が泊へと向かって堕ちていく。ゆっくりゆっくり堕ちていく。
まず触れ合ったのは当然ながら胸と胸だ。
泊の大きな胸に自分の胸が触れる。僅かに触れただけで脳に電流が走ったような快感に震える。
……もっと。
ただ触れただけで満足せず、さらに堕ちていく。胸で胸を押し潰していく。ただ手で触れるのとは違って、こうして押し潰していくと、まるで全身で泊の胸を支配していくような錯覚に陥る。
柔らかくも弾力があり、抵抗は緩いが僅かに押し返してくる力がある。それが気持ちいい。それをもっと味わいたいと腕に力を込めて曲げて、さらに下へ、さらに下へと堕ちていく。
すっと泊が目を閉じた。
僅かに口を突き出してきた。
それが何を意味するか。
何を言わんとするかは言わずともわかる。
俺が何をするべきか分からないわけは無い。
もう今更だろう。
泊と呑みならず紅とも歩夢とも息止め勝負だなんだと理由を付けて口が潤けるまでしたことは何度もある。
少し前まではその行為の意味など良く理解もせずに散々していた。意味を理解した最近は控えていたものの、それもつい先日その場の流れと勢いで、した。
その時の記憶は曖昧だ。
よくよく記憶を掘り返してみると……この行為を俺からみんなにしたという記憶が無い。
いつもされる側だった。
堕ちていく。
胸のみならず胴体が密着する。胸だけじゃなくて泊の身体は何処を触れても柔らかくて気持ちイイ。
「……んっ」
そして、まるで吸い寄せられるかのように堕ちきって、口と口までもが密着した。
その時、俺は何か一線を越えたような気がした。
ガシッ!
背中に回っていた泊の腕に渾身の力が籠った。
ガシィッッッ!!!
続いて泊の足が俺の腰に巻きついてきてロックした。
「ち”ゅう”う”う”う”う”う”う”う”う”う”う”う”う”ッッッーーー!!!はむっ!んじゅるっ!じゅるるっ!じゅるじゅるッ!ずぞっ!ずぞぞぞぞぞっっっーーー!!!」
「んっ、んんんっー!?んんんんんんんっっっ!?!!!?!」
獣が目覚めた。
それは完全に理性を失い本能のみに支配された肉食獣の如く。ただ貪ることしか考えていない、己の欲求を満たすことだけしか頭にない。まさに獣。
「あむっ!じゅっ!じゅぞっ!んっ、んっ、んっ!はぁ……!んっ!じゅるるるるっ!じゅるっ!はぁ……はぁ……!アオくんッ……!んっ、んんんっ!じゅ、じゅっ、んじゅ……!んじゅるっ、じゅるるるっ!ずっ、ずぞぞっ……!」
「んっ!?んんんんっ!!?!んんっっ、んんんんーーー!?!!」
あれ?俺、何やってるんだっけ……?あれ?あれあれ?
えっと……そう!あれ!いつものやつ!息止め勝負!そう息止め勝負!そうそう!それそれ!あっ、いや。違う違う。そうじゃなくって、これはあれ。そうあれだよ。あれ。えーっと。なんだっけ?そうか!思い出した!確かアレだよ!ベロ相撲!ベロとベロで押し合いへし合い対戦する。対戦ゲーム!それだ!よーし!負けないぞー!
ジャブジャブストレート。張り手突っ張り。組み合い。寄り切り押し出し突き出し引き落とし。コブラツイスト。
様々な技と力の応酬。真剣勝負。
吸い出し吸い取り吸引。絡めて吸って吸われて混じって分け合い奪い合い押し付け合い取り合って絡めて絡めて絡めて舐めて味わい堪能し勝負は決まらず繰り返し繰り返し繰り返し……。
ベロ相撲たのしいー!
ああ、この時間がずっと続けばいいのに……と何も考えずにそう考える。
「はぁ……はぁ……」
「はぁ……はぁ……」
荒い息を混じり合わせてのインターバルを得て第2ラウンド、第3ラウンド、第4ラウンド……ーー。
勝負は続くよ、いつまでも。
…………。
…………。
…………。
「ーーというわけで、これが腕立て伏せだね!」
「えっ…………今のってベロ相撲じゃなかったの?」
「…………ベロ相撲?あっ、そうそう。そうだったかもしれないね!うん!そうだね!腕立て伏せ兼ベロ相撲だね!」
「…………?あっ、なるほど!なんかよく分からないけどつまりは一石二鳥ってワケですね泊先生!」
「そうそれ!多分それだよ!1度でいっぱい美味しいわけだよ!」
「ほう……今のはベロ相撲っつーのか……」
「ベロ相撲」
「よし……アオ!俺ともベロ相撲しようぜ!」
「えー、俺は疲れたから歩夢とやったら?」
「うるせぇ黙れ!俺とも勝負しろやアオ!オラあッ!」
「んんんんんーーーッッッ!?!!!」
「次、ボクもヤル」
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