11
その日の流と紅の喧嘩は一味違った。
まず、いつも隣に居てストッパーとなるはずの泊が居なかったこと。
それと紅が流に対して本人もまだよく分かっていない感情を抱えていて、兎にも角にも紅は流と触れ合いたい、くっつきたいと思っていたこと。
その結果。
「はむっ……!んっ……!ずっ、じゅるっ……じゅるるっ……!」
「んっー!んっ、んんんッーー…………!」
2人はお互いをキツく抱きしめ、絡まり合いながら床を転がる。そして紅は流の口に吸い付いて、まるで獣の様に流の口を貪っていた。
どうしてこんなことになっているのか……発端は当然、紅である。紅が唐突に「息止め勝負だ!先に口離した方が負けな!」なんてことを言い出し「上等だ!絶対負けねえ!」と流は何も考えずにその勝負に乗った。
そうしてこうなった。
その光景は当人の2人(というかぶっちゃけ流1人だけ)としては喧嘩の延長線上で、とてもくだらない勝負をしているつもりではいるが、傍から見れば何処をどう見ても愛し合う男女が求め合っている様にしか見えなかった。だってガッシリ抱き合ってるし、紅が舌をねじ込んで流の口内を余すこと無く蹂躙してるし。
まあ、求め合っているというか、どちからと言えば紅が一方的に求めていると言った方が正しいか。
馬乗りで流に覆いかぶさった紅はピッタリ胸と胸を密着させ、首に腕を回し、手で頭部をガッチリと固定、無我夢中で流の口に自分の口を押し付ける。その様から絶対に離さなねぇから!という強い意志を感じさせる。
さらに紅は完全に無意識に流の下半身に自分の腰を一心不乱に擦り付けていた。見た角度によっては、これ入ってる?完全に入ってるよね?みたいなことになっているが何も入ってはいない。入ってないと言ったら入ってない。
「ぷはっ……!」
「はぁ……はぁ……。い、今のは紅が先にーー」
「まだダッ……!んちゅうううっ……!!!」
「んんんっーー……!!!」
酸素を求めて口を離したかと思えば、鼻息を荒くさせて、またすぐに紅は流の口にごういんに吸い付く。
「ぷはっ!あっ、今は俺が先にーー」
「まだダァッ!!!ん”ち”ゅう”う”う”ッッッーーー!!!」
「んっ、んんんっ、んんんんんっーー!?!!」
紅の頭からは等に勝負がどうこうという意識は抜け落ち、ただ口と口を重ねることしか考えられなくなっていた。
(なんかスゲェ!これなんだっけ?キスとか言うんだっけか?確かそうだ。キスだ、キス。キスすげぇ!アオとキスすんの、なんかスゲェ!めちゃくちゃ気持ちイイ!ダメだこれやめらんねえ!アオとキスすんのやめらんねえ!もっとしたい!もっとキスしたい!アオともっとキスする!もっともっともっと!キスキスキスきすきすきすきスキスキスキ好き好き好き好き!アオ好き!もっともっともっともっともっと!)
暴走状態に突入した紅を止められるものはこの場に居なかった。
【当時を振り返るA氏の証言】
「そういえば……なんかやたらと「息止め勝負!」とか言って紅とキスしまくってた時期あったなぁ。あと「プロレスごっこしようぜアオー!」って揉みくちゃにもされた。数ヶ月は続いたかな?それからは落ち着いたのか頻度は減ったけど、たまにやってたね。あの頃は特になんの意識もしてなかったんだけど今はちょっとアレ……。まっ、紅にしたって、ただ勝負したり遊んでただけって感覚だろうから別に気にすることも無いかなって。なんで息止め勝負なのかは疑問はあるけど……その場のノリと勢いってヤツ?まあ、あるあるだよねー。えっ、あのバカ紅が?いやいや、ないない。ただ仲良くじゃれあって遊んでただけだって!でもまあ今思い返してみると割と凄いことはしてたかな……。うーん……でもやっぱり紅だしなー。バカだし?なんも考えてないんじゃない?」
とのこと。
この時の洲崎紅は一種の発情期らしき何かに突入していたのかと思われる。
ちなみに余談ではあるが。
息止め勝負をする流と紅に充てられて残りの泊と歩夢も同様に息止め勝負を行っている。4人全員が入り交じって凄いことになったとか、ならなかったとか。
「アオちゃんコウちゃん。それ。何やってる?」
「ンッ、じゅうっじゅるるるるるるっ……!ぷっはあ……!んあ……?コレか?コレは、アレだよ。アレ。キスーーじゃなくて息止め勝負」
「はぁ……はぁ……。そうそう、先に口離して息した方が負けって勝負」
「ほう。ボクも参戦する」
「歩夢もやるのかー。んじゃ、紅と歩夢でーー」
「アオちゃんと勝負」
「ひょ?」
「スタート」
「んっ……!?んんっ、んんんんんんっっっーーー!?!!」
「んじゅるっ、じゅるっじゅるるっ、ずっ、ずぞぞぞぞぞぞッッッ!!!」
「ふっ……。分かってるじゃねぇか、クロ。そうだ。まずはそうやって吸引して相手の酸素を奪い取るのが息止め勝負開幕のセオリー……!たが勝負はまだまだこれからだぜ!こっからはお互いが吸い付きあっての酸素の奪い合いーーつまりは肺活量が勝敗を決するってワケだ」
「はむっ、んっ、じゅっ、ずぞっ、じゅるるっ……!」
「んっ、んっ、んっ!んんっ、んんんっ!んっ、ごじゅっ!ずっ、ずっ、ずずずっ……!」
「激しい酸素の奪い合い……。あー……これ、なんかアレだな。実際に隣でヤッてんのみると、こう……。なんかホント、アレだな……。見てるこっちが……ゴクリッ……!」
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