無気力社畜、ドワーフと飲み歩きに無理やり付き合わされてみた(2)
最初の酒場でビールを何杯か飲み、つまみをつつきながら話しているうちに、倦太は少し酔いが回ってきた。酒に弱いわけではないが、普段あまり飲まないためか、久々に感じるアルコールの影響に体が少し温まってきた。
「よし、次行くか!」
グラムがジョッキを置き、立ち上がった。倦太はその言葉に少し驚き、眉を上げた。
「もう行くのか?俺はもう…十分だと思うけど…」
倦太はすでに満足していたが、グラムは全く気に留めない様子だった。すでに次の場所を見据え、元気に外へと向かっていく。倦太はため息をつきながらも、その背中に従うしかなかった。
「まだまだ、これからが楽しい時間なんだ!次はもっと賑やかな場所に行こうぜ!」
グラムは勢いよく路地を抜け、繁華街の方へと歩き出す。倦太は酔いが回った頭を少し冷ましながら、彼の後を追った。次に向かったのは、若者が集まる少しモダンな雰囲気のバーだった。
「ここか…普段はこんな場所、絶対に来ないな」
倦太は少し居心地の悪さを感じつつも、グラムが楽しそうに先頭を切って店内へ入るのを見て、仕方なく後に続いた。中はかなり賑やかで、店内にはクラブミュージックが響き、若者たちが楽しそうにグラスを片手に談笑している。倦太はその雰囲気に若干の圧倒を感じながら、カウンターの一角に腰を下ろした。
「ここはどうだ?若いやつらが多くて活気があるだろう?」
グラムはすでにバーテンダーに注文を済ませ、二人分のカクテルを受け取っていた。倦太はその様子に驚きつつも、カクテルグラスを手渡される。
「カクテルか…これも久々だな」
倦太は少し苦笑いを浮かべながら、カクテルを口に運んだ。甘くてフルーティーな味が広がり、ビールとは違った軽さがあった。
「こんな場所で飲むことなんて、全然ないんだよな…」
倦太がそう呟くと、グラムは嬉しそうに笑いながら肩を叩いた。
「だからこそ、今楽しめばいいんだよ!いつもと違う場所に来るのも悪くないだろ?」
確かに、倦太にとってこうした場所は非日常そのものだった。普段は黙々と仕事をこなし、疲れ果てて家に直行するだけの生活。それが今、目の前に広がる賑やかな空間にいることで、どこか気持ちが解放されているのを感じていた。
「まあ、たまには…ね?」
倦太は少しずつ笑みを浮かべ、カクテルをもう一口飲んだ。グラムは満足げに頷き、さらに自分のグラスを掲げた。
「よし、じゃあ乾杯だ!金曜の夜を祝して!」
倦太もグラスを持ち上げ、軽くぶつけた。二人は次々とカクテルを飲み、談笑しながら時間が過ぎていった。
グラムは自分の職人としての生活や、昔のエピソードを豪快に語り、倦太はそれを聞きながら「こんなにも自由に生きられるものなのか」と感心していた。仕事に追われる自分とは正反対の生き方をするグラムに、どこか憧れさえ抱き始めていた。
「お前ももっと自由に生きた方がいいぜ。仕事なんて気張るものじゃない。楽しむものだ」
グラムのその言葉は、少し酔いが回った倦太の心にどこか刺さった。彼はそれまで仕事に追われる日々しか知らなかったが、今こうして賑やかなバーの一角で、非日常の時間を楽しんでいる自分に驚いていた。
「そうだな…俺も、少しは変わるべきかもな」
倦太は心の中でそう思いながら、カクテルを飲み干した。
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