無気力社畜、ダークエルフに無理やりオシャレ部屋に改造された(4)
夕方になり、ナーヤと倦太が行ったプチDIYは全て終わりを迎えた。部屋の壁にはリメイクシートが丁寧に貼られ、突っ張り棒で新たに作られた収納スペース、カラーボックスの収納棚、そして間接照明によって柔らかな光が部屋全体を包んでいた。以前の殺風景で無機質な空間は、今やオシャレで落ち着いた場所に生まれ変わっている。
倦太はソファに腰を下ろし、部屋を見渡して静かに息を吐いた。朝はただ無気力に過ごすはずだった日が、予想もしなかった模様替えによって一変した。部屋の変化を目の当たりにし、どこか満足げな気持ちが湧いてきたことを感じていた。
「本当に変わったな…。まるで別の部屋みたいだ」
倦太は感心したように独り言を漏らし、ナーヤの方を見やった。隣のソファに座るナーヤは、達成感に満ちた表情を浮かべている。
「賃貸だからって諦める必要なんてないんだよ!倦太もこれからはもっと模様替えとか気にしてみたら?」
ナーヤは軽く倦太の肩を叩きながら、自信満々に言った。倦太は彼女の言葉に少し笑みを浮かべたが、まさか自分がこうして模様替えに関心を持つとは思わなかった。
「そうだな…。ここまで変わるなら、悪くないかもな」
倦太は少し考え込むように部屋を見渡し、納得したように頷いた。リメイクシートの色合いや、収納スペースの増加、照明の配置の工夫によって、部屋全体が広々と感じられる。ナーヤの手際に倦太は改めて感心した。
「それにしても、お前のセンスには驚いたよ。正直、最初は乗り気じゃなかったけど、やってみると意外と面白かった」
倦太の言葉に、ナーヤは誇らしげな笑顔を浮かべた。
「でしょ?私って、こういうこと結構得意なんだよ。DIYとか、工夫するの好きだし、何より楽しいでしょ?」
ナーヤはそう言って、嬉しそうに部屋を見渡した。彼女のエネルギッシュな性格に最初は振り回されてばかりだったが、今日は倦太自身も不思議とそのリズムに乗せられて楽しんでいた。普段なら、こんな大掛かりな模様替えに関わるなんて考えもしなかっただろう。
「まあ、確かに。朝は何もしたくない気分だったけど、こうして見ると…なんか、やってよかったなって思うよ」
倦太は照れ隠しのように呟きながら、少しだけ肩をすくめた。ナーヤはその言葉に満足げに頷きながら、軽く倦太の肩を押してきた。
「もっと感謝してよね!私のおかげなんだからさ!」
「わかったよ。ありがとう、ナーヤ。感謝してるよ、本当に」
倦太はその言葉を口にした瞬間、ふと心の中に温かい感覚が広がるのを感じた。彼は自分の生活が少しずつ変わり始めていることに気づき始めていた。平凡で無気力だった日々に、ナーヤのような存在が入り込んできたことで、倦太の毎日は少しずつ色を取り戻しているようだった。
しばらく二人は静かにソファに座り、変わった部屋の雰囲気を味わっていた。窓から差し込む夕方の柔らかな光と、照明によって作られた優しい陰影が部屋全体を包み込み、穏やかな時間が流れていた。
「そういえば、これからはもっと模様替えとか挑戦してみるつもりか?」
ナーヤがふと問いかけた。倦太はその質問に少し考え込みながら、ゆっくりと答えた。
「どうだろうな…。今日はお前がいたからやったけど、次はどうかな。でも、少しずつ変えてみてもいいかもしれないな…」
倦太は今までの自分を振り返りながら、部屋の変化が自分にとって意外にも大きな影響を与えていることに気づいていた。毎日のルーティンに埋もれていた彼が、少しだけ前向きに考え始めていることに自分でも驚いていた。
「ふふん、そうでしょ?じゃあ、次もまた手伝ってあげるから、遠慮なく声かけてね!」
ナーヤは冗談交じりに言いながら、立ち上がって部屋のドアに向かった。振り返って笑顔を浮かべると、「それじゃあ、今日はこれでおしまい!」と元気よく言い残して、部屋を出ていった。
倦太は彼女の後ろ姿を見送りながら、再び部屋全体を見渡した。心地よい光が部屋を包み、整えられた家具や収納が視界に入る。部屋の隅々まで自分とナーヤが手を加えた成果が見える。
「次は、もう少し自分でもやってみるか…」
倦太はそう呟き、静かな満足感に包まれながら、今日の一日を振り返った。何もすることなく過ごすはずだった休日が、思いがけず有意義な時間に変わった。ナーヤとの一日は、彼にとって予想外の展開だったが、少しずつ心に変化をもたらしていた。
「まったく、いつも振り回されてばかりだな…」
倦太は苦笑しながらも、その言葉にはどこか楽しさが混じっていた。ナーヤとの時間が、無気力だった彼の日常に小さな光を差し込み始めていることを、彼は静かに実感していた。
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