無気力社畜、ダークエルフの“お礼”に付き合わされてみた(4)
駅前の大きなショッピングモールに入っているこのゲームセンターは、若者たちで賑わい、派手なネオンと音楽が溢れる空間だ。
「ここだよ!ゲームセンターって、人間界の文化らしいけど、すっごく面白そうじゃない?」
ナーヤは目を輝かせながら店内を見渡し、すぐに気になるゲーム機へと駆け寄った。
倦太は少し後ろから歩きながら、彼女のテンションにやや戸惑いを感じつつも、彼女についていった。
「まずはこれ!クレーンゲームって言うんだって!やってみようよ!」
ナーヤはクレーンゲームの前に立ち、目当てのぬいぐるみを見つめながら、嬉しそうにコインを投入した。クレーンが動き始め、ナーヤは真剣な表情で操作するが、なかなか上手くいかない。何度か挑戦するものの、ぬいぐるみは惜しいところで落ちてしまい、ナーヤは悔しそうな顔をした。
「うーん、難しいなぁ…」
「手伝ってやろうか?」
倦太が優しく声をかけると、ナーヤは少し恥ずかしそうにしながらも、「お願い!」と頼んできた。
倦太は慎重にクレーンを操作し、見事にぬいぐるみをゲットすることに成功した。
「やったー!倦太、すごいじゃん!」
ナーヤは大喜びでぬいぐるみを抱きしめ、倦太に感謝の意を込めて笑顔を向けた。倦太も少しだけ誇らしげに微笑み返し、二人は次のゲームへと進んでいった。
「次はこれやってみようよ!」
ナーヤが目をつけたのは、アーケードの対戦型ゲームだった。二人で並んで操作し、競い合いながら進めていくタイプのゲームで、ナーヤは予想外に上手く、倦太も負けじと真剣にプレイし始めた。最初は軽い気持ちで挑戦していた倦太だったが、次第にゲームに熱中し始め、いつの間にか二人は真剣勝負を繰り広げていた。
「倦太、負けないからね!」
「手加減しないからな!」
ゲームが終わると、二人とも笑いながらお互いを称え合った。結局、倦太が僅差で勝利したが、ナーヤも満足そうに笑っていた。
ナーヤは、プリクラの前で足を止めた。倦太はそれを見て戸惑ったが、ナーヤは楽しそうに「記念に撮ろうよ!」と彼を誘った。普段は絶対に撮らないと決めていた倦太だったが、ナーヤの勢いに押されて渋々撮影することに。
プリクラが出来上がると、ナーヤは満足げにそれを眺め、「いい記念になったね!」と笑顔で言った。倦太は少し恥ずかしそうにしながらも、写真を受け取り、その場の楽しさを思い返していた。
「今日は色々回ったけど、最後はこれで決まりだね!」
ナーヤは得意げに言いながら、ゲームセンターを後にした。
夕方になり、ゲームセンターを後にしたナーヤと倦太は、少し落ち着いたカフェに立ち寄っていた。
街の騒々しさから少し離れた場所にあるこのカフェは、暖かい照明と木目調のインテリアが特徴で、店内にはゆったりとした空気が流れている。
二人はカフェの一角に座り、注文したコーヒーが運ばれてくると、しばしの沈黙が訪れた。ナーヤはカップを手に取り、満足そうに一口飲んだ後、しみじみとした表情で言葉を切り出した。
「今日は楽しかったね!やっぱりこういう時間が大事なんだよ」
倦太はナーヤの言葉を聞きながら、自分が一日中彼女に振り回されていたことを思い出していた。どこに行っても彼女のペースに乗せられ、結局はナーヤが楽しんでいるだけのような気がしていたが、それでもなぜか不満は感じなかった。
「結局、お前が行きたいところに付き合わされただけじゃないか」と、倦太は苦笑しながら言った。
ナーヤはその言葉に対して特に反論することもなく、むしろ楽しげに笑って答えた。
「でも、アンタも楽しんでたじゃん?それが一番でしょ?」
ナーヤの言葉には、どこか無邪気な真実が含まれていると感じた倦太は、少し驚いたような顔をしながらも、次第に納得していった。確かに、自分でも知らないうちに楽しんでいたのだということに気づかされた。
「まあ、そうかもな…」
倦太はコーヒーを一口飲みながら、素直にそう認めた。ナーヤは満足げに微笑み、カップを持つ手を少しだけ揺らした。
しばらく二人は何も言わずにコーヒーを味わいながら、穏やかな時間を共有した。その後、ナーヤはふと立ち上がり、笑顔で倦太に別れを告げた。
「またどこか一緒に行こうね!楽しいこと、まだまだたくさんあるから!」
ナーヤはそう言い残し、満足げにカフェを後にした。倦太は彼女の後ろ姿を見送りながら、次に何をするかを考えることもなく、ただその場に座り続けた。
「次はもう少しマシな服を選んでくれるといいけどな…」
つぶやきながら、倦太は今日の一日を振り返り、彼女との時間が思った以上に楽しかったことに気づいた。ナーヤとの出会いが、彼の平凡な日常に少しだけ色を添えたのかもしれないと、心の中で微笑んだ。
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