無気力社畜、ダークエルフの“お礼”に付き合わされてみた(3)

ナーヤに選ばれた新しい服を身にまとった倦太は、少しばかりの違和感を抱えつつも、彼女の後に続いて街を歩いていた。次に彼女が連れて行ったのは、街で話題の雑貨ショップ。店の前にはカラフルなディスプレイが並び、店内は賑わいを見せている。


「ここだよ!流行りのショップってやつ!」


ナーヤは満面の笑みを浮かべて言いながら、迷わず店内へと入っていく。倦太もため息をつきつつ、彼女を追いかける形で店に入った。


店内は、予想以上に華やかで、色とりどりのアイテムが棚にぎっしりと並んでいた。おしゃれな雑貨やアクセサリー、インテリアアイテムなどが、見ているだけで楽しくなるような空間を作り出している。ナーヤはまるで子供のように興奮しながら、あちこちを見て回り始めた。


「倦太、これ見てよ!このアクセサリー、可愛くない?」


ナーヤは手に取ったキラキラと光るブレスレットを倦太に見せながら、楽しそうに言った。倦太は興味なさげにちらりとそれを見て、「まあ、悪くないんじゃないか」と適当に返事をするが、ナーヤはまったく気にせず次のアイテムへと移っていく。


「このクッション、触り心地最高だよ!ほら、触ってみて!」


ナーヤが手に取ったクッションを差し出してくると、倦太は渋々手を伸ばしてそれに触れた。たしかに、柔らかくて心地よい感触だが、これが彼にとって重要なことなのかどうかは微妙なところだった。


「うん、まあ、柔らかいな…」


倦太がぼんやりと答えると、ナーヤは満足そうに頷き、「やっぱり、こういうのがいいよね!」と楽しそうに言った。彼女のテンションに少しずつ引き込まれていく倦太は、次第に自分もこの雰囲気を楽しんでいることに気づき始めた。


「これ、記念に買っちゃおうかな!」


ナーヤは可愛らしい小物を手に取りながら言い、レジに向かう準備を始めた。その様子を見ながら、倦太は「何か買わないの?」と尋ねられたが、彼は「いや、見てるだけで十分だ」と軽く笑いながら断った。


「本当に?何か買ってもいいのに!」


ナーヤは少しだけ残念そうな顔をしたが、すぐに気を取り直し、買い物袋を手にして店を出た。


「ねえ、なんだかお腹空いてきたね。おいしいお店があるから、次はそこでランチにしようよ!」


ナーヤはお腹をさするようにしながら、期待に満ちた表情で倦太を見上げた。倦太も自然と頷き、

彼女の後ろを追いながら、もう完全に彼女のペースに乗せられている自分に苦笑した。



街をさらに進み、次に向かったのは最近オープンしたばかりの洋食レストランだった。

大きな窓から店内が見渡せ、シンプルでシックなインテリアが施されたおしゃれな雰囲気が漂っている。

入口には「本日オープン!」という看板が掲げられ、すでに行列ができているほどの人気ぶりだ。


「ここだよ!このお店、SNSでも評判で、すっごく美味しいって言われてるんだ!」


ナーヤは目を輝かせながら倦太に言うと、そのまま行列に並び始めた。倦太は少し疲れ気味に彼女を見ながらも、結局は後に続いた。


店内に通されると、ナーヤはメニューを手に取り、真剣な表情で目を走らせた。倦太は適当にページをめくっていたが、ナーヤは次々と注文を決めていく。


「これも美味しそうだし、あれも食べてみたい…決めた!アンタもこれ、絶対気に入るから!」


そう言いながら、ナーヤは倦太の分まで勝手に注文をしてしまう。倦太は文句を言う気力もなく、「まあ、任せるよ…」とだけ返事をした。


料理が運ばれてくると、テーブルの上には色とりどりの料理が並んだ。トリュフの香りが漂うクリームパスタや、ジューシーなハンバーグに彩り豊かなサラダなど、どれも目を引く美味しそうな料理ばかりだった。


「ね、すごいでしょ?これ、絶対美味しいよ!」


ナーヤは興奮気味に言いながら、早速フォークを手に取り、パスタを口に運んだ。倦太も渋々ながら同じ料理を一口食べてみる。


「…うん、確かに美味いな」


倦太は少し驚きながら感想を漏らした。普段はあまりこういった店に足を運ばない彼だが、この料理には納得せざるを得なかった。


「でしょ?私の選ぶ店に間違いはないんだよ!」


ナーヤは自信満々に言いながら、次々と料理を楽しんでいく。倦太も彼女のテンションに引き込まれ、次第に食事を楽しむようになった。二人は料理を味わいながら、互いに感想を言い合ったり、笑い合ったりと、穏やかな時間を過ごした。


「ねえ、倦太。たまにはこういう美味しい料理を楽しむのもいいもんでしょ?」


ナーヤが嬉しそうに尋ねると、倦太は少し考えてから「まあ、悪くないかもな」と素直に答えた。ナーヤはその答えに満足げに微笑み、さらに料理を堪能する。


食事が終わると、ナーヤは「やっぱりこの店、最高だったね!」と感想を漏らしながら、満足そうにお腹をさすった。倦太も「美味かった」と同意するが、彼女の勢いに少し圧倒されつつも、その時間を楽しんでいたことに気づいていた。


「次はゲームセンターだよ!まだまだ遊び足りないでしょ?」


ナーヤが楽しそうに言いながら店を出た。

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