無気力社畜、ダークエルフの“お礼”に付き合わされてみた(2)
ナーヤに強引に外に連れ出された倦太は、街を歩きながら「一体どこに行くんだ…」と内心ぼやいていた。ナーヤの勢いに押されて、すでに自分の意思はほとんど無視されている状態だ。しばらく歩いていると、彼女はファッションビルの前で立ち止まった。
「さあ、ここでちょっと立ち寄るよ!」
ナーヤは楽しそうに言いながら、ビルの中に入っていく。倦太も仕方なく後に続くが、入った先は煌びやかなファッション店が立ち並ぶフロアだった。
「ここに用事があるのか?」
倦太が半ば呆れながら尋ねると、ナーヤはにやりと笑い、彼の姿を上から下までじっくりと見た。
「まあね。でも、まずはアンタのそのダサい服を何とかしないとね!」
ナーヤの言葉に倦太は戸惑いを隠せなかった。「ダサい服」と言われても、彼にとっては普段と変わらない普通の服装だったからだ。
「何がダサいんだよ、普通の服だろ…」
倦太がぼそりと反論するが、ナーヤは全く気にしない様子で、すでに目当てのお店を探し始めていた。彼女のあまりのスピードについていけず、倦太は言葉を飲み込んだ。
「さあ、こっちに来て!」
ナーヤは倦太の手を引き、一軒のファッション店に連れ込んだ。店内はカラフルでモダンな服が所狭しと並び、音楽が軽快に流れている。ナーヤは手早く店内を見渡し、次々と服を選び始めた。
「これとか、これなんてどう?あとはこのジャケットもいいね!」
彼女が選んだ服は、倦太にとってはあまりにも派手すぎるものばかりだった。明るい色合いのシャツや、個性的なデザインのパンツ、そして革のジャケット。倦太はその服を手に取りながら、少し不安げな表情を浮かべた。
「本当にこれ着るのか…?」
「もちろん!私が選んだんだから間違いないって。さあ、試着してみて!」
ナーヤは強引に倦太を試着室へと押し込んだ。仕方なく彼は選ばれた服を着てみるが、試着室の鏡に映った自分の姿を見て、ますます戸惑いを感じた。
「これ、絶対に浮くだろ…」
小声でつぶやきながらも、試着室から出ると、ナーヤは満足げに頷いた。
「ほら、全然違うじゃん!やっぱり服装で印象が変わるんだよ。これで少しは私の横を歩いても恥ずかしくないね!」
ナーヤの言葉に、倦太は少しだけ安堵しつつも、まだ完全に納得できない様子だった。しかし、彼女の楽しそうな顔を見ていると、それ以上反論する気力もなくなってしまった。
「まあ、悪くはないか…」
そう言いながら、倦太は新しい服に身を包んだ自分を鏡で見つめた。普段とは違う自分がそこにいることに、どこか不思議な気持ちを抱きつつ、ナーヤのペースに押されていくのだった。
「よし、次は他にも行きたいところがあるから、早速行こう!」
ナーヤは満足げに笑いながら、次の目的地へと倦太を連れ出していく。彼は完全に彼女のペースに巻き込まれながらも、どこか楽しさを感じ始めている自分に気づき始めていた。
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