無気力社畜、エルフに無理やりキャンプデビューさせられてみた! (1)
外から差し込む陽の光は、カーテン越しにぼんやりとしか見えない。今日もまた、無目的な一日が始まるのかとため息をついたその時、不意にインターホンが鳴った。倦太は顔をしかめた。誰がこんな朝早くから訪ねてくるのか見当もつかない。
無意識のままスマートフォンをテーブルに置き、重い体を引きずるようにして玄関へ向かう。ドアを開けると、そこには以前に一度出会ったことのある女性が立っていた。長い銀髪が風に揺れ、その美しいエメラルドグリーンの瞳が倦太を捉える。
「おはよう、倦太さん」
彼女は微笑みながらそう言った。その柔らかい声に、倦太は一瞬、時間が止まったような感覚に陥る。目の前にいるのは、ただの人間ではない。彼女は、かつて出勤途中の公園で出会った、異世界から来たエルフ、リシェルだった。
「今日は一緒にキャンプに行きましょう」
彼女はあっさりとそう言い放ち、倦太が返事をする間もなく、玄関の前に準備されたリュックサックを肩に掛ける。
「いや、俺は別に…」
倦太は反射的に断ろうとするが、リシェルはにっこりと笑って首を横に振る。
「大丈夫、楽しいから。自然の中でリラックスするのは、あなたにもきっと良いことよ」
その言葉に込められた確信に、倦太は返す言葉を失う。彼は面倒だと思いつつも、リシェルの押しの強さに抗うことができなかった。そして、次の瞬間には、彼女に引っ張られるようにして家を出ていた。
何がどうなっているのか理解できないまま、倦太はリシェルに連れられてキャンプ場へと向かうことになった。
手を引っ張るリシェルは、無邪気な笑顔を浮かべながら楽しそうに歩いている。倦太は内心、ため息をつきながらも、彼女の表情にどこか惹かれる自分がいることに気づき、少し戸惑っていた。
「キャンプなんて、何が楽しいんだろうな…」
心の中でぼやきながらも、倦太は思い出していた。最初にリシェルと出会った日のことを。
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