異世界からの訪問者たちと過ごす、無気力社畜の日常

てぃらみす

無気力社畜、エルフに無理やりキャンプデビューさせられてみた! (0)

朝、薄暗い部屋にスマートフォンのアラームが鳴り響く。無動 倦太むとう けんたは、重いまぶたをゆっくりと開け、手探りでアラームを止めた。時計の針は午前5時を指している。始発電車に間に合うためには、もう起きなければならない。だが、布団の中は心地よく、倦太はもう少しだけその暖かさに浸りたかった。


「あと5分…」


そう呟いて再び目を閉じるが、結局5分ではなく10分が過ぎていた。彼は重い体を引きずるように起き上がり、冷えた空気に身を縮めながらゆっくりと着替える。平日の朝は毎日同じだ。何も考えずに着るスーツ、無意識に流し込むインスタントコーヒー、同じルートをたどって最寄り駅へ向かう。


電車の中では、倦太はいつも通り窓の外をぼんやりと眺める。流れる景色は見慣れたもので、そこに新鮮さはない。乗客たちも皆、どこか疲れた顔をしている。倦太は一人きりでいるのが当たり前で、他人との接触を避けるようにいつも車両の端に立つ。


会社に到着すると、仕事は機械的に進む。メールを処理し、上司の指示に従い、書類を整える。特に何かを考えるわけでもなく、ただ時間をやり過ごす。昼休みも特に何をするでもなく、コンビニで買った弁当をデスクで黙々と食べる。午後になれば眠気が襲ってくるが、必死に目を開け続ける。


そして、終電間際まで働いた後、再び同じ電車に乗って帰宅する。日付が変わる少し前に自宅に戻り、無動 倦太の一日は静かに終わる。ベッドに倒れ込み、眠りにつくまでの数分間、彼は何も考えないようにしていた。


「これが、ずっと続くのかな…」


その日は、特にそう感じた。ただ生きているだけのような日常に、倦太は何の意味も見出せなかった。彼の人生は、単調なリズムを繰り返すだけのものだった。未来に期待することもなく、過去を振り返ることもなく、ただ今日を生きる。それが彼の唯一の選択だった。


しかし、彼の単調な日常に、突然の異変が訪れる。出勤途中、いつも通る小さな公園の前で、彼は奇妙な光景に出くわす。そこに立っていたのは、エルフとしか思えない美しい女性だった。彼女は木にそっと触れ、何かを囁いているようだった。その瞬間、倦太の無関心な日常が、わずかに揺らいだ。


「なんだ、あれは…?」


まさか、あの出会いが、自分の人生を変えるものになるとは、その時の倦太にはまだ知る由もなかった。

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