第2話

 ほどなくして悟からメッセージが返ってきた。

“多佳子ちゃん、久しぶりぃ。今どこに勤めてたっけ?飲み会いいねー。俺もストレスたまってるから、たまには発散したいわ!”

“発散してないんだ?珍しい。私はパン屋だよ。就職浪人中”

 嘘。余計なこと聞くな。もう就活なんてする気ない。これ以上、精神ずたぼろになりたくない。 

“いや、ほら、コロナで出づらいんだよね。近ごろは遠慮がちに飲みいくようにはなったけど、もう学生みたいには飲めないね。。。”

 なにが学生みたいには、よ。カッコつけてるつもりかしら。ほろよいしか飲めなかったくせに。

“じゃあ悟の参加決定ね。あとで日程の候補を上げるから、投票してね”

“よっしゃー、待ってる”

 ため息をついた。こういうやり取りは苦手。いつも悪態をつきながら、当たり障りのないメッセージを書く。こういうの営業トークっていうのかな?

 我々の代の地域文化研究会の会長様からメッセージが入った。

“多佳子ちゃん、元気してた?会いたかったよ”

“ぼちぼちです。聡美さんは元気でしたか?

“まあまあ。やっぱり1年目は大変だわ。覚えないといけないこと沢山あって”

 またその話。仕事の苦労話は聞きたくなかったし、自分のことを聞かれても困るから、早々に切り上げようと思った。

“聡美さん、参加でよいですよね?”

“もちろん、いくいく。幹事ありがとね”

“いえいえ、私が一番ヒマなんで。ではあとで日程の候補を上げますね”

“おっけー”

 聡美さんは1年浪人して大学に入ったから、なんとなくお姉さんに接する感じになってしまう。ほんとはランクが上の大学に入りたくて浪人したんだけど、県立大学は面接で落とされたらしい。聡美さんいわく、体型差別があったとのこと。たしかに聡美さんは度を越して豊満だ。でも私たちにとっては愛嬌があって頼りになる会長さんだった。公務員試験をパスして市役所に勤めてるから、サークルでは一番の出世頭だ。

 それから渉と翔太と俊彦からラインが入った。飲み会と聞いて、みんな満更でもなかったみたいだ。やっぱり就職するとストレスたまるのかな?実家暮らしで、ベーカリーでバイトしてる私には分からない。

 私は梨花にラインした。みんな乗り気だと伝えた。日程を調整して、2週間後の金曜日に、大学時代によくいった居酒屋に集まることに決まった。緊急事態宣言も終わって、飲み屋さんも普通に営業するようになってたから、予約もすんなり取れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る