第65話
体育祭の出場する種目を決める日がやってきた。クラスのホームルームで決めることになっている。俺は短距離走への出場は見送る代わりにリレーにエントリーした。団体競技である騎馬戦とチャンバラ合戦には自動で出場することが決まっている。
放課後、俺は学校を出て公園に向かう。大きなグラウンドがある公園で、他にはバスケコートがある。走る練習をするのにはちょうどいい広さだ。
「さて、それじゃやろっか」
なぜかついてきた結菜が、背伸びをしながら言う。どうやら練習を手伝ってくれるようだ。リレーは短距離走と違い、バトンリレーがタイムを縮めるうえで重要になってくる。結菜からバトンを受ける練習をする。
一定の距離を開け、結菜がスタートを切る。結菜の足の速さを見切り、俺もスタートを切った。バトンが俺の手に渡り、俺は加速する。スムーズにバトンパスがいった。本番の相手は違うが、上手くいくだろう。
それから俺は体育祭までの日程を毎日バトンパスの練習を行った。
※※※
体育祭の日がやってきた。生徒会の仕事をしながら、勝負に向けて精神を整える。天気は快晴で少し暑いぐらいだ。順調に予定は消化していっている。この調子なら生徒会としてすることはほとんどないだろう。
短距離走に出場した結菜が一着でゴールする。応援席から大歓声が沸き、結菜の走りを称える。さすがは結菜。他クラスからも声援をもらっている。
他の生徒会メンバーに目を向けてみると、借り物競争に待機した班目が緊張の面持ちで固まっていた。大丈夫か。あんまりがちがちだと怪我するぞ。そう思っていたが、久世が近づいて何事か囁くと頷いた班目はふっきれた表情をしていた。
レースが始まる。班目は足が速い方ではない。運動も得意ではないのだろう。必死で走っているがぐんぐん先頭から離されていく。お題の机に辿り着いたのは最後から二番目だった。お題を開き、固まる班目。何が書かれていたのか。
意を決した班目は久世のもとへ走っていく。そして久世の手を引くとゴール目掛けて走り出した。なんと三着でゴールした班目は審判にジャッジを委ねる。どうやら好きな人と書かれていたらしく、久世を引っ張っていったようだ。判定は合格。正式に班目のゴールが認められた。
久世と班目は付き合い始めたことを公にはしていない。だからいまだに久世に告白する女子生徒がいるようだ。それでも恋愛禁止を掲げていた手前、公にしにくいのだろう。これからも秘密にして交際していくようだ。
「班目先輩も可愛いですね」
生徒会ブースで待機している若月が俺に話し掛けてくる。
若月は短距離走で可もなく不可もない順位でゴールしていた。走り方があざとく男子の視線を集めていたのがこいつらしい。
「次は先輩の番ですね。勝負の件、勝てそうですか」
「やってみないとわからんな。まずは騎馬戦だが、どこまでできるか」
「先輩ならやれます」
「ありがとう」
若月のささやかなエールを受けて、俺は気合を入れる。
「先輩、やっぱり結菜先輩のこと好きなんですね」
「急になんだよ」
「だって、結菜先輩の為に勝負を受けたんでしょ。それって結菜先輩を他の人に渡したくないっていう意地じゃないですか」
確かにそうかもしれない。俺はこの勝負から逃げても良かったはずだ。それでも俺を信じてくれた結菜に応えたいという思いが強く。俺は勝負を受けた。俺の中で気持ちが固まった気がした。
「それじゃ行ってくるわ」
「頑張ってきてください」
若月に背中を押され、俺は入場門へ集合する。
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