第4話 信用のできる相手

「鬼を一撃で!?」

「え?」


 スカーレットは驚いたように紫音の方を見つめていた。


「あなた、本当に何者?」

「マギア・パープル」

「やっぱり、他の支部のマギア・プレアでもないみたいね」


 スカーレットは首を傾げる。


「クリーチャーを倒してたし、敵ではないみたいだけど」

「個人で活動してる、魔法少年っていう認識でいいよ」


 紫音は、これ以上無視し続けるとまた追いかけてきそうだと思ったので答え始める。


「分かったわ。で、あの力は何?」

「魔力を溜めて放っただけ」

「魔力を!?」

「もっと、上手く魔力を扱えたら良いけど…」

「あれだけの魔力、一体どうやって?」

「元々あった魔力。いや、クリスさんが与えてくれたのか」


 どうやら、クリスが紫音に授けた魔力は、かなり膨大な量だったらしい。現役魔法少女のスカーレットが驚くほどには。


「ねぇ、拠点には連れて行かないから、あなたの事を教えてくれない?」

「うーん…」

「絶対秘密にすると約束するわ。教えてくれたらある程度だけど、魔力の扱い方をレクチャーしてあげる」

「わかったよ、君なら信用できそうだし話すよ」


 クリスが言っていた怪しい動きをしているのは上層部だ。支部のマスコットであるカムイみたいに魔法少女の指示役は警戒すべきだろう。

 しかし、魔法少女たちは何も知らずに騙されているだけなら、スカーレットを含めたマギア・プレアたちは信頼しても良いだろう。その中でも、すぐに上に報告するような相手には話せないが。

 スカーレットは優しい心を持っている。秘密にすると言ったら、約束を守るだろう。そう考えて、紫音はスカーレットを許した。


「今日、路地裏でペンギンのマスコットと出会ったんだ。名前はクリスって言ってた。魔法少女たちをサポートするマスコットに似ていて、そのクリスに力を貰ったんだ」

「クリス…聞いたことないわね。ペンギンのマスコットなんて他の支部のマスコットでもないし」

「クリスは、魔法少女委員会を追放されたと言っていた」

「それで、カムイの居る拠点には行けないわけね」

「信じる?」

「うーん、魔法少女委員会を追放されたってところは気になるけど、あなたは悪い人に見えないし、信じるよ」

「それなら、良かった」

「細かいことは、追々聞くとして…」


 スカーレットはさっきまでのフレンドリーな雰囲気から打って変わって、真剣な眼差しを紫音に向ける。


「あなたは、マギア・プレアの敵?」

「…違う。誰かの役に立ちたいと思ってる。市民や魔法少女に危害を加えようとは思っていない」

「そう、なら仲間ね。あなたのことはカムイには話さないと約束するわ。そしと、約束通り、魔力の扱い方をある程度だけど教えてあげる」

「あぁ、ありがとう」

「ついて来て」


 スカーレットはそう言うと、高度を落としながら、森の中に入っていった。


 ◇


 二人は、森の中で地面に降りて来て、向かいあった。


「改めて…、」


 そう言いながら、スカーレットの服が輝き出して…、変身が解かれた。


「私の名前は、日向ひなた緋色ひいろ。光陵高校の一年生。よろしくね」


 緋色は笑顔で言うのであった。

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