第2話 魔法少年の誕生
路地裏に入った紫音は、目の前にいるデフォルメ化されたペンギンの言葉に耳を疑った。
「僕が、
そもそも、マギア・プエルと言うものは前例が存在しない。クリーチャーを倒せる素質が男には無いからだ。女の子でさえ素質の有る無しがあってとても倍率が高いというのに。
『私は、君を魔法少年にすることができる。というか、誰でも魔法少女、魔法少年にはなれるのだ』
「誰でもですか…」
『君のような、純粋な人になら私の力を捧げても良いと考える。それが、この世界の為だとも思っておる』
「一ついいですか?あなたは一体誰なんですか?」
『私の名は、クリス。魔法少女委員会から追放されたものだ』
「どうして追放されたんですか?」
『…、これ以上は時間がない。君に強要するつもりはないが、願わくは君に魔法少女をあるべき姿に、世界を平和にしてもらいたい。お願いできないだろうか?』
紫音は考える。クリスが話していることの真偽は不明だし、騙されているかもしれない。でも、彼の表情からは本気が窺える。
自分も憧れの魔法少女の仲間入りできることを光栄に思うし、これ以上ない機会だと思う。これ以上何を悩もうか。
深呼吸をして、覚悟を決める。この路地に入ってきた時から、誰かの助けになりたいと考えていた。それが実現するのだ。
「なります。マギア・プエルに」
『ありがとう。では君に、ありったけの魔力を渡そう』
そう言うと、クリスは光り輝き、霧散した。光の粒子たちが紫音の元に集まり、体の中に入っていった。
とても暖かくて、思いやりのある優しい光の全てがやがて紫音の中に入った。
紫音は、エネルギーに満ち溢れて、全てを自由にできそうな万能感に、興奮していた。
『それを天に掲げて【
紫音の手元にはいつの間にか、紫色に輝く、星の形をしたクリスタルが出来ていた。
「【
クリスタルから光の粒子が溢れ、次第に紫音の身体を覆った。
その瞬間、着ていた服が次々と変わっていく。
白のシャツに濃い紫色のズボン、オーバーサイズの上着には小さくリボンが飾られた。白と紫を基調にした服は、男子の服にしてはフリフリが多く、まさに男版の魔法少女ドレスのようだった。
「本当に、魔法少女みたいになってる」
『最後に、このマフラーを授ける。身につけていると身体から放出される魔力を抑えられる』
「どうして、魔力を抑える必要が?」
『それは…、』
「あなた、何者!」
クリスが答えようとすると、路地の逃げ道を塞ぐようにマギア・スカーレットが立っていた。
『やはり、気がつくか…。少年よ、魔法少女をあるべき姿へ戻してくれ…』
言い終えると、紫音の中にあったクリスの気配が消えた。
「結局俺はどうしたらいいんだ?」
紫音は突然もらった力に、期待と戸惑いの二つの感情で頭がいっぱいだった。
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