第23話 出会い
合格発表の日が来た。何処の世界でもこういう物は同じなようで合格者は校内に張り出される。
王立魔法学院は出自、年齢など問わないが徹底した実力主義だった。
成績順でクラス分けが決まる。今年の合格者は200名、
成績の良いAクラス~Eクラスで1クラス40名で構成されている。
筆記試験は、ほぼ満点な筈なので俺の成績はかなり良いと思う。
当然Aクラスから見て行く。Aクラスの張り紙の上の方にシンと有る、俺が首席なのか?
いや、俺の名前は2番目だった。首席はパメラという女性だ。
「パメラ様が首席だ!」
「パメラ様が試験を受けてたのか?」
周りの人達が騒ぎ出す。
パメラ様、何処かで聞いたような。何処だっけ?
「あっ、思い出した神殿の巫女様だ」
どうやら巫女様の受験が知れると大騒ぎになるので別会場で受けていたらしい。
首席 パメラ レイトパラス王国 神殿巫女
2位 シン レイトパラス王国 冒険者
3位 ルナ レイトパラス王国 公爵令嬢
4位 ランド ペラスバナー王国 冒険者
5位 リアナ サザンラウル王国 伯爵令嬢
6位 エリカ レイトパラス王国 伯爵令嬢
7位 ネネ 獣王国ガウラル 冒険者
8位 アルサム 神聖国家ゾロアスト 子爵令息
9位 シュリ 魔法国家ディオベルク 男爵令息
10位 リサ レイトパラス王国 冒険者
「エリカ様に負けるのは仕方ないけど勉強してなかったシンより何で私が下なのよ。しかも2番だし」
「本当にシンはすごいのね」
「エリカ様、シンが2番なんてまぐれ、まぐれです」
「リサ、そんなに興奮しなくても。早く寮の部屋を決めに行こうよ」
「そうですよリサ、行きましょう」
「解りました」
学院の寮は校舎の裏手にある。大きさは学院の3分の1程度だが、それでもちょっとした大学のキャンパスの広さだ。
学院には当然有るが、寮にも演習場や研究室、錬金場などの施設が完備されている。
寮に行く途中、試験も無事に終わったのでバッグの中に造っておいた亜空間からララとリリが顔を出して来た。
「あら、可愛い」
「エリカ様は初めてでしたね。俺の従魔でララとリリです」
「宜しくね」
「にゃ」「ニャ」
寮は入口は一緒だが左側が男性、右側が女性となっている。
「あそこみたいよ」
手前に管理棟があってそこに申し込みに行く事になっている。
「すいません、入寮の手続きに来たんですけど」
「あら、早いのね」
背の高いスラッとした女性が出てきた。
「1回生は1階ね、貴方達が1番のりよ。早い者勝ちだから、好きな所を選んで良いわ。決めたら部屋番と名前を教えて頂戴、そしたら自由に使って良いわよ」
「解りました。え~と、従魔登録とかは?」
「フォレストキャットね。よしよし、いい子ね。この大きさなら問題無いわ、名前だけ一緒にね。私は寮長のアスカよ」
「これから宜しくお願いします」
ーー
「食堂は男女一緒らしいから部屋を決めたら食堂でね」
「分かった」
俺は西側の角の部屋にした。バック以外の荷物を置いて管理棟に報告に行くと合格者が続々とやって来ていた。
部屋番をアスカさんに告げると、壁にあった建物の見取図の部屋番が点灯する。これで俺の部屋に正式に決まったようだ。
食堂は男子寮と女子寮の真ん中に位置する。1回生が全員座れる大食堂だ。
窓側にポツンと座っているリサがいた。
「あれ?エリカ様は」
「少しやる事があるので遅れて来るそうよ」
飲み物を売っている窓口に寄ってから席につく。
「はい、ハーブティー」
「ありがとう」
授業は来月からなので、色々と話しあっている内に食堂に人が増えて来た。
「シン、リサ、紹介したい方々がいらしゃいますの、よろしいかしら?」
「あっ、エリカ様。もちろんです」
リサが返事をした後、エリカ様の後ろにいた人達を見て俺は固まった。
「こちらからパメラ様、ルナ様、リアナ様です」
とんでもない状況に気がついたリサも固まっている。
やっとの事で再起動した俺は、自分の名前を言うので精一杯だった。
「シ、シンと申します」
「会うのは2度目ですね。あの時の熱い眼差しは忘れていませんわ」
そんな誤解を招く様な言い方をしなくても。
「まぁ、聞き捨てなりませんお話ね」
やっぱりこうなるでしょ。
「シンとやら、巫女殿を目で口説くとは大した度胸ですね」
「ち、違います。誤解です」
「ルナ様、リアナ様、シンが困っております。その位にしてあげてくださいませ」
「フフ、ルナと申します。よろしくね」
「リアナだよろしく」
神殿巫女のパメラ様を含め美女が4人、……いやリサを入れて5人が一緒のテーブルにいる。それもトップ10だ、嫌が上でも目を引く。
男子勢の視線が痛い中、色々と話を聞く事が出来た。
ルナ様は国王の弟ダルク様の娘でいわゆる王族だ。
リアナ様はエルフの国、サザンラウル王国の伯爵家の娘で、エリカ様は御二方とは社交界で何度かお会いしていたらしい。
「パメラ様が魔法学院を受験なさるとは思いませんでしたわ」
「それはサユリア様のお告げがあったからです」
「お告げですか……サユリア様は何か深いお考えがあるのでしょうね」
「大司教様もそうお考えです」
「その話も大事だが私にはシンの熱い眼差しの件がもう少し聞きたいのだが」
「まぁ、リアナ様ったら」
「わ、私も聞きたいです」
何でリサがそこで同意する?
「シン様が祝福の儀を受けた時の事です。"見えざる神の手"の二つ名を持つ方がいると聞いて私はワクワクしながら礼拝堂に行ったのです」
「な、何でその事を?」
「祝福は相応の人でなければ受ける事ができません。当然、神殿も調査を行います」
「"見えざる神の手"か魔道士の私にとっても興味深い話ですね」
「そんな大袈裟な話ではないんです。俺は無属性なので、その効果が珍しい現象なので皆が驚いたのでしょう」
「無属性か確かにあまり見ない、シンのオリジナルですか?」
「そうです」
「それはどんな……」
良かった。いつの間にか魔法理論の話になっている。まさかパメラ様の適性鑑定をしていたとは言えないからな。
それから暫く魔法論議を交わした後、自分達の部屋に戻った。
部屋に帰ったリサは夢心地だった。憧れの神殿巫女パメラ様に会えたし王族のルナ様にも会えた。その上、エルフの国の伯爵令嬢とも顔見知りになれたのだ。
だけど何かが引っかかってモヤモヤする。その原因は、まだリサには解らない。
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