第18話 王都へ帰還 ①

 ガルドマズル山はこの世界の中央に在る巨大な山で、この世界の全ての国、9ヵ国が全て面している。


各国の調査団は自国のガルドマズル山に面している所から遺跡を目指す。そしていつしか麓に宿から始まって色々な店ができ、街が出来た。


各国が造った街が発展して行き、ガルドマズル山の麓を一周する程になり、いつしか繋がり異国情緒豊かな独特の街が出来上がった。


「面白い街ですね」


「ああ、私達も来たことは無かったが、どれもこれも何処かで見た感じがして、懐かしくなるような街並みだな」


調査団専用に建てられた屋敷に到着。100人近い人数に加え、多くの馬と馬車なので泊まれるかと心配したが余計な心配だった。


遺跡の調査は国をあげての国家プロジェクトなので、ここの敷地はちょっとした街の広さが有った。そして行き交う人達は常駐契約している冒険者や各分野の専門家達だ。


騎士団長とここの責任者ベルクさんとの打ち合わせで騎士団長と各パーティのリーダーのみ、発見された魔道具を見る事になった。


どうしても、その魔道具を見たくなった俺はナターシャさんにお願いしてララを連れてってもらった。


ナターシャさんに抱っこされたララは、特に怪しまれる事なく部屋に入る事が出来た。


ララのスキル、"知覚共有"で部屋での会話と映像が俺の頭の中に入って来た。


「これが発見された魔道具です」


それは円盤投げに使う円盤のような物だった。


「鑑定しても何も判らない。魔力を流しても何処を触っても反応しない。いくら調べてもどんな資料にも載っていないのです」


「どなたか鑑定スキルをお持ちの方が入れば鑑定してみてくださっても結構ですよ」


「では私が」


手を挙げたのはエルフのカーラさんだ。


「どうです?」

「ダメだわ、文字化けして判らない」


「やはり王立魔法学院の研究室に持って行かねばなるまいな」


「長旅でお疲れでしょう。出発は明後日と致しましょう」



ーー



暫くしてナターシャさんが部屋に戻って来た。


ララが抱っこされてるナターシャさんの胸から俺の肩へ飛び移るとナターシャさんは、ちょっと残念そうな顔をしてから少し怖い顔で俺を見た。


「シン君に頼まれたので、何も訊かずにララちゃんを連れて行ったのだが、何か判ったのかな?」


これは言わない訳にはいかないな。


「当分の間、内緒にしてくれますか?」

「……分かった」


「あれは重力を発生させる魔道具です」


そう、あれは重力、場発生装置だ。使い方や目的までは判らないが。


「シン君にはあれが鑑定出来るのか?」

「一応は。これも内緒です」

「そうだな……解った」


「重力てなんですの?」


やはりそうなるか。物理的な小難しい話をしても意味がない。


「重さを感じさせる魔法です」


「そんな属性は無い、つまり無属性魔法ってこと?」

「そうなりますね」


あれ?俺のマジックハンマーも重力とは違うけど使い方によっては重さは感じさせることが出来るよな。


「無属性か……そういえば話は違うけど、ギルド長に呼ばれて獣王国ガウラルからシルベルタの街に着いてギルドに行った時、無属性魔法の凄い使い手がいるって聞いたよね」


「ああ、そうだったねぇ」

「確か、見えざる神の……なんたらかんたらって言う」


ギクッ。


「神の……何だっけ?」


ギクッ、ギクッ。


「え~と、名前は……」


ギクッ、ギクッ、ギクッ。ワザとやってない、皆さん。


「と、とにかくとても大切な物です。しっかり護衛して王都に届けましょう」


「「「「お、おう」」」」


「では俺は自分の部屋に戻ります」

「一緒の部屋で良かったのにぃ~」

「そうよ、そうよ」


「そうは行きません。では」



今度はちゃんと自分の部屋をもらったのだ。今度はゆっくり寝れそうだ。





ーーーー



王都に向けて出発する日が来た。騎士団長率いる騎士達が護っているのは囮の馬車で、ベルクさんがよく出来た偽物を持って乗っている。


他の馬車は12台、御者が1人、中に1人り乗り両脇を2人で護る形だ。


肝心の本物は"情熱の赤い薔薇"の馬車の中でジュディさんが護っている、馬に今のところ乗れない俺も一緒だ。


ジュディさんのスキル偽装投影でこっちは、空の箱の様に見える。御者はミミさんで殿を走っている。


前日までの打ち合わせで、襲われそうな場所はいくつか上がっていて最初の場所は麓の街を出て半日ほど進んだ所にある森だ。


危険度は低い。もっと襲われそうな所は他に有るが、念には念を入れろだ。



「森の様子が知りたいのだが?」

「俺達が行こう。斥候は皆が得意だ」


名乗りを上げたのは王都で合流したSクラスパーティ"疾風のましら"だ。


確かに優秀なスキルは持っているが、リーダーの[お金大好き]って言うのが気になる。


念の為、ソナーストラクチャーで森を調べてみよう。



森の中に入って行った4人が10分程で帰って来た。リーダーのバズクが報告をする。


「異常はない。安心して良いぜ」

「うむ、では出発!」


嘘だ、俺のソナーストラクチャーには森に潜んでいる者がたくさん居る。


金に目が眩んで裏切ったか。とすると、こっちの情報は筒抜けと思った方が良い。


さて、どうしようか?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る