第17話 ガルドマズル山へ

 "情熱の赤い薔薇"との同行はギルドを通しての依頼になるのでナターシャさん達とギルドに向かう。


「シンなら大丈夫だと思うが、賄い役で行くと言っても不穏な動きが有るのだから気をつけろよ」


「分かりました」


「マッカラム、心配するな私達がついている」

「バカ言え、お前達の方がもっと心配だ」


「ひっど~い。おみあげ買ってこないわよ」

「おっと、失敗。名物ガルド饅頭は頼む」

「仕方ないなぁ」



皆んな仲がいいんだな。出発は明日だ、身支度をしたらビルドさん達に挨拶に行こう。




ーー


ビルドさんから話を受けてシャイン伯爵は、直ぐに魔道具を使って王都に連絡をしたそうだ。


王都側も別件で諜報部が盗賊団アワーズが傭兵団らしき男達と接触が有ったのを確認していたので、応援要請はすんなりと決まったらしい。


「そうか、巡り巡って情報主も行くことになったか」

「ええ、不思議ですよね」


「良いなぁ、シンは」

「おみあげ買って来るよ」

「期待してるわ」





ーーーー



出発の日が来た。予定としては2週間で王都に到着。王都で騎士団と王都の冒険者と合流。3週間でガルドマズル山の遺跡に到着だ。


馬車はシルベルタの街を出発した。俺達は、"情熱の赤い薔薇"の馬車に乗せてもらう。直ぐに皆んなはララとリリをモフり始めた。


それを見ながら考える。本当は色々と確認したくてリリのレベルアップの予定だった。とにかくリリのステータスは不明だらけなのだ。



名称  リリ(シンの従魔)

種族  ¥%$%

LV   1

体力  888

魔力  1444

属性  $%¥##/

スキル %¥#//

    ¥#%/$

    ¥¥%%$

    /#$%""

    $$$%¥#

    #¥%##%

長所  #¥$"/%

短所  $$%%##


変更可能職業 ¥##$%%

加護  %/"#""$



ただ1つ言える事は加護の項目が有り、そこが文字化けしてると言う事は、どなた様かの加護が有ると言う事だ。


とにかく地道に調べるしかない。



道中は平穏だった。1日目の野営の時ナターシャさんがエルフの人達を連れてきた。


「良い機会だから紹介しておこう。"森の旋風"リーダーのニーナに左からナナ、ユウリ、カーラだ」


「「「「よろしくね」」」」


見事にハモってる。凄い。


「シン、せっかくなので食事を一緒で良いか?」

「大丈夫ですけど、エルフの皆さんお肉の方は?」


「巷の人達は誤解しているみたいですけど、エルフだって野菜と果物だけでなくお肉も食べるのよ」


ここは読んだ本とは違うんだ。


「解りました、直ぐに作りますね」


さて、何にするか?野菜と肉がいっぺんに食べられる物で時間をかけずに済むものは?


そうだ俺の自信作が有った。燻製器を作り、森で燻製用の木を探し、オークのバラ肉を塩漬けすること1週間、塩抜きに3時間、燻製に4時間かけた力作のベーコンだ。


アスパラのベーコン巻きとコジュ鳥の玉子スープにしよう。


こっちの世界のアスパラは地球の3倍の太さがある。かと言って硬いわけてはない。外側を薄く剥いで焼けばホクホクで最高なのだ。


アスパラに負けないようにベーコンの厚さは5mm程度にして巻き5cmの長さに切り4本を串に刺して焼けば出来上がりだ。



「皆さん、出来ましたよ」


「今日は何かな?」

「おっ、串焼きだ」


「でもちょっと変わってるわね」


例によって毒見役……もとい、最初に口にしたのはナターシャさんだ。


「ふふふ」

「美味いのか?」

「何とも言えない美味だ」


2番手はやはりミミさん。


「うみゃい……」


ミミさんの涙を見た瞬間、マリィさんとジュディさんがかぶりつく。


エルフの皆んなも2人につられて口にした。


「美味しい!イスパラを肉で巻いてあるのね。この巻いてある肉のねっとり感と香り、食欲をそそるわ。それに肉の旨味と塩味がイスパラに移って味わい深く、ホクホクが最高」


皆がもぐもぐしながら頷いている。


ニーナさんの食レポ最高です。


イスパラのベーコン巻きはかくして大好評だった。



それから何もなく予定通り、2週間で王都アルブランカに着いた。まぁ、こんな強そうな冒険者集団を襲おうなんて

奴はいないよね。



朝に到着したので半日の休憩後、午後一に騎士団と王都の冒険者達との顔合わせが有った。


「私が騎士団長のオリバーだ。基本的な指示は私が出すが、有事の際は各パーティのリーダーは状況に応じて臨機応変に動いてもらいたい。それを踏まえて打ち合わせをするのでリーダーはここに残るように」



と言う事でリーダー以外は夕方の冒険者パーティが集まるミーティングまで自由時間となった。


「シン君、王都の見学に行くのでしょ?案内してあげるわよん」


「本当ですかミミさん、助かります」


シルベルタの街も大きいと思ったけど、王都はやはり凄かった。


出店の数も行き交う人の数も桁違いだった。


「ここが劇場で、今流行っているのは不貞妻が愛人と一緒に夫を亡き者にしようとする恐ろしい話なんよ」


テレビのサスペンス劇場って感じか。


「ここが神殿」


デカい、立派、豪華。街の教会とは大違い。


「なんの神様を祀っているのです?」


「慈愛の神、サユリア様よ。創造神ザイオン様の妻だった女神様」


「創造神ザイオン様って、あの?」


「そう。1000年前この世界の人々を消去し、新しく世界を創りなおそうとした神様」


「夫婦だったのか。敵同士になるなんて切ないね」

「そうだよね」


「あっ、ビルド商会が有る」

「ここが王都支店なのよん」

「王都の方が支店なんだ」


なんか面白い。少し先に行くと冒険者ギルドが有った。


「大きいでしょ」

「ホントですね」


ギルドの中を見学する事にした。冒険者の数も少なく中の食堂で休んでいる人が数名で、からまれれるテンプレもなく出てこれた。



大通りを左に曲がると露店も途切れて、大きな建物があった。


「この先の二又を左に進むとお城だよ」


言われた方を見ると遠くにお城が見える。


ミミさんの説明を聞いていると、大きな建物から魔法映画に出て来るような制服を来た人達が出てきた。


「王立魔法学院の生徒達ね」

「学校か……」


大学に入ってふた月でこの世界に来たからな、なんか懐かしい。皆んなどうしているだろう。


「シン君、どうかしたのかな?」

「あっ、いいえ何でもありません」

「にゃ」


軽いホームシックってところか。


「大丈夫だよ、ララ」


主な所を観終わったところでミーティングの時間になりそうなので、国が用意してくれた宿泊施設に向かい指定された部屋に行くとマリィさんとジュディさんがくつろいでいた。


「おかえり、ナターシャさん達はさっき戻って来たところよ」


「たくさん観れた?」

「はい、色々と」


「ナターシャは?」

「シャワーを浴びてるわよ」


そう言えば同じ部屋だ。不味くない?


「俺、この部屋じゃ不味い気が」

「どうしてよ?」

「そうよ、こんなに広いんだしい」

「そういう事ではなくてですね」


「おや、帰って来たか?」


ナターシャさん、羞恥心と言う物が無いのですか?いや、そもそも男として認めてもらってないのか?そんな事よりツンと上を向く乳首、俺の理想のオッパイをこれ以上見るのは色んな意味で不味い。


「ミ、ミーティングが始まるので先に行ってます」

「そうか?」





「お前達、シンが居るとなぜ言わない。恥ずかしくて死にそうだったぞ」


「そ~お?」

「ミミ!」





ーーーー




翌日、騎士団長が率いる騎士40名、Sクラス冒険者が4パーティ、Aクラス冒険者が8パーティと俺達3人は王都を出発。


3週間後にガルドマズルの遺跡に何事もなく到着。いわゆる、行きは良い良い帰りは怖い。


そう、帰りこそが本番なのだから。


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