第14話 新しい仲間 ①

 どうやら俺達を囲んだ奴らは半分が人で残りが魔物のようだ。


盗賊か?困ったな。全部ララに任せるか……でもこれから先の事もあるしな……。


考えている内に木陰から人と魔物が出てきた。人が20人で魔物が30頭。やっぱり盗賊だったか、でも面白いスキルを持っているので、良しとしよう。


「兄さん、死にたく無かったら、その魔物と有り金を全部置いていきな」


「嫌だなぁ、俺は人は殺したくないんだよな」


でもなぁ、この世界は法が有って無いようなものだし、何でもありだからなぁ、何時かは覚悟しないとなぁ。


「へっ、なに甘ちょろい事を言ってやがる。決めた、もうお前はここで死ね」


「う~ん、でも実力差があるから大丈夫かな、死にたくないし」


グレートウルフが10、スカルスパイダーが10、キラーアーントが10頭か。魔物はララに任せよう。


「ララ、グレートウルフは毛皮を傷つけずに、スカルスパイダーとキラーアーントはお腹を傷つけないようにしてくれ」


「にゃうん」


魔物の事はダンジョンでリサに散々講義を受けたので、売れる部位は頭に入ってる。


「何をゴチャゴチャ言ってるんでぃ、余裕だなこら!」


盗賊が吠えているが、その1秒後グレートウルフはダークバレットで額を撃ち抜かれ、蜘蛛と蟻はウインドカッターで腹の部分から胴や手足が切り離されバラバラになっていた。


「な……んで?」


女好き繋がりでゴブリンに変更できるが必要ないだろう。


「今度は君達の番。スリープ!」


盗賊達は皆、静かな眠りについた。俺が使ったのはファントムのスキルでスリープだ。


盗賊の服を剥いで下着を裂きそれを紐の代わりにして手と足を縛り上げる。人数が多いので大変だ。


全員縛りあげたところで、こいつのスキルの確認だ。どれどれ、……あれ?ストック帳に載ってない、どうしてだ?


考えられるのは人のスキルはダメと言うことだ。魔物に職業変更は出来るのに……。



がっかりしていると、騒ぎに気がついた冒険者達が集まって来た。真っ裸で縛られて転がっている男達に大量の魔物の死体を見て皆んな固まっていた。


「何が有った?」

「盗賊に襲われちゃって」


「そうか災難だったな。ん、"見えざる神の手"のシンか?」


「そ、そんなとこです」


いきなりなので訳の解らない返事になってしまった。


「あの時は助かったよ、ありがとな」


どうやらオーク集落壊滅の時に居た冒険者達らしい。


「ゲイル、こいつ盗賊団アワーズの幹部バスだぜ」

「おっ、ホントだ」


「街道で商隊を襲った後、見つからないと思ったらこんな所に隠れていたのか」



ーー


他の冒険者達に盗賊達や魔物を運ぶの手伝ってもらい、ギルドに到着。


俺達にちょっかいを出して来た盗賊はかなりでかい盗賊団の幹部だったのでギルド長達がアジトの場所を白状させている。


魔物達は皆んなに運んでもらったので、誤魔化す事なく毛皮、糸袋、蟻酸袋など素材料を受取る事が出来た。盗賊の賞金と合わせて金貨7枚だ。後で皆んなに酒を奢らなければなるまい。


ギルド長達の身の毛もよだつ拷問によって幹部のバスはアジトの場所を吐いた。


直ぐに討伐隊が結成され打ち合わせの後出発。


Dクラスの俺達も同行が何故か許された。


「シン、期待しているぞ」と言ってギルド長のマッカラムさんが凄い悪い顔でニヤリとした。


「うっ、は、はい」


なんか、色々とバレていそうな気がする。



大盗賊団アワーズのアジトは全国に無数在ると言われ、今回はその中の1つと言う事になる。


シルベルタの街はレイトパラス王国の1番西に位置する。

街道を東に向かい隣街タリムに行く途中、北に小さな山、ロクゴウ山が在り、そこの洞窟がアジトらしい。


今回の指揮はギルド長が自ら取っている。うまくいけば頭目を仕留める事が出来るかもしれないからだ。


そこまでは馬や馬車出て1日半、街道を北にそれて歩き1時間弱かかる。なので北に行く山道の手前で野営をすることとなった。


馬車ごとに野営の準備をするわけだが、なんと俺達と一緒になったのはダンジョンで会った"情熱の赤い薔薇"のナターシャさん達だった。


「宜しくね、シン君」


馬車の中で挨拶など済ませている。この前のお礼を兼ねて俺が晩飯を作る事にしたのだ。


家事は母が亡くなってから父と交代でやっていたので問題無い。そういえば父も料理が上手だったな。


ビックブルの霜降り三角バラがまだ一塊あったのでビーフカツと洒落込もう。


この世界の硬いパンだけど、パン粉は前々から作ってあるので楽勝だ。肉に小麦粉をまぶし、コジュ鳥の卵をといたものに浸してからパン粉をつけてオークの脂身から取った油で揚げる。


この手法はこの世界にはまだ無いので驚くだろう。この世界にも名称は違うが地球にある野菜と同じ物はある。玉ねぎ、人参、トマトに赤ワインなどを使って作ったデミグラスソースもどきをかければ出来上がり。


さあ、召し上がれ。


皆は怪訝な顔で俺の作ったビーフカツに手を出さない。


ララはそんな事はお構いなしにかぶりついてムシャムシャ食べ始めた。


美味しそうに食べるララを見てナターシャさんがサクッと一口頬張る。


「……う、美味い」

「美味しいの?どれどれ……うっ」


唯一の獣人のパーティメンバー猫族のミミさんは固まって動かず涙を流している。


「うみゃい」


それを合図にマリィさんとジュディさんが飛びついた。




「あ~、幸せ」

「ホント」


「……まさか君達、ダンジョンの中でこんな物をずっと食べていたのか?」


「えっ、そうですけど」


「け、け叱らん。ダンジョンでこんな美味しい物を食べるなんてルール違反だ」


それってどんなルールなんです?


「全くだ、私達の苦労は何だったのか、悲しくなってくる」


「と言う訳で今度また作ってくれ。なっ!」

「はぁ」



ーー


「面白い人達だったねララ」

「にゃ」



そして夜が明け、アジトへ突入の時間が迫って来た。

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