第12話 トラブル発生 ②

 ボスを倒す事で下階に行く事が出来るので、実のところ階段を上がって上階に行けるか不安だったが杞憂だった。


階段を上がった先は一方通行の扉になっていて反対側からはけっして入って来れないようになっていた。扉を出るとボス部屋とはかなり離れているところに出る仕組みだ。


今まで5階は上がって来たが、ここに出て来る魔物の種類は遺跡のダンジョンとたいして変わらなかった。気になるところと言えばレベルは高いが手応えが無い。と言うか変更する前でもプレッシャーが感じられないのだ。


俺達のレベルが上がっているせいもあるのだろうが、遺跡のダンジョンの魔物の方がレベルが数段低くても1ランクいや、2ランクは上のように感じる。


「そろそろ休憩にしようか」

「にゃ」


リサは相変わらず呆けたままだ。質問攻めになるよりましかな?


どんな魔物が来ても俺とララで倒す自信は有るが、リサがいるので万全を期す為に亜空間に入る。


まだまだたくさん有るミノタウロスのステーキとビックブルの骨で出汁を取り野菜を入れ、コトコトと煮込んだ熱々のスープの香りに呆けたリサのお腹が[グ~]と鳴った。


「さぁ、召し上がれ」


「何で、どうして、意味が解らない、どういう事よ、なにここ?何でこんな料理……ゴクッ……%$#%%」


最後はリサが唾を飲みながら言ったので、何と言ったか解らない。


でも、ようやく思考回路が動き始めたようだ。


「食べるか、しゃべるか、どっちかにしたら?」


「わかっムグッてるわよ。大体シンはおかしゴキュゴキュ」




食事をして落ち着きを取り戻したリサの質問攻めを躱しながら最下階から10階上に到達。


出て来る魔物のレベルは75まで下がって来た。55階のボスであるアラクネのレベル59なので、後10階ぐらいで他の冒険者と遭う可能性が高い。


キマイラ、デュラハン、デスナイトを倒し、更に上に上がるとミノタウロスの集団にぶつかった。



「にゃにゃ」


ララの言いたいことは「美味しい肉の補充が出来て嬉しい」である。同感だ。


レベル60から63だ。そろそろ最高到達階に迫って来た感じだ。


ミノタウロスを倒し肉をゲットした後、リサに念を押す。


「リサ、約束は解っているね?」


「ええ、ええ、解っていますとも。話しませんたら話しません。だいたい信じてもらえるか怪しいものだわ」


リサの反応が面白かったので思わず笑ってしまったら、『キッ!』と睨まれてしまった。


「う、上に上がる前に休憩しよう」



ーー


「ちょっと訊きたい事があるんだが?」

「なによ!」


まだ怒ってる。


「自分のステータスは誰もが見れるんだろ?」

「今更なに?当たり前よ」


「神の加護も判るのかな?」


「神の加護……それは無理ね。だいたい神の加護を持っている人なんて稀の中の稀なのよ。いるとすれば神殿の、それも高位の神官ぐらいのものだわ」


ふ~ん、自分でも解らないのか。


「じゃ、加護を持ってるって知らないで生きて行くんだ」


「そうとも限らないわ。天啓によって感じたり神託で理解したりするのよ」


「そうなんだ。加護を持っていると何が得なんだ?」


「損得じゃないのだけどね……しいて言うと運命の糸を手繰り寄せる事ができる、みたいな。ごめん、上手く表現できないわ」


「面白い表現だね。……うん、なんとなく解る。ありがとう」


「変わった事が気になるのね」

「興味があっただけさ」


前からの疑問も解消したところで出発する。



サイクロプス、マンティコア、サキュバス、グリフォン、マンイーター、ロックワーム等を更に15階上がった。


これで25階上がって来たわけだが、まだ他の冒険者には遭っていない。この階はジメジメして湿気が多い。


蛙の魔物フロッガルのレベル42~44の集団を倒してドロップ品を回収しているとララが察知する。



「にゃう」


「……魔物ではない気配だ」


「やっと冒険者に会えるの?」

「良い奴とは限らいから気を付けよう」

「解った」



リサを俺達の後ろに並ばせてゆっくり進む。見えて来たのは4人のパーティが2組だった。直ぐに適性鑑定をする。


先頭は女性だけのパーティだ。Sクラスが1人にAクラスが

3人と、それも実力者揃いだ。でなければここまで来れないだろうけど。


後ろのパーティは男でAクラスが2人Bクラス2人で、まあまあの組み合わでだ。


「すまんな君達、私達は男女2人のパーティを捜しているんだが……君達は2人だな。ロペスさん、この2人は違うのかい?」


スッと前に出てきたロペスという名の男は、俺の後ろにいるリサを見つけると大声で叫んだ。


「お嬢さん!ご無事だったのでですね」


そして、へなへなと座りこんでしまった。


「ロペス…さん。どうしてこんな所に?」


リサが尋ねても泣き出してしまってどうにもならない。


ーーーー


安全な場所に移動した俺達は、Sクラスでパーティのリーダーであるナターシャさんから理由を聞いた。



3日経っても帰って来ない娘を心配したリサの父親は、トラブルに巻き込まれたと考え、Sクラスのナターシャさんを雇い、部下のロペスさんに一緒にダンジョンの捜索に行ってくれと命じたそうだ。


「では、ここにいる理由を訊きたい」


なんて誤魔化そう。


「ここは何階ですか?」

「地下52階だ」


そうか、知らない間に55階は通っていたんだ。


それから俺は罠にハマってここ、"地下52階"へさせられたと話した。


「やはりそうだったのか。それにしても1週間もよく無事だったな。2人はDクラスと聞いているが?」


「ええ、幸い食料はたくさん有ったですし、ララが魔物の気配を察知してくれたので上手く避けながら過ごしました。何時までもここにいる訳にも行かないので少しずつでも上にと思ってたところで皆さんに会いました」


「フォレストキャットはすごく用心深い魔物だからな。大したものだ、可愛いいし」


「にゃ」


ララは尻尾をゆらゆらさせてナターシャさんのパーティの女性達に愛嬌を振りまいている。猫好きを転がすのは得意なのだ。


「ロペスさん、罠にハマったのは私のせいだし、シン達がいなければ私は死んでいたわ。御礼を差し上げてね」


「もちろんで御座います。お嬢さんの恩人をただで返しては会頭に私が怒られます」



それから俺達はナターシャさん達の魔法陣に入れてもらって地上に出た。1週間ぶりだ太陽が眩しい。


そして俺達はリサの父上の所へ行くこととなった。

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